食らし旅

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食への想い

<お茶の京都 農事組合法人クローバー牧場 松本雅世さん> 「食は何より大切」祖父母の想いを受け継ぎ
一頭一頭を慈しみ育てる「特別牛乳」 全国4か所のみで認可される「特別牛乳」を求める一家の奮闘

2021/12/24

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京都府の南端にある木津川市。木津川のまわりになだらかな丘が連なるのどかな場所に、クローバー牧場はあります。

牧場というと広く開けた草原をイメージしがちですが、お隣さんとは意外なほど近距離。牧場をはじめたころに、祖母がたくさん苗を植え育てたという木立を抜けると、牛たちが静かに暮らす牛舎が迎えてくれます。

「特別牛乳」ってなに?

クローバー牧場は、全国でも数ヵ所しか許可されていない「特別牛乳」を製造できる牧場です。特別牛乳とは、成分値が乳等省令の定める基準内に収まること、とても優れた衛生・飼育環境があることなど厳しい審査をすべてクリアして認定を得られる牛乳のことを言います。

絞った直後に低温殺菌しただけ、ほぼ無加工の牛乳を味わえる「京都の特別牛乳」は、深いコクがあるのにさっぱりとしたのどごしという、相反するおいしさが共存しています。

「乳脂肪分の質がとても良い証拠なんです。高級ステーキの脂身も、上等なお肉ほどさらっとしているでしょう?あれと同じ理論なんですよ」と、夫婦で牧場を営む松本雅世さんが教えてくれました。乳くささもなく、牛乳が苦手だという人も「京都の特別牛乳」はごくごく飲めてしまうのだそうです。

祖父母の想いと牧場のはじまり

クローバー牧場は現牧場主の徹さんで3代目。松本さんの祖父母が終戦直後に、牛一頭から始めました。獣医師として満州に派遣されていた祖父母は、5人の子どもを抱えて命からがら日本へ引き上げてきたそうです。末っ子はまだ乳飲み子にも関わらず、祖母は母乳が出ないほどの栄養失調に陥ったことも。「食は何よりも大切なもの」と痛感したそうです。そんな経験から、栄養価が高い牛乳を作ることを決めたのです。当時はまだまだ高級食材だった牛乳ですが、飲めば元気になれるものを、できるだけ多くの人に届けたいという気持ちが牧場の原点です。

「特別牛乳」をめざした父

クローバー牧場が「特別牛乳さく取処理業」の許可を受けたのは1995年のことです。

「2代目を継いだ父はとても情熱的な人。『多くの人に本当においしい牛乳を飲んでほしいんだ』と、特別牛乳の許可を取ることにこだわりました。特別牛乳の認可に必要な厳しい衛生管理基準をクリアできるだけの施設や、生乳を新鮮なまま処理・保管できる設備が整ったのはこのときです。彼の情熱が周囲の人びとを動かし、いくつもの審査を乗り越えて認可にこぎつけたそうです」

「京都の特別牛乳」は、搾乳してから一切外気に触れさせない工程を組んでいます。ミルカーという搾乳機からパイプを通って直接冷蔵設備へ送られ、すぐに低温殺菌処理。そこからさらにパイプを通って充填されるため、消費者の口に入るまで酸化が進むことがありません。時間経過とともにぐるりとクリームのラインができるのは、ノンホモ牛乳(※)である証拠。搾りたてそのままの味わいを食卓に届けることに成功したのです。

※ノンホモ牛乳:乳脂肪の中にある脂肪球を砕く均一処理(ホモジナイズ)を行っていない、より生乳に近い風味が楽しめる牛乳のこと

—本場アメリカへの留学

現在、牧場主として奮闘する3代目の松本徹さんは、幼いころから「この牧場を継ぐのはお前だ」と祖父や父に言い聞かせられて育ったそう。農業高校を卒業したあとはアメリカ・ネブラスカ州へ留学し、酪農の本場で経験を積まれました。

「アメリカは日本より、酪農の基礎や育て方など、常に10年酪農技術が進んでいると言われているんです。美味しい牛乳は、アメリカではどこでも手に入るものなのです」

帰国した徹さんは知識を生かし、牛の飼育環境をアップデート。現在、牧場で牛に与える干し草は全てアメリカから輸入したものを使っています。高温多湿の日本では乾燥が甘くなってしまうため、最高級の干し草を求めると割高な輸入品に頼らざるを得ないのだそう。しかし、牛たちが口にするものこそが良質な牛乳の基本です。

