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肉のまち福知山で[わがまま]に味わえる、ステーキをメインにしたごはん屋さん

【福知山市】
肉のまち福知山で[わがまま]に味わえる、ステーキをメインにしたごはん屋さん

カウンターで肉好きシェフが目利きした贅沢な一皿を

「肉のまち」と評される福知山。人口に対して焼肉店が多いといわれるこの地に、新しいタイプのステーキ店を開いたのが足立龍(あだちりょう)さんです。

カウンターを中心とした洗練された雰囲気だけでなく、肉の提供を100g から 50g 単位カットで対応しているのは、福知山の中ではなかなかないスタイルと好評。また「ステーキ店というより、ごはん屋さんです」という足立さんの言葉どおり、地元の野菜や魚を使った前菜、パスタなど、肉料理の他にもメニューが豊富に揃い充実しています。

製菓学校を卒業後、大阪の外資系ホテルにパティシエとして就職した足立さん。なぜ故郷に帰り、ステーキを看板にしたレストランを開いたのかをお聞きしました。

カフェやレストラン、ホテルの立ち上げに携わる


地元、福知山の工業高校卒業後、京都の製菓学校に進学し、大阪の外資系ホテルにパティシエとして就職した足立さん。その後、菓子だけでなく料理の腕を磨く機会も得て、カフェやイタリアンレストラン、さらにはホテルの立ち上げ、商品開発にも携わってきました。

いずれは、自分の店を持ちたいと考えていた足立さんにとって、調理の技術を磨くと同時に独立に必要な流れや知識など貴重な経験ができたといいます。

自分の店を持つ。まずどこに店を開くかを考えた時、真っ先に頭に浮かんだのは生まれ育った福知山です。これまでは、大阪だけでなく東京でも仕事をしてきた足立さんですから、場所の選択はさまざまありました。しかし、独立した自分の姿を思い描いた時は、どこでもなく福知山だったのは「時間の流れがゆっくりしている、このスローな感覚が自分に合っていると思いました」と、理由を明かします。

肉好きシェフがブランドにこだわらず目利きした肉を


20206月にJR福知山駅前に「ku-nel (クーネル)」を開業。内装は中国で古い建物に用いられていたという青みがかったグレーのレンガが施され、上質でおしゃれな雰囲気を漂わせる店内。中心となる立派なカウンター席がひと際目を惹きます。

 

「敢えて、外からは中の雰囲気が何も見えないようにしました。ワクワクしながら扉を開けて一歩踏み込んだ瞬間の『あっ!』という驚きを大切にしたかったからなんです。この形はこれまでの店舗立ち上げのときにも、よく行っていました。

 

大阪や東京、京都市内では、カウンターでの食事は珍しくありませんが、この辺りではあまり見かけません。地域性から個室やテーブル席が好まれるのはわかっていたのですが、カウンター席の良さを知ってほしいので、このスタイルにこだわりました。オープンキッチンで料理人の手さばきやどのように調理されているのかを、実際に見てもらいながら味わってもらえたらと思っています。」


「福知山=肉のまち」を意識されて、ステーキを看板メニューされたのかと思えば、実は違うそうです。シンプルに、足立さん自身が肉好きだったから。おいしい肉を多くの人に味わってほしいと考え、足立さんはブランドにこだわらず、自分の五感を使って目利きして肉を手に入れています。

 

「地域には焼肉店はたくさんありますが、がっつり肉を食べたい時って、僕の場合は違うんです。塊の肉が食べたい(笑)。なので、自分が満足できる肉料理の提供をと考えました。

 

ネームバリューがある肉は安心感につながります。でも、自分の舌や鼻でうまいと思ったものを仕入れます。それが、たまたまアメリカ産だったということです。コースの時には、丹波牛や但馬牛を使用することもありますが、生産量が圧倒的に少ないので、ものすごくコストがかかります。それよりも、安全な環境で飼育された上質な肉を、気軽に楽しめるほうが良いのではないかと考えています。」


