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【京都市伏見区】世界に誇る酒造りに興味津々!名水が生む“伏見の酒”に迫る

【京都市伏見区】
【京都市伏見区】世界に誇る酒造りに興味津々!名水が生む“伏見の酒”に迫る

再発見が何度も。おもしろく個性ある伏見の清酒に親しむ

全国を代表する日本酒の産地「京都・伏見」。かつては「伏水」と呼ばれたほど、良質な地下水が豊富なところと知られ酒造業が発達しました。京阪電車の中書島駅周辺を中心に広がる蔵元は20蔵以上あり、今も残る酒蔵の風景は歴史を感じさせます。2024年、日本の「伝統的酒造り」が、ユネスコの無形文化遺産登録に決定。世界に認められた酒造りに触れてみませんか。

伝統的酒造りが伏見で今も続くその理由

伏見で酒造りが盛んになったのは、16世紀後半のこと。豊臣秀吉(1537-98)が、桃山丘陵に伏見城を築き居城の一つとしたことで、港町・宿場町・城下町へと発展。人々が集まり酒の需要が高まりました。

そもそも名水百選に認定される伏見七名水の一つ・御香水や名水伝説もあるほど、天然の良水に恵まれた場所。また江戸時代になると、京都と大阪を結ぶ水陸交通の要衝となり流通の良さも相まって酒造家が増え、銘醸地がつくられました。その後、幕末では鳥羽・伏見の戦いで戦禍に見舞われ、明治以降は古くから継承される酒造りを中心に、産業のまちとして復興し進化。天下の酒処として、いまも国内有数の日本酒産地として知られています。

日本酒を身近に感じる場所[黄桜記念館・Kappa Gallery]

伏見の酒蔵の中でも、いち早く新しいことに挑戦をしてきた[黄桜]。初代が大正14(1925)年に創業し、2025年で100周年を迎える、実は日本酒業界内では若い蔵元です。だからこそ、独創的な発想と斬新な行動で商品開発ができたことはもちろん、古き良き酒蔵をリスペクトし、技術がどんなに進歩しても守るべき伝統や文化を大切に思ってきた歴史があります。

京阪電車中書島駅から徒歩7分のところにある、ここでしか飲めない日本酒が味わえる直営飲食店[キザクラ カッパカントリー]ができたのが1995年。地ビール事業に参入した年で、できたての地ビールが飲めると話題になりましたが、[黄桜記念館・Kappa Gallery]を併設して、日本酒造りの魅力をアピールしたのも、黄桜が日本酒を生業にしてきた証です。

黄桜記念館・Kappa Galleryは、道路を挟んで南側と北側に2棟あります。南側は、昔の酒造りを知る道具や、酒造りの流れがわかるジオラマ。酒米を使っての紹介に、今も脈々と湧き出る伏水も見ることができて、いわゆる酒造りを知るコーナーです。さらに、伏見の酒とは、日本酒の味わいと選び方など、日本酒の愉しみ方を紹介するコーナーもあります。

また、黄桜の日本酒といえばカッパとともにありました。道路を挟んで北側には、漫画家の清水崑(1912〜1974)氏、引き継がれた小島功(1928-2015)氏の河童の原画展示をはじめ、昭和30年代からのCMを見ることができます。館内にある河童資料室では、あらゆるカッパと出会えます。黄桜のキャラクターであるカッパから学術的なカッパまで。それは研究をする方々からも驚かれるほどの資料です。

帰りには[キザクラ カッパカントリー]で、日本酒や地ビールを味わうのもおすすめです。また、季節の日本酒がいち早く手に入る[黄桜商店]でおみやげを買うのもおすすめ。フルーティな味わいの直営店限定しぼりたて吟醸生酒や、山田錦の最高級酒米に伝統ある生酛系山廃酒母を用いて2ヶ月熟成させた生酛山廃特別純米酒山田錦。挑戦のひとつ、ワイン酵母を使う爽やかな甘酸っぱい味わいの黄桜ペルルなど、どれにしようか迷います。

左から、黄桜ペルル858円、しぼりたて吟醸生酒1320円、生酛山廃特別純米酒山田錦1188円

気になるのは、グッズです。酒器、箸置きなどもありますが、やはりカッパを描いた食器が人気。なかでも四季折々のカッパによる小皿4枚セットは、とても愛らしく、ついつい手に取る人が多いとか。ほかにも、黄桜の日本酒を使う和菓子や洋菓子、カレーに、塩麹や本みりんといった調味料系、時期により酒粕も用意されます。

