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京都「CINQ pain(サンクパン)」が作るミシュラン星付きレストランが熱望するパン

【大山崎町】
京都「CINQ pain(サンクパン)」が作るミシュラン星付きレストランが熱望するパン

数々の有名レストランが一目置く大山崎町のパン屋さん

自然豊かな京都の大山崎の地に店を構える「CINQ pain(サンクパン)」。駅からは遠く、車がないと訪れにくい地域にありますが、特に土・日曜日には開店時間の朝8時から客足が絶えず、早々に売り切れてしまうほどの人気ぶり。
いくつものミシュランの星付きレストランから、ここのパンでなければと熱望されることからも実力のほどがわかります。
店主の宮本正幸さんにパン作りにかける思いをお聞きしました。


大阪の「ル・シュクレクール」でパン作りの修業を積む

宮本さんが本格的に修行を積んだのは、大阪の有名ブーランジェリー「ル・シュクレクール」でした。その前に勤めていた店の方向性が変わり、ハード系を極めたかった宮本さんとのズレが生じてきた頃、当時オープンしたばかりのシュクレクールのパンと焼き菓子に出合い、将来を考えるならここしかないと決意します。スタッフの募集はしていないと断られても、簡単にあきらめることはできませんでした。

「1ヵ月間ずっと通いました。『もういいや、OK。入り』と言われるまでひたすら通いつめました」。
一度決めたら、何があってもやり抜く。淡々とおだやかな口調で話す宮本さんですが、秘められた強い情熱を感じます。
「基本的に僕のものごとの決め方は、自分がやりたいかやりたくないか。希望をかなえるにはどうするべきかを考えて、こいつやったら入れてあげてもいい、自分を必要としてもらえる状況をなんとか作ろうと。そういう感じでないとシュクレクールでは続かなかったと思います」。
その頃はスタッフも少なく、オーナーシェフの岩永歩さんと二人きりでとにかく大量の作業をこなす日々。宮本さんが入る前はあまりの激務に人がついていけず、当時最長で4ヵ月しか続かなかったそう。「本当に無茶苦茶忙しかったし、きつかった」と、当時を振り返ることもあるけれど、その3年間の経験があってこそ今に繋がっていると語ります。

生地と対話し、生地にゆだねるパン作り

ショーケースに並ぶパンは50〜60種類。バゲットなどのハード系を中心にクロワッサンやシャバタなどのほか、ガトーショコラやカヌレといった焼き菓子も人気があります。何パターンもの生地を作らなければならず、日々の作業は山のよう。

起床時間は深夜12時。店に入って前日に仕込んでおいた生地を焼成するところから、仕事が始まります。ライ麦から起こした液状天然酵母を使い、一晩かけてゆっくり低温熟成させた生地は、冷蔵庫から出して焼く前にしばらく室温に置くのだとか。

「人といっしょで、生地も朝起こされて急に何かやれって言われるより、慣らしが欲しいじゃないですか。基本、パン作りは人間が作るので人間ベースになる。自分たちが寒いと思ったら生地も寒くて、暑いと発酵が進むけれど自然な発酵ではなく、だれちゃうし汗もかくんです」。

まるで生き物と対話をしているような、そんなパン作り。

ハード系の生地にはほとんど触らず、じっくりじっくり熟成させて、その間に美味しくなってもらう。しっかりと粉の味を引き出すための時間です。「生地にゆだねる」と宮本さんは表現します。


 一方、クロワッサンの製法は真逆で、人がしっかり管理し、つくり込む。

「クロワッサンは人が操作している部分が多いです。生地が動こうとしているのを抑えて、最後まで持っていくような感覚でしょうか」。

サクサクと歯切れの良い薄い層、豊かに広がるバターの香りがたまらないのクロワッサン。

「バターはたくさん入れればいいんじゃなくて、固形の状態を保つことが必要。量ではなくて状態です。バターが緩んでしまったら、美味しくない匂いがするだけ」。

バターと生地の状態を保つために、折り込むごとに急速冷凍庫に入れ、凍ってしまう手前で取り出してまた折り込み、それを何度も繰り返す。ハード系と方向性がまったく違う、こちらはいかに生地とバターの状態をコントロールするかが勝負です。


自然が好き。四季を感じたいから、この場所で

もっと街中に店があれば毎日だって通うのに。そう願うファンは多いはずですが、この場所を離れるつもりはないのだとか。

もともと洛西出身ということもあって地元への愛着も深く、また自宅から店舗へ通う道で、緑や周囲に広がる畑を見ながら季節の移り変わりを知れるのが大切なのだそう。

「ものを生み出す者として四季を感じないと。今はこういうものが美味しいから、こういう商品を作ろうかと考えたりします。けれど、やっぱり自然が好きなのが一番の理由かな。ずっと自然にふれながら仕事をしていたいので、街場に出ようとは思いません。ここは目の前に広場があって、春はいい感じに桜が見えるんですよ」


お客さんと「好き」を共有して、信頼関係を結びたい

店内には対面式のショーケースに加えてイートインできるカウンターがあり、さらにコンフィチュールやソーセージなどのシャルキュトリーにチーズや缶詰、ワインやビールも販売しています。まるで美味しいものばかりを集めたセレクトショップのよう。

並んでいる商品はほとんどが国産。日本の良さをもっと知ってもらいたくて、宮本さん自身が直接生産者を訪ねて揃えたものがほとんどです。


「せっかくスペースがあるなら、自分のやりたいことを詰め込んだ店にしたかったんです。

お客さんには、ここに来ればパンだけじゃなく色々な美味しいものがある。ここで売っているものならいいに違いないと信頼してもらえればと思います」。


お客さんから声がかかれば奥の厨房から顔を出し、作り手の熱意を伝えるべく話し込む時もあるとか。またイートインに使うお皿も自ら選んだ作家の物。誰の作品か尋ねられたり、これもコミュニケーションのきっかけになっています。

「自分の好きなものを好きといってくれる人がいれば嬉しくなります。お客さんとのやりとりを通じて、ずっといい関係性を築いていきたいと思っています」。


 バゲット324円、クロワッサン248円、パンドミ1/2 237円・1本464円、タルトショコラ410円、カヌレ313円、ポルチーニ茸と白いんげん豆のキッシュ410円ほか

イートインは休止中

紹介情報

  • CINQ pain(サンク パン)
    TEL 075-874-4159075-874-4159
    ウェブサイト

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