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京都・乙訓の朝掘り筍が大量に並ぶ向日市のご当地スーパー「神﨑屋」

【向日市】
京都・乙訓の朝掘り筍が大量に並ぶ向日市のご当地スーパー「神﨑屋」

朝掘り筍を扱いはじめて60余年、地域に愛されるスーパーマーケット

春の味覚といえば筍。京都乙訓向日市で採れた筍を味わったことはありますか? 西山山系の竹やぶで生産される筍は「白子筍」と呼ばれ、柔らかくてえぐみが少なく、歯ざわりがいいのが特徴です。柔らかな筍を栽培するために、年間を通じて丁寧に手入れが行なわれ、地表面に出てくるまでに掘り取られます。早掘りは3月中旬から下旬、最盛期は4月中旬から5月上旬頃まで。鮮度が命の朝掘の筍を大量に並べるスーパーマーケット「神﨑屋」は向日市にあります。

大正時代から家業で八百屋を営み、地元の農家の信頼を得てきた店だからこそ、仕入れられる量です。神﨑屋に行けば間違いない筍が手に入る、と地元の人々からの信頼も厚く、シーズンになると店先にはこぼれんばかりの筍が並べられます。
神﨑屋の代表取締役会長・布施孝一さんに、季節の味わいを提供する店づくりについてお話を伺ってきました。

朝掘の筍は鮮度が命。基本はその日に入荷したものを、その日のうちに売りさばかなくてはなりません。大正時代より八百屋だったため、農家との絆があり、全盛期の中床(4月中旬頃)になると神﨑屋には大量の筍が入荷しました。丹精込めて生産された筍を無駄にしないため、一時は北海道まで出向いて筍を売りに行ったこともあると話す神﨑屋の布施孝一さん。新鮮な筍を使った加工品も手がけ、贈答品やおせちなどの味わいにも定評があります。地元・乙訓が誇る旬の味わいをさまざまなかたちで各家庭に届けた布施さんに、筍とともに歩んできた神﨑屋の歴史をお伺いしました。

[神﨑屋]の代表取締役会長・布施孝一さん

季節の味覚を扱う筍の「神﨑屋」が誕生した理由

布施さんが実家の八百屋で働いていた20代の頃のこと。農家から運ばれてくる朝掘りの筍を集めてトラックに積み、市場へ持って行くのが布施さんの仕事でした。筍は普通の野菜とは違い、出てくるものは早く収穫してしまわないと無駄になるため、全盛期の中床(4月中旬)の時期になるとトラックからこぼれんばかりに筍が積まれるのでした。当初、足が早い筍は売りさばくのが大変なため店頭には並べずに、農家から持ってきた筍を集荷して市場に売りに行きました。

ところが出発しようとすると、トラックの荷台からポロリとこぼれた筍。それを店頭に並べて売ったところ、瞬く間に売り切れてしまいました。旦那衆が上客を喜ばせようと、旬の味覚を贈り物にと買い求めたのです。まさか旬の味というものがこんなに重宝されるとは、と半信半疑に思いつつも次の日からまた並べてみたところ、即座に売り切れ。客は筍がトラックで店に何度も運ばれてくるのを見ていて、新鮮に違いないと神﨑屋で筍を買い求めるようになりました

かつての[神﨑屋]の様子

売れ残った筍を北海道へ…催事と販路拡大が大成功

たくさんの農家と取引があった神﨑屋ならではの悩みがありました。全盛期になると筍が大量に入荷し、ときには店頭だけでは売りさばけないピンチもあったそうです。布施さんは早朝に採れた筍とともに空港に車を走らせ、北海道の百貨店に売りに行ったそう。近くに筍の産地がない北海道で朝掘りの柔らかい京都の筍が味わえるなんてと重宝され、催事は毎回大盛況。しかしながら、生のままで筍を売る以外にも、食卓にその美味しさを届ける方法はないだろうか、と布施さんの新たな挑戦が始まりました。

[神﨑屋 季節店]の様子

旬の味覚だけを一堂に集めた「神﨑屋 季節店」の開店

旬のものには人を喜ばせる値打ちがある、そう実感した布施さんは季節の味覚だけを店頭に集めた「神﨑屋 季節店」を開店しました。さらに昭和40年には当時画期的だったレジを導入。現在2店舗のスーパーを営む神﨑屋の前身がスタートしたのでした。

新しいことを取り入れるのが好きな布施さんが最新レジを導入したところ、八百屋の頃のやり取りに慣れているお客さんのなかには「冷たくなってしまった」と感じる人もいたそうです。そこでお客さんとのコミュニケーションは「神﨑屋 季節店」で行なうようにしたそう。まだ旬の味覚が出回っておらず、店頭がガランとしていた時期でも対面の接客を大事にし、入荷する時期など店からのお知らせを逐一伝えるようにしていました。その細やかな接客が実を結び、多くの常連さんが旬の味覚を楽しみに通う店となりました。

[神﨑屋]の加工品

新鮮な筍を加工した季節限定の神﨑屋の味

布施さんは筍のサイズに適した加工品に踏み出しました。3月は小さな筍を煮た姫筍、3月上旬~4月上旬は、掘りたてを焼きあげた「焼き筍」、4月中旬からは本かつおをまぶして炊いた「地がつお煮」やゆがいた筍を竹籠に入れて届ける「ゆがき筍」など、新鮮な筍の味わいを余すことなく楽しめる加工品による旬の贈答品を考案しました。まだ筍の値段が高い早掘りの時期には、筍ご飯を炊いて店頭に並べていたこともあり、旬の味わいをどうやってお客さんに届けようかと常に考えていた、いかにも布施さんらしいアイデアです。

しゃぶしゃぶのセットに筍を入れた「春しゃぶしゃぶ」やステーキと筍ご飯をセットした「すてーきご膳」など、家庭で柔らかくて絶品の京たけのこを満喫できるセットも人気です。夏のご挨拶にもぴったりな、みずみずしい筍の食感が楽しめる「冷竹」も涼を呼ぶ逸品として評判です。ぜひお取り寄せしてみてください。

[神﨑屋]の店内の様子

旬の味覚をスーパーのお惣菜でも提供

かつては神﨑屋の斜め前に旬の味だけを集めた専門店「神﨑屋 季節店」を営んでいましたが移転。現在ではスーパーマーケット「神﨑屋」の一角で筍や松茸など季節の味覚を扱っています。筍を使った佃煮や松茸しぐれ、丹波黒豆や栗の甘露煮の瓶詰など年中楽しめる味わいもそろっています。

春に筍ご飯を味わった人がその味に惚れて、お節料理を注文することも多いそう。旬の味覚を満喫するとっておきの楽しみと、日々の食卓を豊かにする保存食の両方を備えている神﨑屋。いろいろなかたちで旬を食卓に届けるアイデアマン・布施さんが生み出した味わいを、ぜひ召し上がってみてくださいね。

[神﨑屋]の店内、筍のディスプレイ

紹介情報

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