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【京都・美山】“発酵”で人と人を結ぶ―「シマカフェ」で味わう癒しのご飯

南丹市
【京都・美山】“発酵”で人と人を結ぶ―「シマカフェ」で味わう癒しのご飯

“発酵”が育む「整うご飯」と「人とのつながり」

「かやぶきの里」として名高い南丹市美山町に、ひときわ目を引く青い外壁のカフェ「シマカフェ」はあります。ここは元々、町の電気屋さんだった建物をリノベーションした場所。扉を開けると、薪ストーブのあたたかさと店主・波多野千惠美さんの柔らかな笑顔が迎えてくれます。味わえるのは、“発酵”をテーマにした料理の数々。体にやさしい食を届けたい—そんな想いを持つ波多野さんに、発酵を軸にした料理や店づくりへの考え、この場所で大切にしていることについて話を伺いました。

「発酵」に導かれて―シマカフェのはじまり

波多野さんが発酵食品と向き合うようになったのは、体調不良がきっかけだったといいます。
「どうやって体を整えたらいいのか考えた時、身近にあった醤油や味噌などにあらためて目を向けたんです。食べ続けることで、お腹の中から整っていく感覚がありました。」
自分自身の経験・実感が、発酵の良さを多くの人に届けたいという思いにつながったといいます。
専門的な料理ではなく、麹や納豆など“いつも食卓にあるもの”で発酵を身近に感じてもらいたい。そんな想いから、カフェでのメニューづくりが始まりました。

「鶏肉のトマト麹煮込み」。ほどよい酸味と自然な甘みでほろりとした食感

野菜はすべて美山から。地域とつながる“循環”

シマカフェの料理を支えるのは、美山の自然が育んだ地元野菜の数々。店で使う野菜の多くは、波多野さんの家族が育てたものや地元の契約農家さんのもの。美山で育った食材をそのまま美山で味わう、まさに”地産地消“です。

そんな地元食材の使い方の背景にあるのが、シマカフェが大切にしている「循環」という考え方。同じ美山にある発酵温浴施設「発酵人間」で使われた米ぬかを畑の肥料として再利用しているのもその一環です。「お店を始める前から『発酵人間』に通っていたんです。差し入れをしているうちに“お店開いたら?”と言ってもらえたのもカフェを開こうと思ったきっかけでした」
現在は「発酵人間」で提供されるお弁当も波多野さんが監修・調理するなど、深いつながりが続いています。
“発酵”を通して人と人が自然につながり、そこからまた新しい循環が広がっていく—シマカフェはそんな場所です。

美山町の発酵温浴施設「発酵人間」。美山のヒノキと地元の米ぬかを使った酵素風呂が人気(完全予約制)

発酵食品が引き出す、やさしく深い味わい

料理は基本的に化学調味料不使用。例えば、うまみを出すコンソメの代わりに”玉ねぎ麹”、チャーハンには”にんにく麹”というように、麹ごとに異なる個性を生かしながら料理の幅を広げています。

麹は店舗で購入もできる

何でも発酵させてみるのが波多野さん流。風味がまろやかになるため、鍋料理にぴったりの“柚子胡椒麹”は寒い時期に注文が相次ぐ人気商品。納豆と麹を合わせたものは波多野さんのお気に入りで「お腹の調子がすごく良くなるんです」と笑顔を見せてくれました。

シマカフェが生み出す“居場所”

カフェの2階は、地域の方や波多野さんの友人たちが気軽に集まれるスペースとして利用。定期的に整体の施術や手縫いの教室が開かれています。手縫いの教室は以前、波多野さんが習っていた先生を招いて開催されているもので、場所が変わっても人とのご縁が続いていく“つながりの象徴”のような場になっているとか。誰かがふと立ち寄り、誰かと出会い、気づけば交流が生まれている-シマカフェは、食事を楽しむ場所であると同時に、人が交わることで“ちょっと特別な時間”が自然と生まれていく場所でもあります。

“町の電気屋さん”から“地域に根ざした発酵カフェ”へ

そんな店主の波多野さんは美山生まれ美山育ち。高校卒業後、一度は町を離れましたが、都会の喧騒がいつしか悩みの種になり、美山へ戻ってきました。
そこで出会ったのが、20年来付き合いのあった町の電気屋さん。商売を辞めると聞いたとき「もったいない!」と強く思い、この場所でカフェを始めることを決めたそうです。
内装は鉄骨構造を生かした現代的な雰囲気に。外壁は思い切って青色に塗り、自然豊かな地域の中で目を引く存在になりました。

店名の「シマカフェ」は、波多野さんの住んでいる地域が“島地区”であること、隣の美容室の店長さんが“しまさん”だったこと、元の電気屋さんが“竹島電機”であったことなど、地域のさまざまな偶然が重なって、“シマ”の文字を名付けたのだとか。

ロゴマークは「発光」と「発酵」を重ねた電球がモチーフ

これからも“人と地域が元気になる”カフェをめざして

発酵食品ソムリエと温活アドバイザーの資格も持つ波多野さん。薬膳や製菓など、今後もさらに学びを深めていきたいと語ります。
「まずは自分が健康じゃないと意味がない。そのうえで、地元の人たちも一緒に元気になれるカフェでありたい」

発酵と美山の恵みを生かした料理を通じて、これからも地域に寄り添う店づくりを続けていきたいと柔らかな表情で語ってくれるその姿に、シマカフェに多くの人が惹かれる一番の理由を垣間見た気がしました。

📍シマカフェ
〒601-0755 京都府南丹市美山町静原森ケ下36
TEL:090-3356-0606
[ネット予約]https://line.me/R/ti/p/@303isehg?oat_content=url
[営業時間(冬季)]平日/土日祝 11:00~16:30(※LO 16:00)
※営業日はInstagramをご確認ください。
[公式SNS]https://www.instagram.com/shimacafe.miyama/

📍発酵人間 京都美山本店
〒601-0772 京都府南丹市美山町大野文字がい地5-2
TEL: 090-9547-4410
[LINE予約]https://page.line.me/vik2900n?openQrModal=true
[営業時間]10:00~19:00(最終受付17:00)
※予約枠|10:00~|13:00~|15:00~
[定休日]火曜日・水曜日・不定休

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