おいしい肉をおいしくお客様に食してもらうために、肉好きシェフならではの工夫と配慮があります。

「お皿を下げて、残っているのを見ると悲しくなります。なので、すべて満足して口にしてもらうために、単にオーダーが入ったグラム数の肉を焼いて出すのではなく、食べられない部分の筋や余分な脂を取り除く下処理をしてからにしています。 200gのオーダーが入れば200gすべて残さず食べられるということです。50g 単位のカットにしているのはそういったこともあります。」

メニュー表(100g1500円~)には、脂が少なくさっぱり食べられるヒレやハラミ、良質なサシでおいしく脂を味わうサーロインなど、5種類の部位の特徴や肉質、風味などが丁寧に書かれています。

お客様側に立ち、自分の好みで注文しやすいようにという心遣いの表れで、店名にも通じることです。「ku-nel」とは、いわゆる「食う寝る」で、「食べたいように食べて、あとは寝るだけ。そんな大人のわがままを」というコンセプトで名付けられています。


ステーキ店というよりごはん屋さん


ステーキの他にも、新鮮な野菜や卵をはじめとする地元産の素材を使った料理を豊富に用意しています。中でも人気の「濃厚卵黄で食べる炙りすき焼(990円)」は、地元産の鮮やかで味の濃い卵黄を味わっていただきたいと考案されたメニュー。低温で炙ったサーロインに赤ワインを使った割り下と卵を絡めて楽しむ、素材そのものを味わう一皿です。

日替りメニュー(700円~)には前菜やパスタなどイタリアンの数々が用意され、アクアパッツァなど魚料理もオーダーできます。ステーキが主役のお店なのに、来店は男性客よりも女性客が多いのは、このサイドメニューの充実ぶりにあるのかもしれません。


「飲食・サービス業界でのスタートはパティシエでしたが、気が付けば料理がメインになっていました(笑)。でも、独立したら料理人としてだけでなく、菓子職人としても何かしたいとずっと考えていました。それでも、一人でいろいろするのは難しいので、焼き菓子1種に絞ることにしました。それは、修業時代に一番苦戦したカヌレ。なめらかな食感を保ちながらカリっと焼き上げる、かつ、美しいフォルムに仕上げるカヌレは、フランス焼き菓子の中でも最難関に位置すると言われています。性格的にハードルが高いほうが、長く打ち込めると思ったしね(笑)

 

それに、カヌレの主な材料となる牛乳と卵は、地元丹波というブランドが背中を押しました。丹波栗や丹波黒豆、福知山産ほうじ茶などを使ったカヌレは9種類(230円~)。現在は、店舗での販売とオンラインでも購入できます。」


料理人にとって嬉しいのが「生産者と近いこと」


福知山に戻ってきて一番に感じるのは、新鮮な素材が手に入ること。そして、手元に届くまでに仲介が少ない分、都市部よりリーズナブルな価格で仕入れることができると足立さんは言います。

「独立する前に仕事をしていた時の仕入れは、ほとんどがメールでのやりとりでしたが、今は直接、ちゃんと顔を見て話をして、素材がどのように作られたものなのかを知ることができます。そのやりとりが、お互いの安心と信頼感につながる、そんな当たり前のことに気づきました。生産者との距離が近いことは料理人にとって理想の環境です。また、兄が農家をしているので、使ってみたい野菜の試作もできて、ありがたいと思っています。最近、自ら畑を借りて、野菜作りを始めました。都会でも自家菜園はできますが、畑まで通う時間や手間が結構かかります。ここならすぐ近くにあるので続けやすいですね。」

 

コロナ渦にオープンして2年が経ちました。足立さんの目標は、地域に根づいた店。特別な日はもちろん、日常的にも利用してもらえるごはん屋さんを目指すと話します。そして、福知山を拠点に、カヌレの通信販売といったさまざまな新しいことも。常に前を向き進む、足立さんの次なる仕掛けも気になります。

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