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【京都・笠置】“鹿肉”の概念が覆る体験を。「RE-SOCIAL」が描くジビエの未来

相楽郡笠置町
【京都・笠置】“鹿肉”の概念が覆る体験を。「RE-SOCIAL」が描くジビエの未来

鹿肉の常識をくつがえす、笠置町からの挑戦

京都府南部に位置する笠置町。木津川の流れと山々に囲まれ、自然とともに暮らしが営まれてきたこの町に、いま「食」を通して地域の未来を考える取り組みがあります。「鹿肉と聞くと、かたい、くさい、そんなイメージを持たれる方が多いと思います。でも、それは鹿肉がおいしくなかったのではなく、おいしく食べる技術が発達してこなかっただけなんです」。そう語るのは、独自の手法で、捕獲から処理・加工、商品化までを一貫して手がける「RE-SOCIAL(リソーシャル)」代表取締役の笠井大輝さん。鹿肉の概念を覆す取り組みは、大学時代のある衝撃的な原体験から始まりました。

原点は、大学生時代に見た「25メートルプール大の穴」

笠井さんが獣害問題と向き合うようになったのは、大学生の頃。
街づくりを研究する中で、どの地域でも必ず耳にした言葉が「獣害被害」でした。

当時20歳。調査を進める中で、日本各地で鹿の個体数が適正数を大きく上回り、京都では7~9倍もの鹿が生息していることを知ります。

農作物被害などを防ぐための「有害捕獲制度」により捕獲された鹿の約9割が埋設処理されている現実がありました。決定的だったのは、捕獲された鹿が25メートルプールほどの大きさの穴に次々と投げ込まれている光景を目にしたことです。
「このまま続いていいわけがない。せめて、命をおいしくいただけないかと思ったのが原点です」

鹿肉が広がらない「3つの壁」

ただただ、捕獲され廃棄されてしまう鹿。その背景には、流通や処理の構造的な課題があります。

1つ目は、かたさや臭みのイメージ。
処理や捕獲方法が適切でないと、臭みやかたさが出てしまい、その印象が強く残ってしまいました。

2つ目は、野生動物であるため、家畜のように安定的な供給が難しい点です。

そして3つ目が、最も大きな課題だという「歩留まりの悪さ」。
体重に対して食肉として使える部分が少なく、約8割が食肉として利用できないのが現実です。

臭みを出さない秘密は「生体搬送」

リソーシャルの鹿肉が「臭みがない」「やわらかい」と評価される理由は、捕獲から処理までの工程にあります。

同社が採用しているのは、日本でも極めて珍しい「生体搬送」という方法。鹿を生きたまま運び、工房ですぐに解体・血抜きを行います。命を落とした瞬間から品質の劣化が始まるため、処理までの時間差を極限まで短くすることで、食肉としてのクオリティを落とさないようにしています。

この方法は、徳島県の「中川食肉店」で修業し、受け継いだ技術でもあります。「食肉として妥協したくない」という思いが、工程一つひとつに込められています。

狩猟・現場担当の山本海都さん。「京都鹿肉専門やまとある工房」では見学も可能

冷凍しない「生ジビエ」

リソーシャルの鹿肉は、「生ジビエ」と呼ばれています。一度も冷凍せず、捕獲後すぐに加工し、そのまま届けるのが特徴です。

初めて食べた人からは、
「言われないと鹿だと分からない」「牛肉と変わらない」といった声が多く寄せられています。

人気の部位はロースやヒレ。
オンライン販売も行っており、調理が不安な人向けに、焼くだけで食べられる商品やハム・ジャーキーなどの加工品も展開しています。

味も栄養も、いいとこどりの鹿肉

鹿肉は、高たんぱく・低脂肪・低カロリー。鉄分も牛肉に比べて豊富に含まれており、牛肉や豚肉、鶏肉などにはあまり含まれていないドコサヘキサエン酸(DHA)も多く含む栄養価の高い食材です。その栄養価の高さから、女性をはじめ、フィットネスやトレーニングに取り組むアスリートからも支持を集めています。

「栄養価は鶏肉、味わいは牛肉」。その両方をかなえるのが、鹿肉の魅力です。

こうした鹿肉の魅力を、実際に味わえる場所があります。
道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」にある食堂「つちのうぶ」では、「山背鹿の陶板焼き」が提供されています。

口に入れると驚くほど柔らかい肉質を実感

鹿1頭を余すことなく生かす―広がる事業展開

当初は食肉事業のみでしたが、歩留まりの課題から、骨や内臓、角を活用するペットフード事業「GOOD MEAL ONE!」を開始。さらに皮をレザー製品へと生かす「COL STYLE」、2023年にはジビエレストラン「NATURAL BAL MEAT UP」もオープンしました。

こうした事業展開を重ねることで、鹿1頭を余すことなく生かす取り組みが形になってきています。

京都市東山にオープンした「NATURAL BAL MEAT UP」

全国へ広げたい、「捨てられない社会」

現在、笠置町を中心に周辺6市町村へとサービスを拡大。
「まずはこの6市町村で、捕獲された鹿を100%活用することを目指したい」と話します。

今後3年をめどに、加工処理場の増設も計画中。
最終的な目標は、「全国で鹿が1頭も捨てられない社会」

鹿肉を味わうことは、単なる食事ではなく、その土地の自然や暮らし、課題に触れることでもあります。

“鹿肉というものの概念がくつがえる、そんな体験を提供したい”

その挑戦は、着実に、確実に笠置町から広がっています。

◎株式会社RE-SOCIAL
〒619-1301 京都府相楽郡笠置町有市東畷23番地

やまとある工房
〒619-1301 京都府相楽郡笠置町有市西狭間24番地​
https://www.resocial-kasagi.com/

紹介情報

  • 株式会社RE-SOCIAL
    ウェブサイト
  • NATURAL BAL MEAT UP
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