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日本緑茶発祥の地、京都・宇治田原町で出会った郷土料理「茶汁」とお茶の心
【宇治田原町】日本茶のルーツのまちでオンリーワンのお茶グルメ「茶汁」を味わう
京都府南部、宇治市に隣接する宇治田原町は古くから日本を代表するお茶のトップブランド「宇治茶」の生産を支える有数の産地。なかでも湯屋谷地区は、古来よりお茶栽培に適した地と伝えられており、日本緑茶(煎茶)発祥の地でもあります。その観光交流拠点「宗円交遊庵やんたん」で、お茶に関わる人々に出会いました。
宇治田原町湯屋谷には、日本緑茶発祥の歴史、ここでしか出合えないお茶、ここでしか食べられないオンリーワンのお茶グルメ「茶汁(ちゃじる)」があります。
今回お話を聞くのは、「宗円交遊庵やんたん」の運営に携わる「1738やんたん里づくり会(いちななさんはちやんたんさとづくりかい)」ガイド担当の木谷茂和(きたにしげかず)さん、キッチン担当の髙田美津子(たかだみつこ)さんと浅田八千代(あさだやちよ)さん、施設スタッフで宇治田原町地域おこし協力隊の高橋一樹(たかはしかずき)さんです。
地元住民がおもてなしする観光拠点「宗円交遊庵やんたん」
宇治田原町の中でも日本緑茶発祥の地と言われているのが湯屋谷(ゆやだに)地区。「宗円交遊庵やんたん」は、共同製茶場跡をリノベーションし、地元住民自らが観光客をもてなす宇治田原町の観光・交流の拠点として2018年に誕生しました。
季節の見どころや散策ルートなどの観光情報を入手できるほか、ここ湯屋谷で代々受け継がれてきたお茶グルメや茶処ならではのおみやげ品に出合うことができます。さらには茶文化体験もできる宇治田原観光の一大拠点となっています。
周囲の自然と融合するガラス張りの建物はオシャレで開放的な佇まい。中へ入ると木をふんだんに使った温かな空間が広がります。手前にはおみやげコーナー、その先には大きなテーブル席があり、一番奥には座敷席が。床の間もあり、和室ならではの癒しと和みを感じることができます。
「宗円交遊庵やんたん」の運営は『1738やんたん里づくり会』のメンバー約40名が中心となり、『日本緑茶発祥の地』である湯屋谷地区のにぎわい創出や地域活性化を目指し、元気な町を未来へ残そうと尽力しています。
日本のお茶のルーツがここ湯屋谷に。茶祖・永谷宗円を祀る神社も
まずはガイドの木谷さんに、施設名の「やんたん」について聞きました。
「『やんたん』とは、湯屋谷地区の愛称のこと。宇治田原町の方言では『谷』を『たん』と読みます。湯屋谷のお茶は、小さな山々の『谷』を利用して栽培されているので、茶畑を見つけにくいかもしれませんね。良質な水と風通し、昼夜の寒暖差、やわらかい日差しが美味しいお茶を栽培する条件なんですよ。」
もともと郵便局に勤めていた木谷さん。「地元でお世話になったたくさんの方々に恩返しをしたい」という思いを常々持っていたことでガイドに応募された方です。
今では誰しもが飲んでいる緑茶ですが、江戸時代まで庶民が飲むお茶と言えば、味も香りも粗末な茶色いお茶のことでした。木谷さんに緑茶発祥の由来を教えてもらいました。
「今、皆さんが飲んでいる緑茶の礎となった『青製煎茶製法(あおせいせんちゃせいほう)』を発明したのが、ここ湯屋谷に暮らし茶業を営んでいた永谷宗円(ながたにそうえん)です。当時茶色いお茶を鮮やかな緑色に変えたことは本当に画期的なことでした。宗円は15年かけて研究し、1738年(元文3年)についに完成。その後、江戸に行って緑茶を販売し、瞬く間に江戸で大ヒットしました。」
さらに宗円の素晴らしいところを木谷さんは語ります。「15年もかかった製茶法ですが、惜しげもなく多くの人に教え全国に広めた点です。庶民の生活を良くしようと世の中に貢献した宗円は、“茶宗明神”として生家隣にある茶宗明神社で祀られています。」
今では、海外の世界最大級のコーヒーチェーン店や高級紅茶ブランドなどの幹部の方々が茶宗明神社へお参りに来ることもあるそう。「僕たちが気づかなかった地元の素晴らしさを世界の人が教えてくれたんです。」木谷さんは嬉しそうに教えてくれました。
