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京都・長岡京市「うお寿」の名物・竹の子姿ずし&新感覚の筍スイーツ

【長岡京市】
京都・長岡京市「うお寿」の名物・竹の子姿ずし&新感覚の筍スイーツ

京筍の小気味いい食感を生かした「竹の子姿ずし」が評判の料理店

乙訓の筍が一年中味わえる寿司をご存じですか?その名も「竹の子姿ずし」。歯ざわりのいい筍とあっさりと食べ飽きない風味、木の芽と柚子の香りが味わえる、一度食べたら忘れられない逸品です。こちらの寿司は長岡京にある京料理「うお寿」の看板商品。味わってみたらその美味しさを誰かと共感したくなる味で、お店で味わうだけでなく、お取り寄せや贈り物の品として選ばれてきました。長岡京の地で70余年。春の筍の時期には筍のフルコースも出す、乙訓の筍の美味しさを熟知した店が生み出した「竹の子姿ずし」。その美味しさの秘けつに迫ります。

どちらかというと筍はいつも料理のわき役として使われてきました。なぜかというと掘りたてでない限り、味や香りが突出した食材ではないからです。いちばんの特長は、なんといってもその食感。シャキシャキとした小気味のいい歯ざわりを生かしたのが「竹の子姿ずし」です。色白でえぐみが少ない京筍は、あっさりとしていて、どんな味わいにも染まることができる素材。その長所を生かして、食感を引き立たせ、食べ飽きない上品な味わいに仕上げたことに「竹の子姿ずし」が選ばれる理由があります。「竹の子姿ずし」の誕生秘話を若主人の山下武司さんに伺いました。

新食感の「竹の子姿ずし」が誕生した理由

「うお寿」が創業したのは昭和初期のこと。魚の行商としてはじまり、地元の常連客の要望に応える形で仕出し屋を営むことになりました。「竹の子姿ずし」を考案したのは先代です。長岡京を含む乙訓エリアはご存じのとおり、京筍の産地。生で消費されなかった筍の多くは、加工されて水煮となりました。店の隣には農協がありまして、たくさんの水煮の在庫を抱えていました。そこで地元の素材を料理としておいしく活かせないか、と先代が協力する形で、筍の水煮を使った料理を考案したのが「竹の子姿ずし」のはじまりです。

「竹の子姿ずし」のおいしさの秘けつとは

筍という食材の特長は、どんな味にも染まることができることです。とくに水煮となると味や香りは採れたてに比べると当然少なくなる。しかしながら京筍は水煮でも真っ白で、えぐみが少なく、歯ざわりが抜群です。この特長をいかしたのが「竹の子姿ずし」です。

いちばんのポイントは醤油や砂糖をあえて使わなかったところにあります。皆さんが頭に思い浮かべる多くの筍の家庭料理といえば、土佐煮に代表されるように、醤油と砂糖で煮るのです。それと同じような味わいでは特別感がありません。

「竹の子姿ずし」は筍の食感、そして京筍本来の真っ白な色を残すために、酒やみりん、鰹などで炊きました。真っ白な筍を頬張ったときの、わずかなほろ苦さは酒、ほんのりとした甘さはみりん由来の味です。ひとつひとつ形の違う筍ですから職人の経験で、特別に加工した包丁で円錐型にくりぬきます。さらにその中をイモクリという器具でえぐることで、すし飯が抜け落ちにくくなるように工夫しました。そこに香り高い木の芽と柚子、細かく刻んで飴炊きにした筍をすし飯と和えて、くりぬいた筍に詰めます。

白さと食感の良さを見せつける、変わりずし

頬張ると、さっくりとした筍の食感。この歯ざわりこそが「竹の子姿ずし」の持ち味です。さらに木の芽と柚子の香りがふんわりと漂い、いくらでも食べられそうなあっさりとした味わい。水煮の筍を再度ゆでて水にさらすことで、この淡白でえぐみのない味わいを実現しています。よく百貨店の催事にも行くのですが、いつも少し歯がゆいのが、他のお寿司とは違って、はじめて食べる寿司のため、なかなか味の想像をしていただけないことです。しかしながら買って食べていただけたときの反応はすこぶる良く、次は贈り物としてふたたび催事会場まで足を運んでいただけることも多いのです。誕生するまでに2年以上は試行錯誤して生まれた「竹の子姿ずし」をはじめ、新しく開発するメニューについても、うお寿だけのオンリーワンの味を目指しています。

筍を使ったまったく新しいオリジナルスイーツ

「竹の子姿ずし」とともにお取り寄せでご好評をいただいているのは、スイーツです。こちらにも筍を使ってみようと監修しました。ひとつは筍入りの笹羊羹です。笹粉で作った水羊羹に、ダイスカットしシロップ漬けにした筍、白玉とあずきをトッピングし、仕上げに笹粉を振りかけています。開発を依頼したスイーツの製造部門としても、はじめて使う笹粉でしたが、新しいデザートを作りたい一心で私どもが提案しました。口のなかに広がる爽やかな笹の風味と、筍のシャリっとした小気味のいい食感を味わっていただけます。笹粉の春を思わせる爽やかな香りが口のなかに広がり、おもたせにもぴったりな新食感の新しいスイーツが出来ました。

また、和食の最後のデザートにふさわしいアイスクリームも作りました。筍のダイスカットをごろごろ入れた豆乳アイスで、後味はさっぱり。爽やかな笹の風味がアクセントになった新感覚のアイスです。料理の最後に味わっていただくことを意識した、畑のものだけで作ったあっさりとしたスイーツに仕上がりました。どちらも通販でお買い求めいただけます。

丹精に育てられた乙訓の筍を料理の技で生かす店「うお寿」


筍の時期限定ですが、地元の契約農家から届けてもらう新鮮な筍を使ったフルコースもぜひ味わっていただきたい料理です。乙訓エリアの竹林で育てられている筍の美味しさは、土壌の良さと農家さんの努力のたまもの。敷きわらと置き土をして、まるでお布団をかけるように柔らかい土壌をつくり上げ、地表面に出て空気に触れる前に、丁寧に掘り出します。筍畑一面に敷きわらと置土をするのは大変な作業。そんなふうに大切に育てられた筍を余すことなく生かしてやりたいと厨房に立っています。刺身、焼き、天ぷら、煮物などの一通りのほか、筍にマッシュポテトや鴨肉をまぜて揚げ、蒸しあげて餡をかけた「竹の子饅頭」など、アイデア料理もご好評をいただいています。

丹精に育てられた乙訓の筍を料理の技で生かす店「うお寿」

魚屋から仕出し屋も手掛けるようになった創業当時から、おいしいものでお客様を喜ばせる店の歴史は今も続いています。店内には大きな生簀を備え、旬魚の刺身や寿司、うなぎ料理や会席コースも味わえます。地元に密着する店であるからこそ、乙訓自慢の筍を「竹の子姿ずし」というかたちで一年中楽しめるようにした店。伝統の味を守りつつも、客を喜ばせるために「うお寿ならでは」の味を生み出す山下さんのひたむきな取り組みはこれからも続きます。

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