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伝統の技を受け継ぐ竹職人が探る
京銘竹の活用法と竹が秘める可能性

【大山崎町】
伝統の技を受け継ぐ竹職人が探る
京銘竹の活用法と竹が秘める可能性

工房の火事をきっかけに再起した伝統産業の担い手たち

京都の名だたる寺社仏閣や名所の竹垣を手がける専門店「長岡銘竹株式会社」。腕ききの職人がおり、難しい施工も少人数で仕上げられるため、多くの庭園を任されています。さらに洛西の「竹」というサステナブルな素材を使い、伝統の技を生かしつつも新しいことにチャレンジし続けている姿勢が注目されている会社です。

竹は成長が早く、確かに持続可能な素材ではありますが、国内では荒れた竹林が放置されることが問題視されています。竹のさまざまな使用法と可能性を探り、もっと使っていくことでその問題が解決するのではないか。そう考えて行動する長岡銘竹による斬新なアイデアから生まれた仕事や商品を紹介します。

竹は成長が早く、確かに持続可能な素材ではありますが、国内では荒れた竹林が放置されることが問題視されています。竹のさまざまな使用法と可能性を探り、もっと使っていくことでその問題が解決するのではないか。そう考えて行動する長岡銘竹による斬新なアイデアから生まれた仕事や商品を紹介します。

長岡銘竹が得意とする代表的な垣は「建仁寺垣」。竹垣専門店として桂離宮や修学院離宮、金閣寺や銀閣寺など数々の神社仏閣を手がけています。初代が創業し、京銘竹を使用した良質な竹垣が評価を受けて順調だったのですが、二代目の三島一郎さんが代表取締役に就任した矢先にバブルが崩壊。伝統産業は打撃を受けて下火となりました。そんななかでも仕事の依頼が来たのは、三島さんを筆頭とする職人の腕のよさ。造園業者ではやりきれない難しい施工も少人数で難なく完成させることができる腕前が買われ、寺社仏閣の竹垣修復工事や老舗料亭などの内外装などの依頼が増えました。

ところが平成22年の暮れ、工房が火事になり全焼してしまいます。怪我がなかったことが幸いだったものの、竹材や機材はすべて燃えてしまう惨事。しかしその火事からの再起が長岡銘竹にとっての大きなターニングポイントとなりました。二代目・三島一郎さんと職人の真下彰宏さんに会社の沿革についてお話を伺いました。


(左)真下彰宏(ましもあきひろ)さん、(右)三島一郎(みしまいちろう)さん

「長岡銘竹」が絶体絶命のピンチから再起したきっかけ

二代目三島一郎さんは職人気質でその腕の良さには定評があります。バブルが弾けても長岡銘竹に仕事が来たのは、たとえ図面がなくても多種類の竹垣を組むことができ、大きな垣根も少人数で美しく仕上げることができたからです。

三島さんと職人の真下彰宏さんが出会ったのは、京都伝統工芸大学校でのこと。学生だった真下さんがどの伝統工芸を学ぼうか吟味していたところ、長岡京育ちで目に馴染みのあった竹工芸が目に留まり、その道を目指すことにしたそう。三島さんはその竹工芸の講師でした。いろいろな学生が工房に手伝いに来ましたが、なかでも真下さんは手が早く、仕上げる時間に対してシビアで仕事向きの逸材だったと言います。当時から三島さんについて懸命に働く真下さんでしたが、現在のようにさまざまな新しい取り組みに挑戦するようになったのは工房の火事がきっかけ。元あるものが何ひとつ無くなってしまったとき、真下さんは今自分にできることを積極的に探し始めました。

三島さんが作った京銘竹のボトルスタンドを真下さんが商品化

ボトルを挿すことによって自立する京銘竹のボトルスタンドは、もとは三島さんが作ったものです。工房の片隅に置かれていたものを見出して、真下さんが漆などのデザインを加えて商品化しました。それがきっかけで、バンブーデザインコンペで受賞。

