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羽衣伝説が残る京都「天女の里」で生芋こんにゃく作りに挑戦

【京丹後市】
羽衣伝説が残る京都「天女の里」で生芋こんにゃく作りに挑戦

<天女の里>さんの生芋こんにゃくづくり体験

こんにちは。『食らし旅』編集部です。
今日は、京丹後市峰山町鱒留(ますどめ)の『天女の里』で体験できる『生芋こんにゃく作り体験』にやってきました。


(天女の里の風景。夏はキャンプ客で賑わいます)

天女の里がある鱒留(ますどめ)の大路地区は、国道から車で5分ほど進んで行くと現れる小さな集落。その昔、羽衣天女が降り立ち、米作りや酒造りを伝えたという伝承があり、歴史の古い地域です。いまでも天女の子孫とされる方が住んでおられたり、天女の娘たちを祀る乙女神社があったりと、なにやら神秘的な空気が感じられます。
ここ、天女の里は、人気のキャンプ場でありながら、こんにゃくをはじめ、米麹や味噌、餅、様々な保存食を作るための加工場としても、地域の方々に愛されているとか。
では、さっそく、こんにゃく作り体験へ!

こんにゃく芋から作られるこんにゃくは冬の保存食だった

こんにゃくって、プルプルしているけど、何からできているんだろう、海藻かな?… こんにゃくはスーパーで買うもの、なんとなく健康的な食材でカロリーが低い。
そんな一般的なイメージしかなかった私を、天女の里で迎えてくれたのは、体験担当の今田さんと、机の上の「こんにゃく芋」でした。
なんと、芋からできていたとは。


(ゴツゴツとしている、洗う前のこんにゃく芋)

こんにゃく芋は、植えてから3年程かけて土の中で育て、ようやく加工できるようになるそうです。収穫後も湿気や温度に敏感で、管理にも心配りが必要。生の芋は「劇物扱い」とされる程、アクが強く、触ると手がヒリヒリする。「一体誰が、こんな芋を食べようと思ったんだろう。生芋では絶対に食べられない。初めてこんにゃくを作った人ってすごいよね〜」と今田さん。
峰山の中でも雪深い大路地域では、昔から、こんにゃくは、冬の家から出られない時期に、それぞれの家庭で、自分たちの食べる分だけを作る保存食だったそうで、いまでも、家でとれたこんにゃく芋を持って、天女の里に加工に来る地元の方々もおられるそうです。
昔の人の知恵と挑戦の結晶であり、3年以上もかけて芋作りを行う「こんにゃく」は、私の想像をはるかに超えた、手間と時間のかかる尊い食べものだったのでした。

シンプルだけど奥深い!こんにゃく作り体験

さて、こんにゃくの原料は以下の3つ。非常にシンプルです。
天女の里では、地元のこんにゃく芋を主に使っています。

・こんにゃく芋
・お湯
・凝固剤水酸化カルシウム

こんにゃく芋は、箸が通るまで茹でたものを事前に用意してくださっていました。
市販のこんにゃくは、生芋でなく、乾燥して粉になったものを使うことが多いそうです。
生芋で作るこんにゃくは、芋の味がしっかり残り、食感も別格とのこと。


(あらかじめ用意してくださったこんにゃく芋)

期待を胸に、今田さんのレクチャーに沿って工程を進めていきました。
まずは、茹でたこんにゃく芋250gを適当な大きさに切り、温かいこんにゃくの茹で汁900ccと共にミキサーで撹拌します。


(あらかじめ用意してくださったこんにゃく芋)

期待を胸に、今田さんのレクチャーに沿って工程を進めていきました。
まずは、茹でたこんにゃく芋250gを適当な大きさに切り、温かいこんにゃくの茹で汁900ccと共にミキサーで撹拌します。


(指で穴を開けた状態です)

このあとが勝負!ここからは、ゴムベラではなく、手で生地を練り上げていきます。手で練り始めると、こんにゃくの色がうっすらと黄色になってきました。

「こんにゃく芋によって出てくる色が違うんだよ〜」と今田さん。以前、取り寄せたこんにゃく芋を使ったら、うっすら緑色になったとか。


(なかなか力のいる練り作業!)

