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激辛ブームの火付け役!京都向日市激辛商店街で街をホットに盛り上げる
【向日市】京都盆地の南西端にある、西日本で一番面積が小さな市「向日市」。その街で2009年、街全体を商店街に見立てた点在型「京都向日市激辛商店街」が誕生しました。
激辛をテーマにした町おこし「KARA-1グランプリ」を主催して大成功をおさめ、激辛の聖地としても全国的に名が知られるようになりました。
今や、京都向日市激辛商店街には激辛ファンだけでなく、商店街を活性化させたい商工関係団体が続々と視察に訪れます。
京都向日市激辛商店街・会長を務め、「純中国料理店」を営む宮路亮さんに、なぜ激辛を町おこしのテーマにされたのか、また、「第1回KARA-1グランプリ」でグランプリを獲得した激辛担々麺についてもお聞きしました。
地域に根ざした本格中国料理店・麒麟園
京都向日市激辛商店街・会長の宮路亮さんの本業は中華料理人です。50年以上続く「純中国料理店 麒麟園」で厨房に立たれています。
こちらの店は「向日市の人に本格的な広東料理を楽しんでほしい」と、亮さんの父である代表取締役・宮路保さんが1966年に創業しました。当時は、向日市で高級料理としての中国料理は珍しかったのだとか。
料理はあっさりとした広東料理をベースに庶民的な餃子やラーメン、昼の定食から高級な北京ダックやフカヒレの姿煮まで幅広いメニューを取り揃えています。
中でも創業当時から人気のメニューは「黒酢すぶた」1250円。深みのあるコクを引き出す鹿児島産の黒酢を使い、あっさり仕上げる甘酢に、季節の野菜と地元特産のタケノコが絶妙に絡みます。特に女性のファンが多いそうです。
激辛をテーマにした向日市の町おこしと「KARA-1グランプリ」
宮路さんは店を営む一方、向日市商工会青年部部会に所属し、地域活性化のために活動していました。この辺りは古くから良質な竹やタケノコの里として知られていたこともあり、特産品を活かした町おこしができないかと考えて竹馬全国大会を開催したところ、熱狂的な竹馬ファンが全国から集まりイベントは大成功。ターゲットの設定をしっかりすれば、遠方からでも人はやってくることがわかりました。
しかし、来訪者の食事や土産の購入はそのほとんどが京都駅だったそうで、町おこしに一番大事な経済効果を生むことができず、課題が残りましたが、次につなげることとなります。
しばらくして、地元に大型ショッピングセンターの出店が決まりました。個人商店の存続を揺るがしかねない事態です。そんな危機感から、何かインパクトがあり、どこもやっておらず、かつ、経済効果を生むものは何があるか……。
部会メンバーで知恵を絞っていたところ、当時のリーダーが「激辛は?」と発案。実のところ向日市とは縁もゆかりもありませんでしたが、強烈で新鮮なイメージをもつ「激辛」に望みを託して、やってみようと奮起。こうして、2009年7月に「辛いけど旨い」食べ物にこだわった「京都向日市激辛商店街」が誕生しました。
当初は「B-1グランプリ」(全国各地のご当地グルメを通じた「まちおこし団体」の共同PRイベント)への出場を目標にしていました。ですが、「参加するよりも主体的に自分たちで立ち上げよう」ということになり、2012年3月にはじめて「KARA-1グランプリ」を開催することになったのです。
辛いだけでなくコクも旨みも楽しめる“辛うま”な激辛担々麺
麒麟園では、「第1回KARA-1グランプリ」に出場するからには絶対に優勝するという目標のもと、宮路さんを先頭にスタッフ一丸となって取り組みました。
当時のことを、宮路さんはこのように振り返ります。
「何もかも初めての大会なので手さぐりでしたね。麺の種類は?硬さはどうする?スープは?という風な感じで。一番難しかったのは、辛さをどのレベルに設定するか……。辛いけどおいしいというギリギリのラインの味を、みんなでむせつつ、時には腹痛と戦いながら(笑)試食しまくってましたね」。
こうして、何度も試作を繰り返し、ついに激辛担々麺1000円が完成しました。
苦心した辛さのバランスは、日本一の辛さを誇る祇園の「黄金一味」をはじめ4種類をブレンドした唐辛子に、世界一辛いと言われるジョロキアをプラスして調整しました。鶏ガラベースのスープは、ゴマをふんだんに使い、特製の肉みそでコクと旨みを演出して“辛うま”な一杯に仕上げました(店では1~5まで選べ、テイクアウト・お土産用もあります)。そして、大会では宮路さんとスタッフの苦労が実り、見事グランプリに輝くことができました。
第1回「KARA-1グランプリ」には、8都府県から約50店舗が参加し、約2万人が来場したといいます。
「数多くのメディアに取り上げられたことも影響していると思うのですが、世の中には、こんなにも激辛好きがいたのか、と本当に驚きました」。
それ以降、「商店街・街の衰退」の課題を抱えた商工関係者が、町おこしの成功モデルを視察するために全国各地から押し寄せたそうです。
各店舗が自由で発想豊かなオリジナルメニューを創出
「KARA-1グランプリ」は回を重ねるごとに話題を呼び来場者も増え、コロナ禍となる前は10万人超まで達したとか。2015年に近畿経済産業局「近畿イケてる商店街10選」、2016年中小企業庁「はばたく商店街30選」を受賞しました。
当初20店舗からのスタートだった「京都向日市激辛商店街」の加盟店も増え、現在は50店舗を大きく越えています。当初危惧していた大型ショッピングモール内にある飲食店も数多く加盟し、大型店と地元個人店が連携し、ともに地域を盛り上げる理想的なスタイルになっています。
加盟店舗が考案するメニューがまたユニークです。
激辛と耳にすると中華やエスニックの飲食店を連想しますが、激辛と縁がない和菓子店やパン屋、カフェ、さらに食品以外の文房具店やクリーニング店なども加盟しています。
激辛の商品は、これまでの商品も含めてご紹介すると、みたらし団子のピリ辛タレや激辛カレーパン、ジョロキア味のボールペン、辛口おやじの激辛しみ抜きクリーニングなど各店舗が自由な発想で工夫を重ねたツワモノばかり。
宮路さんは商店街の取り組みについて「たとえ入口は激辛メニューでも、他のも食べてみようかなと、それ以外の料理の注文や商品の購入につながって、店のファンになってもらえるのが一番ありがたい。激辛を通じて多くの人に向日市を知ってもらいたいですね」とのこと。
10年以上前、「激辛」は罰ゲームのようなイメージで、どちらかと言えばマイナスな印象だったのではないでしょうか。既存の価値観を打ち破り、町おこしを大成功させた「京都向日市激辛商店街」。みんなの力を合わせて諦めずに行動すれば、目標は叶うもの、と改めて感じることができました。アイディアいっぱいの商品との出合いを求めて、店舗マップを片手に、ぜひ激辛巡りをしてみませんか。
紹介情報
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京都向日市激辛商店街