食らし旅

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ここにしかない食体験

食べることは生きること tabel tableが伝える食のちから 自家製味噌作りワークショップ体験

2020/02/26

map_umi.png 海の京都

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蒸しあがった大豆から、甘いような香ばしいような香りが漂ってきました。穀物のほっくりとした匂いに、身も心もほぐれていくようです。

発酵の世界へようこそ!

こんにちは、食らし旅編集部です。今日は「味噌仕込みワークショップ」に参加するため、京丹後市にある「tabel table(タベルテーブル)」を訪れています。皆さんは、普段の食事で味噌汁を食べられるでしょうか?「身体にいいとは聞いたことがあるけれど、作るのが面倒で…」そんな声も聞こえてきそうですね。編集部の私は、2年前にも味噌を仕込みました。仕事が忙しい時、冷蔵庫が空っぽになった時、出汁も具材も入っていない自家製味噌汁を作ることがあります。その味わいは旨味と深みがあり、身体に染み入るようなんです。手前味噌ですけれど!…実は「手前味噌」という言葉にはきちんとしたと裏付けがあるんですよ。それでは、美味しくて面白い味噌の世界にtabel table主宰 ハミルトン純子さんに案内してもらいましょう。


tabel table ハミルトン純子さん

英語の分厚い本をめくると、ローマ字で「Koji」「Miso」「Shoyu」など日本ではおなじみの言葉が並んでいます。「この本は世界的に有名なレストランが一昨年に出版されたもの。日本は、世界に類を見ない発酵大国なんです。海外のシェフたちはよく研究していて、日本では考えられない使い方やバリエーションも広がっています」。味噌仕込みにきたら、いきなり英語と世界のお話が始まって参加者はちょっとびっくりした様子。アイルランド人の夫を持ちアイルランド在住経験もある純子さんのお話は、海外から見た日本の食文化についても尽きることがありません。身近な調味料「味噌」を引き出しに、近年の発酵食ブームや食にまつわる価値観のお話と参加者も加わって盛り上がります。

お喋りと座学、実食を交えたワークショップ!

最初に「お味噌とは一体何でしょう?」と座学が始まりました。味噌の原料は大豆、米麹、塩の3つ。シンプルな仕込みだからこそ、材料にはこだわって欲しいと純子さん。今日のワークショップで使う大豆は兵庫県出石の自然農家さんから分けていただいた、地元に伝わる無農薬栽培の「名もなき」青大豆。

麹は峰山にある小野甚味噌醤油のこだわりの米麹。塩は網野でフルーツガーリック という黒にんにくを栽培・製造する創造工房が作った熟成塩です。作り方は、十分に柔らかくなるまで蒸すか湯がいた大豆を潰して、米麹と塩と混ぜ合わせて清潔にした保存容器に詰める。言葉にまとめるとこれだけですが、大豆を前夜から水に浸けたり、数時間蒸し器にかけたり、ひとりでやろうと思うとなかなか大変です。参加者にリピーターが多いのも頷けますね。


加熱によるメイラード反応で茶色になった大豆

奥深い麹の世界

材料のひとつ、米麹を作るための麹菌は学名を「アスペルギルス・オリゼー」といい、日本にしか生息しないカビの一種です。なんと、国菌として認定されているんですよ。麹は100種類以上の酵素を含み、栄養素を分解したり、乳酸菌を元気にしたり、ビタミンの生成を行うといった働きをします。酒、酢、みりん、醤油、味噌、甘酒、焼酎、泡盛…日本では昔から様々な食品が麹によって醸されてきました。そのため、国内にはたくさんの「種麹屋」があり、それぞれの食品に適した麹を培養し販売していました。言わば、世界最古のバイオ産業です。近年では塩麹や甘酒のブームがあり、麹や発酵食にも注目が集まりました。


米麹。そのまま食べても甘くて美味しい

手前味噌って何のこと?

麹と共に発酵に関わるのが私たちの身体にいる常在菌や空中に存在するさまざまな菌。そのため、同じ場所で同じ材料から仕込んだ味噌も、保管する環境でそれぞれ違った味わいへと変化します。実際にワークショップで仕込んだ味噌を持ち寄ってみたところ、驚くほどバリエーションがあったそう。そこでは「私のが一番美味しい」と言う声がちらほら。これこそ「手前味噌」!自分が暮らしている環境で育つ味噌だから、自分の身体に馴染むものに育つのでしょう。科学的な実証は難しいですが、昔から伝わる「手前味噌」という言葉がきっとそうだよと伝えてくれています。

奥深い発酵のお話、ここにご紹介しているのはほんの一部。純子さんのワークショップは、ご自身が参加された講演やワークショップで聞いた最新の情報なども盛り込まれて、毎年アップデートされています。

色とりどりの味噌が登場

「右から自家製の白味噌、九州産の麦味噌、自家製味噌の熟成が違うものが3種類。それぞれ9ヶ月、1年2ヶ月、2年ものです。最後は豆味噌ですね」。白味噌は麹菌をたっぷり加えるため、アミラーゼが多く含まれ甘味も強くなるそうです。アミラーゼとは、デンプンとブドウ糖に分解する酵素のこと。麦味噌には麦麹が使われるため、味噌の中に麦の胚芽が見えます。豆味噌の材料は大豆と塩のみ!蒸した大豆に麹菌をふりかけて作った豆麹に、塩水を加えて発酵させます。煮込むほどにコクが増す独特の味噌は、製法が違ったのですね。有名な料理は名古屋の煮込みうどんです。ひとくちに味噌と言っても、様々な味わいがありました。さあ、今日の味噌はどんな味に仕上がるでしょうか。いよいよ仕込みです。

マイ味噌を作ろう!