天女の里のこんにゃくは、優しい黄色ベースです。練り始めると変わってきたのは色だけでなく、匂いや質感。こんにゃくらしい、芋らしい匂いが生地から漂ってきて、生地も少し透明度を増し、こんにゃくらしさを帯びてきました。
現在では凝固剤として使われている水酸化カルシウムですが、昔、家庭でこんにゃくを作っていた頃は、広葉樹の葉っぱを燃やした「灰」を使っていたそうです。
生では劇物扱いのこんにゃく芋を、広葉樹の灰で加工して食べるとは・・・
昔の人の知恵、おそるべし!ですね。

さて、練り上げた塊をついに成形!
今回は「板こんにゃく」なので、木の型に移し成形します。これがなかなか難しい。型に入れた塊のこんにゃくを優しく撫でて型全体に広げていくのですが、私は力を入れすぎてこんにゃくが少し不恰好に…。表面を優しく撫でるのがコツだそうです。撫でていくと、こんにゃくの表面が次第にツルツルとしていきます。


(優しく撫でて伸ばします)

成形し、5分ほど置いた後、沸騰したお湯で湯がく工程へ。
こんにゃく切りで、型の縁の印に沿って、生地を切りながら、こんにゃくを湯の中へ落とし込みます。この時、釜のお湯を少し木の型の底に流し込みながら切るのがコツだそうです。うまくお湯を使うと面白いほど軽い力で綺麗にこんにゃくが切れて、一枚一枚、お湯の中にするりとダイブしていきます。お湯の中で踊るように揺れるこんにゃくは、温泉に浸かっているように気持ち良さそうに見えて、思わず眺めてしまうのでした。


(大きな釜にこんにゃくがダイブ)

さて、最後の工程へ

茹でが甘いと食べるときに舌がヒリヒリしてしまうので、30分間しっかりと茹でる必要があります。30分程すると、こんにゃくが湯の表面へプカプカと浮いてきました。


(プカプカと浮いたこんにゃく)

これを一つずつ、手で触って硬さを確かめながら、取り出し、水に晒して冷まします。水に入れると少しずつ、色に変化が!黄色から、淡い茶色になりました。


(ひとつひとつのこんにゃくの硬さを確かめる今田さん)

これにて、こんにゃく作り体験は終了です!

冷ましたこんにゃくは、袋詰めにして、持ち帰ります。


(冷水でこんにゃくを冷やします。ツヤが美しいです。)

食べ方は、芋の味を楽しみたいなら、刺身こんにゃくで。
今田さんのオススメは、味をしっかり染み込ませたおでんだそうです。

早速、家に帰って、刺身こんにゃくにしてみましたが、冷たいこんにゃくは舌触りが良く、芋の香りも癖になる感じ。
お魚のお刺身と変わらぬ存在感で、とっても美味しくいただきました!

体験を通じて感じた“手作りであることの贅沢”

この地域では、こんにゃくのほか、米麹や味噌、餅などの季節に応じた保存食を作るために、天女の里の施設を利用する地元の人も少なくないそうです。

お金を出せば、なんでもすぐに手に入ることが当たり前の時代になってしまっているけれど、ひと昔前までは、知恵を引き継ぎ、食べ物を「自分の手でつくることの贅沢」が溢れていたのだと気付かされる体験でした。

自分で作ったこんにゃくは、本当に美味しい!


(しっかり冷やして生姜と醤油でいただきました!)

そして、天女の里のこんにゃく体験で使われる木製の型やトングも、こんにゃく作りのために工夫を凝らして作られた手作り品だとか。

なんでも手作りの文化が残る田舎ならではの「贅沢」が体験できる、天女の里へ、ぜひ一度体験にどうぞ。

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