食の京都
PEOPLE
  • #おいしい
  • #お茶の京都

誰もが楽しく一緒にテーブルを囲める
自家農園野菜が満載の本格フレンチ

【井手町】
誰もが楽しく一緒にテーブルを囲める
自家農園野菜が満載の本格フレンチ

完全バリアフリーの空間で味わう地産地消のフランス料理

地元の自家農園で収穫したばかりの無農薬・有機野菜を用いた料理が楽しめる、地域でも指折りの本格フレンチが「レストラン庵樹」です。
コース料理の最初に登場するのは、菜園仕立てと名付けられた色とりどりの前菜。シェフの思いや工夫もふんだんに盛り込んだ一皿を、ゆっくりと味わってみてください。

完全バリアフリーのゆったりとしたフロア

遠くからでも目を引くフランス国旗・トリコロールの旗。建物もモダンな印象で、玄関から真っ直ぐに延びた通路の奥に広がるフロアは、正面窓が一面のガラス張り。デッキ越しに連なる並木や、季節ごとに移り変わる新緑や紅葉が望める開放的な空間です。
ここまで段差は一切なしの完全バリアフリー。テーブルの間隔もゆったりで、車いすに乗ったままでもスイスイ動けます。

「レストラン庵樹」を運営するのは、障害をもつ人の自立を支援する社会福祉法人 京都ライフサポート協会。さまざまな福祉サービス事業を展開し、利用者の働く場所として軽作業所やパン工房などを設けています。そのうちの一つが、こちらの本格フレンチレストラン。福祉法人としては全国でも珍しいケースとして注目されています。

自家農園の野菜を使ったフレンチを

「井手町からこの場所で作業所を、とのお誘いを受け、飲食店だったらうちの自家農園の野菜に付加価値を付けられると考えて」と常務理事の樋口ちづ子さん。そうだ、フレンチのコース料理なら一皿ずつテーブルに運べばいいので、ゆったりと働くみんなにぴったりかも!そんなアイデアから、2011年にレストラン庵樹が誕生しました。
一流のシェフが手がける料理は大好評。それでいて価格は比較的リーズナブルで、特別な記念日はもちろん、家族や友人とちょっと美味しいものが食べたい時に気軽に訪れられると、地域でも人気の店になりました。
そして昨年、初代のシェフが勇退。秋に新しく浪江誠シェフを迎え、メニューも一新して再スタートを切りました。


料理長が前菜に込めた思いとは

浪江シェフは東京のホテルに始まり、出身の京都や滋賀の数々の有名ホテルのフレンチレストランで経験を重ね、総料理長まで務めたベテラン中のベテランです。
ここで働くみんなの事情もよく理解して、いろいろと工夫を凝らしておられます。サービスするスタッフのことを考えてコースの皿数をしぼり、最初に登場する前菜は、一皿で少しずつ色々な味が楽しめるように盛り合わせたもの。お皿も持ち運びしやすいよう、フチがあるものを選びました。

そしてもちろん、野菜は無農薬・有機栽培した自家農園のとれたてをふんだんに。畑までは車で5分と近く、シェフ自らが足を運び、生育の様子を見に行くこともしばしばです。約3000平方メートルある畑では市場にはあまり出回らない珍しい野菜を作ってもらえたり、何より鮮度の良さには大満足。また、2月頃から出始めるイチゴの美味しさは格別なのだとか。


抹茶や地元の旬の食材を取り入れたコース

華やかな「前菜の盛り合わせ 菜園仕立て」(1月の一例)には、農園のハンサムグリーンのサラダ、パテ・ド・カンパーニュ、蟹と百合根のゼリー寄せ 根セロリのソース、玉ねぎのタルトほか盛りだくさん。ラディッシュは畑から引き抜いたばかりのように、土に見立てた黒オリーブ粉をまぶし、遊びごころも満点です。

サーモンに添えてあるのは、抹茶とブロッコリーのソース。見た目に鮮やかな緑色がサーモンをひきたてます。ブロッコリーソースとの取り合わせはこれまでにありましたが、試しに同じ色味の抹茶を加えてみたら、意外にも相性ぴったり。お茶の風味とサーモンが合うなんて発見です。
浪江シェフ自身、これまでデザートにお茶を用いることはあっても、料理には初めての試み。地産地消をテーマの一つとして、お茶のほかにも城陽酒造の酒粕を使ったり、地元の旬の食材を意識して取り入れていきたいとのことでした。

アヴァンデセールの一例、「ゆずのブランマンジェ」。おしゃれな木製の下皿は、実は台風で倒れてしまった木を輪切りにしたもの。シェフのひらめきで提案したところ、木工工房を営む利用者のご家族が加工してくださいました。

パンは併設の「工房あんじゅ」で手作りしたもの。白神こだま酵母を使ったソフトフランスとテーブルロール、バケットの3種類です。バゲットはシェフからのリクエストで、今回の再スタートで新たに加わったもの。シンプルなだけに難しいバゲットですが、何度も特訓を繰り返して、納得いくものができあがりました。

誰もが美味しいひとときを過ごせるように

レストランでは段差のない完全バリアフリーのフロアに加えて、車いすのままで入れる広々とした多目的トイレを備え、さまざまな人にとって美味しく食事が楽しめる場所であるように努められています。介護が必要な方にうれしいムース食やアレルギーへの対応も、要予約で受け付けているので、ご相談ください。

全面のガラス窓が開放的なフロアは居心地がよく、食後も風景を眺めながらゆっくりと過ごすお客さんが多くおられるとか。そして、そのおだやかな雰囲気を支えてくれるスタッフたちがのびのびと働く姿に、心から応援をしたくなりますね。

紹介情報

関連記事

  • 文化CULTURE
    京都・長岡京の登録有形文化財でこだわりのおばんざいランチを〜なかの邸〜
  • 文化CULTURE
    伝統の技を受け継ぐ竹職人が探る