人気のかっぱ銘々皿4枚セット1540円

春には、可憐な黄桜が咲き誇る黄桜広場もある施設。ちなみに[黄桜商店]では、ショット売りコーナーがあり、季節のおすすめの日本酒からビールまでワンコイン程度で味わうことができます。日本酒を学び飲んで食べて、おみやげも買えるので半日以上楽しめそうです。

焼き印がかわいいどら焼1個270円。京阪電車伏見桃山駅すぐにある地元和菓子店[総本家駿河屋善右衛門]とのコラボ商品

📍店舗情報
黄桜記念館・Kappa Gallery
(きざくらきねんかん・カッパギャラリー)
075-611-9919
京都府京都市伏見区塩屋町228 キザクラカッパカントリー内
10:00~16:00(但し、黄桜商店は10:00〜20:00)
火曜休(祝日の場合は水曜休)
入館無料
https://kizakura.co.jp/restaurant/country/memorial/

日本で唯一、2種の酒造りを見学できる施設[伏水蔵]

日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」が、ユネスコの無形文化遺産登録が決定したことで、いま酒造りの文化をわかりやすく伝える施設が注目されています。京阪電車中書島駅から徒歩20分ほどのところにある[伏水蔵]は、日本酒蔵と地ビール醸造所を同時に見学できる黄桜の施設。日本の方や海外の方にもわかりやすいように工夫された展示で、日本酒と地ビールの醸造行程を同時に見学できる施設は、工場見学を行っている大手酒造メーカーでは国内初です。

施設は5階建てで、金色の陽気なカッパに誘われるよう中に入れば、京都の美しい映像が流れてエントランスから風情を感じさせます。見学のスタートはエレベーターで2階から。ガイダンスシアターで、まずは伏見という土地と施設名になっており、お酒の仕込み水として使われている伏水(ふしみず)の話や、黄桜の日本酒造りと地ビール造りへのこだわりなどを紹介する14分ほどの映像を見ます。

椅子に座ってゆっくり映像を見ることができる、2階のガイダンスシアター

そのあとは5階へ。「~清酒の神髄~酒は生きもの」という展示空間があり、日本酒に適したお米の山田錦の特徴などの説明から、日本酒の製造に適したお米・酒造好適米の山田錦の特徴や日本酒の製造方法が説明されています。麹によって米のでんぷんが糖となり、酵母により糖分がアルコールへ変化していく日本酒は、米・水・自然・人から生まれてくる生きものだということを知ります。

そこから実際の吟醸蔵の見学通路へと進みます。最初は、麹室の床室になります。蒸米を薄く一面に広げて、種となる麹菌をふりかけて一晩、麹菌の生育を促します。その後、隣の棚室の箱に移し、杜氏と蔵人が一晩中ついて、温度と湿度の管理をします。麹造りは昔から「一麹、二酛、三造り」と言われる重要な工程です。日本酒の良否が決まる麹室を常時一般公開しているのは、全国でもここだけのだといいます。あいにく作業が終わったタイミングや作業をしない日もありますが、見学したいところです。

そして4階は黄桜の地ビール製造ラインの見学、3階はCMギャラリーを中心に年表など黄桜について知るコーナーがあり、2階は地ビール醸造所に、ショップとレストランがあります。直営店でしか買えない吟醸生酒や季節限定商品の他に、さまざまな日本酒や地ビールが買えます。買い求めやすい価格や小容量の商品も多く、スパークリング清酒など、豊富な種類があるだけでなく、ウィスキーやジンなどがあるのも驚きです。

直営店でしか買えない吟醸生酒や大吟醸酒、季節限定商品の他に、京都初の地ビール「京都麦酒」などが買える。その場で飲めるワンショットコーナーも

施設の担当者は「ユネスコ無形文化遺産登録が決定したいま、日本酒に注目してもらいながら、新しい挑戦をすることでおいしいお酒との出会いを楽しんでほしい」と話します。自分好みの日本酒やお酒を探すことは、ここ伏水蔵からなら始められそうです。

📍店舗情報
黄桜 伏水蔵
きざくらふしみぐら
075-644-4488
京都府京都市伏見区横大路下三栖梶原町53
10:00~16:00
年末年始、お盆休(臨時休館有)
入館無料
要予約
https://kizakura.co.jp/husimigura/

伏見の酒とおいしいもんのテーマパーク的施設[伏水酒蔵小路]

「日本酒で乾杯条例」が京都市により制定されて約3年後に誕生した画期的な施設。伏見大手筋商店街の四番街、南側にある路地裏の店は、扉を開けた瞬間から感じる活気と、各銘柄を表す額や一升瓶など日本酒を意識させるしつらえの数々が、期待感を膨らませワクワクします。