マッシャーやミンチを作る道具を使うこともできます

あらかじめ蒸し上げられた大豆を、思い思いに潰していきます。ざっくり潰すか、滑らかに仕上げるか、参加者によっていろいろだそう。でも、手前味噌が一番美味しいんですものね。塩と麹と混ぜ合わせた後は、なるべく空気を抜きながら味噌玉を作ります。

保存容器は陶器、ガラス、プラスチックなどが使えますが純子さんのオススメは常滑焼。厚みのある磁器は温度変化を和らげ、安定した発酵に繋がるそうです。

味噌玉を詰め、空気を抜いたら酒粕で蓋をします。これでカビの発生が防げるポイント!そして、味噌が出来上がったときには酒粕も十分に熟成されて、極上の味わいになっています。この酒粕を使った粕汁の感動は、忘れることができません。最後に、ビニール袋に入れた塩を重石として乗せます。冷暗所に半年から1年保管すれば、自家製味噌のできあがり!

味噌汁をすする幸せ

仕込みの後は、味噌や発酵食を使ったご飯をいただきました。土鍋で炊いたご飯には、昆布の佃煮や味噌と甘麹を同量ずつ混ぜたものを添えていただきます。低温調理された鶏ハムにもたっぷりとかけて。色鮮やかな紅芯大根は塩麹の浅漬けになっていました。味噌汁は、先ほどの試食で人気の高かった豆味噌を米味噌とブレンドしてまろやかな味わいに。終わりには、味噌も私たちもすっかりこの場に醸されていました。

table tableの始まり

純子さんの主催する「tabel table」は、2019年にオープンした不定期で料理のワークショップやイベントを行うキッチンスタジオです。


地域の人で賑わうtabel table

実家が家業を営み、共働きの両親のもと生まれ育った純子さん。小さな頃から料理好きで、小学校3年生の頃には料理教室に通い出します。高学年になると、春休みや夏休みに家族の食事を用意するほどの腕前に。中学校進学と同時に、大人向けの「パンとお菓子の教室」へ通いました。教室の先生は、海外渡航経験も豊富なおしゃれな女性。パーマをかけて、真っ赤な口紅をひいて、ヒールをはいて。その姿や外国の珍しい料理にワクワクした記憶を、今でもはっきりと覚えているそう。「教室で教わったものを家で作ると母親も喜んでくれて。自分の作ったもので家族が幸せになるんだなって」。料理家としての原風景は、家族と囲む食卓によって育まれていました。純子さんのワークショップも、いつもワクワクに満ちています。「えっ?こんな簡単でいいの?」という驚きから、海外の情報や調理に関するマニアックな話など、思わず調理の手が止まりそうになることもしばしば。


ある日のシュトーレンのワークショップ。とても簡単で驚きました

高校へ進学すると教室通いは勉強と部活のためお休みとなりましたが、大学を卒業すると再び同じ先生の料理教室に通い始めます。そんな折、父親の看病のため栄養士による指導を受け、徹底した栄養学に基づく療養食も経験します。やがて自らがアレルギーとなり、一切の添加物を受け付けなくなりました。全てを手作りの食事でまかない、健康を取り戻した純子さん。二人の子どもが通った幼稚園での経験も大きかったそうです。「玄米正食」と呼ばれる動物性の食品を使用しない調理法で作られた給食は「食べ物に手をかけることの尊さを知った」と感じるほど美味しかったと言います。


tabel tableに並ぶ様々な自家製調味料

料理教室に親しみ様々な調理に触れてきた純子さんにとって、やがてワークショップを開くのは自然な流れでした。ひょんなきっかけから、滋賀県内でのアイルランドの料理教室の開催やイベントで飲食提供を経験したことを皮切りに、京都市内で友人たちと教室を開催。6年間住んだアイルランドでは味噌仕込みのワークショップや日本料理教室を、日本ではアイルランド料理の教室を展開します。2015年、祖母が住んでいた丹後の奥大野に移住してからはあちこちのイベントで引っ張りだこの存在に。食いしん坊の丹後人たちが、見逃すわけはありません。

純子さんご自身も、丹後の恵まれた食の素材や発酵文化、素晴らしい農家や料理人たちに魅了されていきました。アイルランドの文化を紹介するコンサートを行ったり、バーテンダーと一緒にウィスキーナイトというイベントを主催したり、海外からのお客様に丹後の食文化を紹介したり…今や丹後の食シーンに欠かせない活躍をされています。


アイリッシュナイトと名付けられたコンサートを開催

食べることは生きること

 「私にとって、料理とは伝えることなのかなと思っています」。味噌仕込みワークショップが終わり、静かになったtabel table。これまでの道のりを振り返って、純子さんはそう言いました。シェフやパティシエになりたかったわけではない、それでも、常に料理とともに歩んできた。料理とは、食べることとは。生きることへと繋がる食の姿を、人生の中から見出していきました。tabel tableの中央には、大きなテーブルがあります。家族と、友人たちと、テーブルを囲みご飯を食べる。「生きる」はここから始まる。

table tableの料理教室・イベントは不定期開催です。どうぞFacebookページでの情報発信をお見逃しなく。

催行時期 tabel table Facebookページにて随時ご案内します
体験料 ワークショップ内容により変動
所要時間 ワークショップ内容により変動
場所 〒629-2531
tabeltable 京都府京丹後市大宮町奥大野510
定員 ワークショップ内容により変動
申込方法 tabeltableFacebookページもしくはメール

junkohamilton@gmail.com
問い合わせ tabeltableFacebookページもしくはメール

junkohamilton@gmail.com

記事 原田美帆 写真 原田美帆

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