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亀岡の魅力を考え就農を志しUターン 野菜や農業に関わる人を輝かす日々へ

【亀岡市】
亀岡の魅力を考え就農を志しUターン 野菜や農業に関わる人を輝かす日々へ

目標の実現を目指し自然や人と向き合う毎日

地元亀岡市から名古屋の大学へ。そこで恩師と出会い、将来は経営コンサルタントになることを夢見てUターンした、谷村岳志(たにむらたけし)さん。
改めて地元の良さを見直し興味を抱いた[亀岡の農業]は、調べるほどに過酷なことがわかっていたといいます。しかし、覚悟を決め挑むことにした2012年から、およそ10年が過ぎました。

谷村さんは、明るく意欲をみせながら「まだまだこれから。人生長いですから」。

道のりは長くとも、厳しい現実と対峙し一つずつ解決して将来が見えてきたからこその言葉です。就農した理由、これからのことについてお聞きしました。

野菜

地元の魅力を探り知る[亀岡の農業]のこと

亀岡市で生まれ育ち、南丹高校を経て大学は名古屋へ。経営学部に進学し、経営コンサルタントをする恩師の姿を見て、自身も同じ道を進みたいと将来の目標を決めたといいます。まずは、営業が大切だと、5年ほど名古屋の大手乳製品会社で仕事をした後、2012年に地元へ戻る決意をしました。

「一人っ子でもあるので、いつかは地元に戻ると大学進学時から考えていました。目標は、中小企業診断士という経営コンサルタントの道ですが、地元・亀岡ならどの業種に必要とされるのかいろいろ考える中、実は京野菜の7割が亀岡で生産されていることを知り、さらに地元の農業の現状などを調べました。」


花

おいしい野菜を未来に残し亀岡の地を元気に


亀岡市は、秋から春にかけて、朝霧が亀岡盆地に広がる[霧のまち]として知られています。この霧や山々からの水が、おいしい京野菜や米を育み、旬の食材を京の都に届けてきた、いわば[京の台所の要]ともいえる存在が亀岡の地です。しかし、専業農家の方々の高齢化が進み、次代を担う若手が減少していることは確かなこと。谷村さんは―


京都エンジョイファームの谷村岳志さん

「寒暖差がありますし、土壌もいいので亀岡の野菜はおいしいです。だから途絶えさせてはいけないと思う気持ちが高まり、農業の力で亀岡を元気にしたいと思うようになりました。そして、厳しい状況にある産業だからこそ、幸せに生きる方法を時代に合わせて作ることができればと、この職業を選びました。実家は農業とは一切関係ないので、本当にイチからのスタート。国の農業次世代人材投資資金を利用して、数年亀岡の専業農家で露地栽培の研修をさせていただきました。自分の畑をしながら学びましたが、現実は厳しい。まずは自然との闘いがありました。売れる野菜を作るには[規格]があります。例えば小松菜とか1ヶ月半でできますが、どんどん成長するので規格内に納めるのに寝る間を惜しんで獲らないといけない。自然相手だと毎日追われる感覚です。あと台風が直撃すると終わりとか、自然には勝てない、何もできないと感じることが多々ありました。」


パプリカ

就農後直面、育てた野菜のフードロス問題

亀岡市で農業者をする場合、三反(30アール)以上耕作するというのが最低条件。その時期に作れる季節野菜を10種から20種くらい作ることから始めたという谷村さん。

「三反の広さは、1ヘクタールの3分の1程度で、最初この大きさでも大変でした。それが今では、亀岡市保津町を中心に10ヵ所くらい、約1.5ヘクタールになって。農業を辞められる高齢の方から畑を受け継いだりして、どんどん大きくしていきました。最近は、有機栽培にも興味があって、有機で大丈夫な場合はできるだけそうして、野菜を作ることにこだわりも持つようにしています。