真下さんはとにかく驚きのあるものや注目されるものを作りたかった、と言います。それによって京銘竹のもつ値打ちに気付いてもらえる、と思ったからです。
このスタンドひとつにしても、京都産で9~12月に伐竹された素材を火あぶりによって油を抜き、天日で何日も干して、完全に乾燥させるという京都ならではの技法で作られたものです。「京銘竹は艶が違う!」と三島さんが太鼓判を押す美しい光沢と、ひとつとして同じものはない竹の風合いが生きたもの。元ある伝統工芸を巧みに生かしつつも、見る人に驚きを与える逸品です。


「なかの邸」に設置された勝龍寺垣

長岡銘竹の得意な建仁寺垣をベースにしたまったく新しい竹垣作り

長岡銘竹では古典的な竹垣にとどまらず、新しい竹垣作りにも力を入れています。昭和を代表する作庭家・重森三玲が東福寺の塔頭・龍吟庵で製作した竹垣の意匠を参考に、オリジナルのデザインで製作したのが写真上。長岡京市にある旧家・中野家住宅を活用した飲食店「なかの邸」に設置した「勝龍寺垣」です。古典的でありながら、モダンな意匠で作られたその新たな竹垣の名称は、長岡京市にある勝龍寺から名前をいただいたそうです。

製作には立命館高校長岡キャンパスに協力を呼びかけ、プロダクトデザイン講座を受講している高校生10人がデザインを担当。京銘竹を通じて地元の人と交流を深めながら、斬新な竹垣を生み出しました。

伝統の技とデジタルが出会った竹を使ったQRコード

真下さんが手がけて話題になったもののひとつに、竹のQRコードがあります。京銘竹を染めたピースの組み合わせで複雑な模様を再現し、スマートフォンなどをかざすとホームページに移動できます。古くから続く竹産業と近代的な技術の融合、まさにKYOTOを体現するような作品です。長さの異なる12種類、300以上ものピースを用意し、図面を基に配列を考え、模様通りになるように合板に貼り付けていきます。正しく読み取るためには数ミリのズレも許されず、正確に竹を裁断する高い技術が必要です。

真下さんは作品を通じて京銘竹の良さや可能性を発信し、後継者不足などの問題を抱える伝統産業に還元したいと話します。

竹あかりを一斉に灯し、全国一斉点灯する「みんなの想火」に参加

2020年7月に行われた「みんなの想火」プロジェクトの京都実行委員として真下さんは参加しました。日本全国47都道府県で「竹あかり」を一斉に灯し、それをオンラインで日本全国に繋げ、世界へ希望と平和のメッセージを発信しよう!というプロジェクト。

京都では京都市洛西竹林公園にて竹あかりを設営・点灯し、その様子をオンライン配信しました。全国一斉点灯の前までに3回の竹あかりワークショップを行い、思い思いの絵柄の竹あかりを製作。京都に住まう人々が地元で育った京銘竹に触れて灯りを作り、そこにあたたかい光を灯しました。それはオンラインでも国内外の多くの人々を幻想的な和の魅力に誘った画期的なイベントでした。


竹の径

伝統の技を軸にサステナブルな京銘竹の魅力を発信する

向日市北西部にある「竹の径」。全長1.8㎞におよぶ竹林道で、8種類の竹垣が整然と連なっています。乙訓エリアを代表する竹林道の竹垣の製作にも長岡銘竹が関わっています。
写真は竹の枝を重ねた「竹穂垣」。もとは不法投棄が多いエリアでしたが、竹垣を整備することでその数は減少しました。放置竹林対策も行なわれており「全国遊歩百選」や「歩きたくなるみち500選」などにも認定されています。

長岡銘竹は持続可能な社会にするために、環境に配慮した取り組みを実践しています。竹藪の管理もそのひとつ。本来は竹垣を製作するのが仕事ですが、作業に危険が伴う竹林の管理を引き受け、地元産の竹を生かしたものづくりにチャレンジしています。

京銘竹の魅力を熟知し、さらに高い技術を持つ長岡銘竹の仕事は古都・京都の街のあちこちに息づいています。贈り物にもぴったりな竹製品も製作されていますので、ぜひHPをチェックしてみてくださいね。

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