爽やかな香りと程よい渋みで、すっきりとした味わいが特徴の煎茶。宗円が生み出した色鮮やかな緑茶を堪能できます。煎茶セットはお菓子付き400円で販売しています。
湯屋谷地区ならではのご当地飯も提供「あばんずキッチン」
「宗円交遊庵やんたん」内の飲食を提供する「あばんずキッチン」では、メイドイン湯屋谷の宇治茶やお茶スイーツ、地元の食材をふんだんに使い、手作りにとことんこだわったランチがいただけます。
「あばんず」の「あばん」とは、宇治田原の方言で「おばちゃん」という意味。70代の女性スタッフが中心となり運営しています。メニューの中でも「茶汁」は、地域で受け継がれ愛されている食文化として、文化庁から「100年フード」の認定も受けました。
現在も100軒以上の茶農家がお茶作りに力を注ぐ宇治田原町。その中でも、湯屋谷のみに代々受け継がれてきたご当地飯が「茶汁」です。
茶汁とは、茶摘みや畑仕事をする茶農家がお昼ご飯として食べていた即席味噌汁のこと。こちらでは、土日祝限定11:00~14:00のみ茶汁を販売中。抹茶椀で茶汁を提供するスタイルは「あばんずキッチン」のオリジナルです。
こちらは茶汁におばんざいが付いた「彩りの茶汁セット」(1,000円)。お客さんの目の前でたっぷり香ばしい番茶をかけて仕上げます。
「番茶はどんな食材とも相性がいいんですよ。茶汁の具材は、家によってそれぞれ。ニシンを入れるところもあれば、チキンラーメンを入れるところもありますね(笑)。セットの茶汁にはいろんな工夫を込めています。」と、浅田さん。
取材当日の茶汁の具材は、焼きナス、素麺、ハート型のニンジン、水菜、冬瓜、そして大豆栽培から手掛ける自家製味噌。秋冬バージョンでは、焼きナスが原木椎茸に、素麺がお餅に、冬瓜が大根に変わります。
茶汁を彩るおばんざいはかしわ(鶏肉)を使用した地鶏のすき焼き。湯屋谷ではお祝い事の際に必ず出されるメニューなんだとか。ほか、野菜の煮浸し、手作りこんにゃく、柚子味噌、酢の物がセットになっています。ご飯には碾茶(てんちゃ)の風味が豊かな自家製ふりかけも。
「実は茶汁を食べるのは宇治田原町の中でも湯屋谷地区の人だけ。昔は、家からお弁当と一緒に手作りの味噌、花かつお、三つ葉や芹をお椀に入れて持参し、畑のたき火で沸かしたお番茶をかけていただいていました。歴史は古く、江戸時代まで遡るのではないかと地元では言われています。」と、髙田さんは話します。
ここでしか出合えないおみやげ、体験について
地域おこし協力隊の高橋さんにおすすめのおみやげ、体験を紹介してもらいました。
「一番のおすすめは、ここ宇治田原町湯屋谷地区でしか出合えない『荒茶(あらちゃ)』。現在およそ5軒のお茶農家さんの荒茶を販売しています。荒茶は生産農家が作ったそのままのお茶の味が魅力。旨みや渋みも含めて楽しんでくださいね。」
一般的に販売されているお茶の多くは、卸問屋が複数の荒茶を選別しブレンドしているものが多いといいます。荒茶そのものが買えるのはなかなかないことです。
荒茶のほかにも、茶祖・永谷宗円の生家があしらわれたパッケージ入りのお茶もおみやげとして大人気。
急須で丁寧に淹れて飲みたい方におすすめの煎茶「宗圓」(80g1000円)は香り、味わい、色味ともに一級品(写真左)。湯屋谷地区で栽培した茶葉を誰でも美味しく簡単に淹れられるようにと開発されたティーバッグのお茶「ほうじ茶やんたん」、「煎茶やんたん」は各1000円。(写真奥)昔ながらの製法で丹念に挽きあげた「宇治抹茶やんたん」(1200円~)は、色や泡立ちに加えて風味ゆたか。(写真手前)
また、体験メニューも充実。お茶の種類当てがゲームのように楽しめる茶香服(ちゃかぶき)、宗円が生み出した『青製煎茶製法』での手もみ製茶体験、お茶の淹れ方体験、茶摘み体験、石臼引き体験など。詳しくは公式HPをチェックしてください。
いきいきとして笑顔が絶えないみなさんの原動力
100年フードに認定された茶汁をきっかけにもっと多くの人に湯屋谷の魅力を知ってもらい、次の世代につないでいきたいという純粋な想いがいきいきとした笑顔から伝わります。日本をよくするために惜しみもなく尽力した永谷宗円のスピリッツは、この先も湯屋谷の人々に引き継がれていきます。
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