ただ畑が大きくなると、形の悪いトマトや曲がってしまったナスとか、売れない規格外の野菜も増えて。おいしく食べられるのに捨てないといけない、いわゆるフードロス問題に直面しました。ネギ農家の方は、作ったネギの半分を捨てるなんて話が当たり前だと知りましたけど、そんなのもったいない。それで、2018年に野菜を使った料理を提供する飲食店を駅前で始めたんです。」

[KAMEOKA FOOD Kitchen]の料理

JR亀岡駅から徒歩すぐにある「KAMEOKA FOOD Kitchen(カメオカフードキッチン)」。自家農園による亀岡野菜の料理に、丹波地どりを使う料理、クラフトビールが売りのお店です。人気の「バーニャカウダ」700円は、季節野菜5種から6種を、谷村さんのお母さんが作る味噌を入れたバーニャカウダソースで味わいます。フルーツトマトのアイコは生で、シャドークィーンというジャガイモやシロオクラなどは茹でて、白ナスは揚げるなど、おいしく味わえるように素材に合わせた調理をして提供しているそうです。また「丹波地どりやきとり串」1200円に、人気の「やきとり盛り合わせ」1000円には万願寺唐辛子やピーマンの肉詰めをいれるなどして、野菜もちゃんとアピール。他にも新種のニシュタカというジャガイモを使うポテトフライといった、フードロスの解決策だけでなく、野菜への興味を抱いてもらえるようなメニュー構成も。谷村さんは―


[KAMEOKA FOOD Kitchen]の店内

「飲食経験は、学生時代のアルバイト程度でした。2階にお店がありますけど、その1階にバーがあって店主と知りあいで、最初は料理のことも含めて手伝ってもらいました。オープンして数年経って、今は料理も面白いですね。亀岡エリアには農家の方が多いですから、おばあちゃんにもらったとかで、おいしい亀岡の野菜を地元の方は食べ飽きています。だから、このお店の料理をどのようにアピールしていくのかは課題です。畑で獲れた野菜をどうすれば輝かせることができるのか、おいしくなるのか、そんなことばかり考えます。とはいえ、作った野菜をおいしそうに召し上がっていただけるのは単純に嬉しい。消費者の方と直で接することができるのは励みになります。

 

売れないけど食べられる新鮮な旬菜・フードロスになる野菜は、いっぱいある時もあれば、少量の時もあります。でもベテランの農家の方と比べると多い方かもしれません。十年程度農業をしたくらいでは、わからないことも多いですから。」


京都エンジョイファームの谷村岳志さん

農業を「エンジョイ」できる働き方や生き方を提案していきたい


谷村さんが地元に戻り、始めた農業。4年ほど前から研修生を受け入れることになったのも一つのきっかけで、少しずつ本来の夢である経営コンサルタントに近づいたといいます。

 

「まだ駆け出しなのに、研修生2人を受け入れることはなかなかの挑戦でした。でも、教えるというよりは、一緒に学んでいこうと考えて。漠然と農業関連のことで独立したいと思っていた2人で、農作業をしながらディスカッションもして、野菜を販売することで落ち着きました。もう卒業して亀岡市内で八百屋さんをしています。そして、今は1人研修生がいます。

 

実は、これをきっかけに[人を輝かせたい]と、思うようになりました。今後もうちの畑を使って研修生が独立に向けた経験をできるようにしていきたいですし、農業を通して社会とのつながりを持てる機会をつくったり、農業で働き方や生き方をエンジョイできるような仕組みを考えたり。農家として野菜をつくることはもちろんですが、農業を核としたサポート・コンサルティングができたらと考えています。その第一歩になったのかもしれませんが、今は古民家を利用して、農業に携わりたいという人が集えるシェアハウスの運営もしています。

 

本当においしい亀岡の野菜。皆さんにその存在を知ってほしいということは基本です。それに、経営コンサルタントという仕事も加えて、広げていくことができたら。亀岡の野菜、そして農業に携わる方のどちらも主役にして、輝かせることができるようになれたらと思っています。」

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