おいしい牛乳の育て方

おいしい牛乳を作るために徹底していることは、牛にストレスを与えないこと。「栄養のバランスが偏ったり、住まいが汚いと人間だって病気になるでしょう。ストレスがかかると体調を崩すのも同じ。するとてきめん牛乳がまずくなるんですよ」。そのためクローバー牧場では、徹底して牛にとってストレスフリーな環境づくりが行われています。

中でも牛たちの食にはひときわ気を配ります。お腹が空いてイライラするということが無いように、餌やりは腹八分目を一日8回。午前5時に1回目の餌やりが始まります。それも3種類の干し草と無農薬・無添加にこだわった配合飼料を牛の体調に合わせ、一頭一頭毎回配合調整して与えるという細やかさです。「子牛は体調によって耳の立ち具合が違うので比較的分かりやすいですよ。大人の牛は便がやわらか過ぎたら主食にしている干し草を多めに、とか。その日の気温や体温なども参考にしますが、主人の経験と肌感覚で毎回微調整しています。毎日見ていれば自然と体調は分かってくるものですよ」と雅世さんは話します。上質な食べ物をバランスよく食べる牛は腸内環境もよく、出す糞も全く臭くないそうです。実際、クローバー牧場の牛舎周辺はほとんどにおいがしません。牛も人も、腸は健康のバロメーターですね。

—一頭一頭、わが子を育てるように

牛舎にも快適に過ごすための工夫があちこちに。牛たちの寝床には高級マットレスが敷かれ、夏の暑い時期にはマイナスイオンミストが天井から降りそそぎ、牛たちの前に設置されたハーフパイプには常にマイナスイオン水が川のように流れています。「普通だと、2区画にひとつウォーターカップがあって、2頭の牛が水の取り合いをしています。すると牛の中にヒエラルキーができて、必ずストレスにさらされる牛が出てきます。目の前にずっと水が流れていれば、取り合いにはならないでしょう?」

牧場の仕事は掃除にたい肥作りといった日々のルーティンに加え、保健所の検査、牛たちの爪切り、そして出産と昼夜を問わず待ったなし。そんな中で一頭一頭、丁寧に向き合ってお世話をしていくのは並大抵のことではありません。それでも「人がしんどいからと一日手を抜けば、必ず牛に答えが出る」というのが徹さんの信念です。「動物と向き合う仕事ですから、決まった時間の中で仕事が終わるわけではない。愛情がなければできない仕事です。でもそれって、子育ても同じだと思うんです。わが子を見守るように、赤ちゃんを育てるように毎日世話をしていれば、おのずと今、何をしてあげればいいのか分かるんですよ」。

生まれたときから快適な環境でのびのび育つクローバー牧場の牛は、平均的な乳牛に比べてとても体格がよく健康的。雅世さんが餌を手に近づくと「ちょうだい!」というように袖に甘噛みを繰り返し、どれほどの信頼関係があるのかが伝わります。

お話を聞く間にもご近所の子どもたちがやってきました。「きたよ!」と笑顔で手を振り、牛乳を「おいし~!」と輝く笑顔で飲み干します。「毎年、近くの小学生が牛の絵を描きに来てくれるのですが、成長して大人になってから買いに来てくれたりするんです。あの顔を見たらやっぱりうれしいし、やりがいがありますね」

牧場ではこの搾りたての牛乳と、凝固剤などの添加物不使用・生乳100%のヨーグルトを製造。こちらもすっきりとした味わいで、毎朝の習慣にしたくなります。アイスクリームはプレーンなミルクのほか、果実がごろごろと入った季節のフレーバーがあり、牧場で直接買えるほか、全国への配送も行っています。

松本さん夫妻の愛情をたっぷり受けて育った牛たちの恵みを、ぜひ体感してみて下さいね。

京都の特別牛乳 900㎖810円、500㎖520円、コップ一杯360円

京都のヨーグルト300g350円

ミルクアイス ミルク350円/マロン450円(秋冬限定)/いちご450円(春夏限定)/マンゴー450円(夏限定)/ピスタチオ600円

農事組合法人クローバー牧場

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