[伏水酒蔵小路]には9店舗の専門店があり、なかでも伏見の日本酒専門店「酒蔵」は、その時々で変わりますが伏見酒造組合に属する18蔵元約120銘柄の日本酒を用意しています。おすすめは、伏見名物の十八蔵のきき酒セット。すべての蔵元の日本酒を20ml試し飲みができるセットで、初心者には飲み方があるそうです。

十八蔵のきき酒セット2430円。この日は北川本家の富翁プルミエアムール純米酒から始まり、最後は黄桜の華祥風大吟醸でシメる。説明書きを読みながら楽しみましょう

最初は冷酒で飲みたい食前酒を6種揃えている一番奥の列を左から右へ。フルーティだったり甘口だったり飲みやすさを感じます。次に、味の濃い料理や脂っこい料理ともよく合う食中酒の日本酒が6種揃う真ん中の列を左から右へ。最後は、常温はもちろん熱燗で味わうのもおすすめの日本酒6種の手前の列を左から右へ。急いで飲む必要はなく、1時間ほどかけてゆっくり飲むのが良いそうです。

日本酒ツウの方におすすめなのは、ここでしか飲めない限定酒の伏水酒蔵小路限定酒飲み比べセット1750円。4蔵元の中から3銘柄を選び70mlずつ飲めます。他にも、酒蔵カウンターマネージャーの唎酒師に、香りや味わい、好みなどを伝えて選んでもらえる唎酒師セレクト(70ml×3種)1980円、唎酒師のブレンド酒(110ml)1470円~が、用意されています。

十八蔵のきき酒セット+アテのお得なセットAは伏見野菜四種盛り3350円。他にも海鮮炙りおまかせ5種盛りや伏見の仙石ハムセットなどがある

お料理も楽しめます。伏見名物の十八蔵のきき酒セットにプラスしてお得でヘルシーな伏見野菜四種盛りは女性に人気。七輪を使って地元で収穫された野菜、万願寺とうがらしやコカブ、ニンジン、タマネギなどを、岩塩やオリジナル酒粕バターといった4種の薬味で味わいます。

実は[伏水酒蔵小路]では、他の専門店の料理を出前スタイルで堪能できます。串カツ・おでん、鉄板焼き、町中華、寿司、九州博多創作料理、海鮮一品料理、炭火焼きに、日本酒をとことん楽しんだ後のシメとして人気のが酒粕らーめん。[らーめん門扇 伏水酒蔵小路店]は、クリーミィな鶏白湯スープが評判のお店です。

蔵元を選べる酒粕らーめん1000円、半玉のミニ900円。今回は日本酒感が強い黄桜、月の桂、豊祝、玉乃光と日本酒感が優しめの英勲、京姫、桃の滴、富翁から玉乃光をセレクト

変わり種の酒粕らーめんは、年間通して約13蔵元の純米酒酒粕を日本酒感が強めと優しめに分けて、毎回8蔵元選べるようにし、日本酒ファンにもシメの定番として知られるように。ここ数年は、酒粕らーめんが目当てのファンも増えたそう。今回は、日本酒感強めの玉乃光をオーダー。麺屋棣鄂によるオリジナルのストレートな細麺に絡みつく、酒粕鶏白湯スープはコクがあり酒粕の風味豊かです。白菜やネギ、鶏チャーシューのトッピングもスープを引き立てます。

施設内をはしご酒で楽しんだり、ひとつの蔵元をクローズアップする蔵元DAYなど蔵元とともに行うイベントがあったり、訪れるたびに違う楽しみがみつかる[伏水酒蔵小路]。店舗スタッフは、伏見の酒を国内外に広めて、次世代に伝えることに使命感を持っていると話し、風土を表す食の一つとして「日本酒っておもしろい!」と、思わせたいといいます。

中硬水や祝米などの酒米、米麹などの材料とそこに加わる杜氏らの技術からできる、きめ細やかな伏見の日本酒。地元を訪れて、伝統的酒造りから学び、飲んで味わえば、その魅力を存分に知ることができるはず。伏見の酒を知ることを、この冬からはじめてみませんか。

📍店舗情報
伏水酒蔵小路(ふしみさかぐらこうじ)
075-601-2430
京都府京都市伏見区平野町82‐2
11:00~22:00(フードLO21:00、ドリンクLO21:30)※店舗により異なる
無休 ※店舗により異なる(らーめん門扇 伏水酒蔵小路店は火曜休)
https://fushimi-sakagura-kouji.com/

紹介情報