【京都・宇治】世界を魅了するナポリピザ 本場の薪窯とこだわり生地が生む至高の一枚
宇治市
ナポリで修業を積んだ店主が紡ぐ、本場の味
数々の名勝や史跡に恵まれ、四季折々の風景が楽しめる京都屈指の景勝地・宇治。この地を穏やかに流れる宇治川のほとりからほど近く、どこか懐かしい雰囲気を漂わせるマーケットの一角に佇むのが、「Antica Pizzeria L'ASINELLO(アンティカ ピッツェリア ラジネッロ)」。ここで味わえるのは、世界を舞台に数々の受賞歴を誇る大削恭介(おおげ・きょうすけ)さんが焼き上げる“ナポリピッツァ”。 本場から取り寄せる食材、イタリアの匠が手がけた8トンもの特注の薪窯、そして独自の配合で発酵させた生地。ひと口かじれば、外は香ばしく、中はふんわりとほどける食感に驚かされます。なぜ宇治に店を開き、ナポリと日本をつなぐピザを焼き続けるのか。その思いを伺いました。

サッカーからピザの世界へ、運命の重なり
19歳で料理の世界に飛び込み、25歳のときに単身で本場ナポリへ。調理師専門学校を卒業後、イタリア料理全般を学んでいた大削さんが、なぜピザを専門に選んだのか―その背景には意外な理由がありました。
「高校時代までずっと夢中でサッカーをやっていたのですが、ボールをコントロールする感覚や、日々の工夫によって上達していく感覚が、ピッツァ作りと重なったんです」。過去の自分とつながる発見が心を大きく動かし、気づけばピザ作りにのめり込んでいました。

ただ、次第に業務用オーブンでのピザ作りに物足りなさを感じ、「窯で焼く伝統を学びたい」という思いが強くなっていったといいます。
そして、飛び込んだ修業の地は、ナポリでも専門店がひしめく激戦区。1日に400~1000枚を焼き上げる人気店で、「誰が焼いているかを見に来たり、電話で事前に確かめたりしてから店に入るか決める人もいた」と振り返ります。ソウルフードであるがゆえ、驚くほどお客さんの“目と舌”が厳しい、そんな環境で腕を磨き、技術を叩き込まれた経験こそが、大削さんのピッツァの礎です。

世界大会で認められた実力
帰国後、東京の専門店で10年腕を磨いた後、国内外の大会へ挑戦するようになった大削さん。「最初は正直、あまり乗り気ではなかったんです。でも“ピッツァ業界を盛り上げるためにも”と思い、挑戦を決意しました」といいます。
大会では、規定に沿って作り、その再現度や完成度を競います。「大会前は仕込みから焼き上げまでを繰り返し検証する、ひたすら“ピッツァに向き合う時間”。結果以上に、この期間での自身の成長を実感できることが大きい」と話します。

その積み重ねは確かな実績として結実。2019年「ナポリピッツァオリンピアディ」では世界第2位に輝き、2023年には「カプート杯日本大会」クラシカ部門で優勝。さらに、2024年に世界大会ピッツァフリッタ部門で3位、STG部門で4位に入賞するなど、日本を代表するピッツァ職人として名を馳せるようになりました。挑戦を重ねる姿勢が、大削さんを世界レベルへと押し上げてきたのです。
本場の薪窯とこだわり生地が生む、唯一無二の味

ラジネッロ(※イタリア語で「小さなロバ」の意)にある総重量8トンの特注窯は、大削さんのこだわりそのもの。ナポリから窯職人を招き、綿密にやり取りを重ねて完成させました。高火力で一気に焼き上げることができ、外は“サクサク”、中は“ジューシー”な理想の食感を実現。
また、「ピッツァは生地作りがすべて」と語るように、生地へのこだわりも徹底。前日に仕込み、常温で長時間発酵させた生地は「同業者が見たら驚くほど」繊細。やわらかく、扱いが難しい生地を、触れる回数を極力減らし、ストレスを与えないよう“粉を払う”感覚で成形することで、ふわりとした食感と豊かな香りを引き出しています。

「歯切れが良く、重たくなく、くちどけの良い食感になるんです。ただ、450〜500度の窯で1〜2分で焼き上げるぶん、冷めやすい。だからこそ、熱々の“ゴールデンタイム”の感動を味わってほしいんです」と力を込めます。
手間もかかり、やわらかい生地を丸く伸ばしてコントロールするのは非常に難しい。それでもラジネッロでは、この生地を基本においしさを追求。スタッフ全員がこの難しい生地を扱えるようになっているといいます。

地元・宇治への恩返しを胸に ~ナポリと京都・宇治の意外な共通点~
高校時代の通学路だった宇治橋通りに店を構えたのは、地元への思いからでした。
「料理を始めた時から、宇治に帰って店を開こうと決めていたんです。恩返しをしたい気持ちがずっとありました」と振り返ります。

同時期に、地元へ戻ってきた同級生や仲間たちと連携し、地域を盛り上げる活動にも尽力してきたといいます。特にその力を実感したのはコロナ禍。緊急事態宣言前に全メニューをテイクアウト対応にしたところ、地元の人々が行列を作って支えてくれたといいます。通りかかった人たちから「このご時世に、こんなに活気がある場所はない。がんばって」と励ましてくれたそうです。
ナポリと宇治の共通点を尋ねると、「人間臭さかな。ナポリに行くと古き良き日本を感じるんです」と微笑みます。地域の温かさを知る大削さんだからこそ見つけられる、ナポリと宇治の意外な共通点でした。

“一枚のピッツァ”に込める「特別な体験」 ~宇治発、世界への飽くなき挑戦~
ラジネッロでは、「各テーブルに特別感を出すこと」を大切に、70種類以上のメニューを用意。会話の中から、その場で新しい一皿を作ることもあるそう。「組み合わせは無限大。お客さんの好みに合わせて作るピッツァは特別感を感じてもらえる」と大削さんは語ります。

「一番嬉しいのは、僕のピッツァを目当てに来ていただけること。少しでも興味を持ってくれる人が増えたら」と話し、今後は「この店を目的に宇治を訪れる人を増やしたい」と意欲を示します。また、世界一や“ピッツァのミシュラン”と呼ばれる「50 Top Pizza※」入りも視野に挑戦を続けています。※イタリア発祥の世界的なランキングガイド
ナポリと宇治をつなぎ、地域を盛り上げながら世界に挑む大削さんのピザは、これからも多くの人を魅了し続けるでしょう。

◉Antica Pizzeria L’ASINELLO(アンティカ ピッツェリア ラジネッロ)
〒611-0021 京都府宇治市宇治妙楽41 大阪屋マーケット
営業時間:午前11時30分~午後3時(L.O.午後2時30分)/午後5時30分~午後9時(L.O.午後8時30分)
定休日:不定休
電話番号:0774-74-8358
公式SNS:https://www.instagram.com/antica_pizzeria_lasinello/
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