食らし旅

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食への想い

宮津湾のタコはカニを食べている? ゆたかな水産資源を守る漁師さんの話 おばけトリ貝に漁師居酒屋……次々と新しいことに挑戦する漁業最前線

2019/09/12

map_umi.png 海の京都

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こんにちは! 『食らし旅』編集部です。

宮津にすごい漁師さんがいる……とのウワサを聞きつけ、お話を伺いにやってきました!

2010年まで、国の水産試験場で、全国の魚の研究をされていた本藤靖さん。
地元宮津に戻って漁師となり、特にトリ貝の養殖やナマコ漁で大きな成果を挙げられています。

魚の獲り方から処理の方法、売り方や水産資源の管理、自分たちの働く姿勢に至るまで、
とにかくあらゆる方位から自分の頭で考え、あるべき姿を目指して新しいことにチャレンジし続ける……。

また、全国の水産物の味と比べても、「丹後の食べものは最高にうまい」と断言し、本当においしい魚を提供する漁師居酒屋を、1週間に1組限定で営んでいらっしゃいます。

そんな本藤さんに、宮津の海への想いをお話しいただきました。

宮津湾だけで、江戸前寿司のネタが全部揃う

宮津湾には魚や貝、タコにエビまであらゆる魚介が獲れます。
宮津のタコがなんでウマいかというと、カニとか貝、イカを食べて育っているから。グルメなタコなんです(笑)。

宮津湾は海底の泥が腐敗していない。
顔面パックもできるぐらいきれいな泥があって、エビがたくさん棲んでいます。
大江山から流れ込む地下水に、ミネラルや鉄分が含まれているんじゃないかと考えてます。

大江山は冬にものすごく雪が降る。
あの積雪量だと、本来は雪解けしたら川からどどどーーって流れてくるぐらいじゃないとおかしいのに、実際は、川に全然水がない。これは、地下にしみこんでそれが海に流れ込んでいるからに違いない……と。

海と山は遠いようでつながっているので、自然を考えるときは、
行政区分のエリア分けではなく、水系でモノを考えないといけない。

「ナマコと「とり貝」での挑戦

ミネラル豊富な宮津湾で育つ水産物の中でも、ナマコととり貝は、本当にすごいものができています。

宮津のナマコは、近年の品質管理の努力によって単価が上がり、前は40t獲って2000万円の売上だったのが、いまは16t獲って2000万円になりました。その分、休漁日を2日設けたことで、漁師は体を休めることができ、ナマコの資源を守ることにも役立っています。

海洋高校の教科書に載せたいといわれるぐらい、個体数が回復しているんです。
この資源管理はすごい成功体験で、これから他の水産物でも特に意識すべきこと。

また、丹後地域では、通常の2倍にもなる大型のとり貝の生産に成功しており「丹後とり貝」としてブランド化されていますが、独自の研究と開発によって、その中でも一段と大きくて美味しいとり貝を育てています。

味は最高で、大きさも最大級。そんなとり貝を安定的に育てるには、本当に手間がかかります。だからこそ、これからは、手塩にかけて育てた自分のとり貝のトレーサビリティを確保し、多くの人に、このとり貝を味わうために、丹後へ来てもらえるようにしていきたいですね。

漁師ライフは、がんばりすぎず楽しむのが吉

漁師の仕事は、楽かといえば……そうはない。
たとえば、とり貝漁業はかなり過酷。
40kgぐらいの網を年に8回揚げて、空になったコンテナを高圧洗浄して……。
自分でやっているからいいけれど、従業員にさせたら過重労働で訴えられるレベルです。
そんなだから、いっぱい獲ろうとがんばりすぎるとすごくつらくなる。

だから、僕は週に一回、一番いい魚を食べて、自分が獲ったものの味を確認するようにしてる。味がわかって愛のある売り方ができるし、何より自分がメチャクチャ楽しいんですよ。

手間をかけて育てた少量の魚介を、きちんと見る目がある人に買ってもらったり、時には、自分で料理して食べてもらって笑顔を見れたりすれば、お金的にもやりがい的にも、漁師の仕事が全然違ってくると思うんです。
流通も変わってきているから、直接、料理人に魚を送って反応を聞けたら、本当にうれしいしね。

これができている今、もうね、漁師生活ぜんぶがメッチャ楽しい。

水産資源を守る、次世代の人材を育てていきたい

投棄された海底ゴミを回収すべく、海の掃除を頑張って続けています。
その甲斐あって、今、宮津湾の底は本当にキレイになっていますよ。

でも現在、宮津の漁師たちの平均年齢は70歳。
これからこの海を誰が守る? と考えたら、
次世代の子に、水産資源の管理方法を早く伝えていかないといけない。

漁業みたいな一次産業、
もっというと、海を守る仕事、川を守る仕事……といった0次産業にも、
次世代の子がプライドとやりがいをもって取り組めるようにしなくてはいけない。
ただ単に「自然が好き」では続かないから、
楽しく、かつちゃんと儲かって自立できる仕事として変えていかなくてはと思っています。

<あとがき>
日々の仕事の厳しさや、現状の漁業の課題などの話題も伺いましたが、
とにかく漁師はメッチャ楽しい。こんな楽しい仕事はない!と、
目を輝かせておっしゃっていたのが印象的でした。

そんな本藤さんが宮津で随時催行する、
「漁師しか行けないスポットで魚釣りをしよう」という体験プランもありますので、
よかったらそちらの記事もご覧くださいね。

記事 平岡さつき 写真 佐藤美穂

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