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【京都・長岡京】“京たけのこ”のふるさとで筍尽くしの贅沢ランチ!~錦水亭・いっぷく亭~

【長岡京市】
【京都・長岡京】“京たけのこ”のふるさとで筍尽くしの贅沢ランチ!~錦水亭・いっぷく亭~

京たけのこに精通した料理人が手掛ける多彩な筍料理に舌鼓

春の味覚といえば京たけのこ!今年も筍の旬がやって来ました。
京たけのこは最高の品質といわれ、京都のみならず全国の料亭からもあつい支持を得る伝統の味です。今回は、京たけのこにまつわるあれこれと、筍尽くしの贅沢ランチが味わえる評判のお店を、名産地である長岡京市から2軒ご紹介します。

京たけのこのルーツ 長岡京市


京都西山連峰の麓に位置する長岡京市・向日市・大山崎町の3つの町からなる竹の里・乙訓(おとくに)エリアは、美しい竹林が広がることから日本最古の物語『竹取物語』の舞台と伝わる地のひとつ。

もともと日本で「竹」といえば、いにしえより生息する真竹のことで、生活用具や建材として重宝されてきました。諸説ありますが、日本に食用のたけのこがもたらされたのは鎌倉時代。高僧が中国から「孟宗竹(もうそうちく)」を海印寺寂照院(現在の長岡京市奥海印寺地区)に持ち帰ったことから、長岡京市は孟宗竹発祥の地とされています。


美味しさの秘密は独自の伝統農法にあり


筍といえば、一般的にシャキっとした歯ごたえがお馴染みの食感ですが、京たけのこは柔らかな肉質と滑らかな舌触りが魅力です。その美味しさの秘密は乙訓で約300年続く独自の伝統農法にあります。「京都式軟化栽培法」と呼ばれる技法で、農家さんが専用の畑で1年間手塩にかけて育てます。


作業は多岐にわたりますが、なかでも品質を大きく左右するといわれているのが、敷き藁と土入れの作業(上写真)。地中をふかふかの状態にすることで、柔らかい肉質の京たけのこが育ちます。


京たけのこの最高級品「朝掘り白子たけのこ」を提供する長岡京市のお店2軒


筍は空気に触れて日光に当たるとえぐみが出てしまうため、穂先が地表面に出る前に「ホリ」という専用農具を用いて、一本一本手作業で掘ります。なかでも、白肌のものを「白子(しろこ)たけのこ」と呼び、最高級品とされています。さらには、「朝掘り」は味も香りも一段と良くその美味しさは別格!毎年3月下旬から5月中旬にかけては、「朝掘り白子たけのこ」を主役にしたコース料理を提供するのがこちらの2軒です。

※筍の生育状況によっては変動する場合もありますので、お早めにお越しください。


キリシマツツジの名所、長岡天満宮に隣接する「錦水亭」


まずご紹介するのは、学問の神様・菅原道真公を祀る長岡天満宮に隣接する「錦水亭」。創業143年を誇る老舗料亭です。錦水亭のシンボルといえば長岡天満宮「八条が池」の上に浮かぶように建つ6棟の池座敷。


大きな窓の向こうに広がる桜並木やキリシマツツジ、新緑、紅葉……と四季折々の美しいロケーションが魅力です。※筍のシーズンは4名以上で池座敷の利用可

この一帯は江戸時代から続く紅葉の隠れた名所。紅葉の美しさを錦に見立て「錦水亭」の名を、旧宮家の山階宮(やましなのみや)様から賜ったとのこと。


屋号の由来を教えてくれたのは、5代目店主の池田久史さん。実は、前職は全く畑違いのお仕事でした。大学卒業後、「自分のもっている知識や技術で『人に喜んでもらいたい』」という思いからゲームプログラマーの道へと進んだ池田さんでしたが、結婚を機に錦水亭の後継者となり7年が経ちます。「古き良き日本の伝統文化が凝縮された錦水亭の空間や料理、おもてなしを未来へ継承し、お客様に感動をお届けしたい」という思いを胸に日々、奮闘中の池田さん。信条は今も変わりません。


錦水亭ではより料理に適した筍を提供するため、料亭では珍しく自家栽培しています。池田さん自らが掘り手となり、シーズン中は毎朝4時から作業開始。とことん「朝掘り」にこだわります。掘った筍はすぐさま大釜で茹でて下処理を行い、料理長の目利きで選別。その日のうちにお客さまに提供します。

シーズンを迎えて極上の筍が収穫できるのも、1年間を通して絶えず竹林の手入れを行っている努力の賜物なんですよ。


100年以上続く筍料理の味を継承するのは、この4月で勤続31年目を迎える料理長の大江貴久さん。筍とともに料理人人生を歩む筍料理のプロフェッショナルです。四季折々の食材を生かした京料理に遊び心を織り交ぜ、五感で楽しめる料理でお客さんをもてなします。


今回ご紹介するのはお昼の会席料理「たけのこづくし」13,000円(税・サ別)。

「たけのこづくし」の内容は、木の芽和え、のこ造り、若竹すまし汁、じきたけ、筍寿司、焼竹、むしたけ、天ぷら、酢の物、のこめし。こちらから3品ピックアップしてご紹介します。

※昼の席11時30分~最終入店14時30分、水曜定休(筍シーズンは無休)、14時30分以降の席(21時まで、最終入店19時)は前日18時までに要予約


創業時より受け継がれてきた、看板メニュー「じきたけ」。大きくて分厚い輪切りの筍を秘伝の出汁でじっくり炊き、追いがつおで仕上げます。大胆な見栄えと柔らかい食感とのギャップに衝撃。これぞ、京たけのこの醍醐味を存分に味わえる一品です。


小ぶりの輪切り筍を特製ダレでこんがり香ばしく焼き上げ、仕上げに竹皮に包んで蒸し焼きにした「焼竹」。刻んだ木の芽の緑が目にも鮮やかです。


京たけのこならではの滑らかな舌触りと特有の甘みをシンプルに実感できる「のこ造り」。山わさびと醤油でいただきます。


最後に本館へ。パノラマビューが圧巻の大広間と、竹林が美しい個室(上写真)にも案内していただきました。本館は大正末期に建てられた京都屈指の近代和風建築。北陸から招いた棟梁ならではの遊び心が散りばめられた特別な空間です。

長岡天満宮のお膝元にあることから、婚礼スポットとしての顔も持ちます。「この地に思い入れのある地元の方々に披露宴会場としてもご利用いただいています。人生の節目や大切な日に訪れたいと思っていいただけるような、そういう場所であり続けたい」と池田さんが思いを語ってくれました。


もみじの名所、光明寺門前に建つ「京料理 いっぷく亭」


続いてご紹介する「京料理 いっぷく亭」は、京都屈指のもみじの名所、光明寺の門前に立つお食事処。創業は55年で、2021年にリニューアルオープンしたばかりです。


竹の里らしく京銘竹をあしらった和モダンな雰囲気が漂う店内は、テーブル席に加えて、個室も完備。光明寺を望む客席もあり、青もみじや紅葉のシーズンはひときわ美しい景色を楽しむことができます。


出迎えてくれたのは、店主兼料理長の成田将幸さんと若女将の高橋加代さん。京料理一筋30年の成田さんが生み出す四季折々の料理と、若女将のアットホームな接客が好評です。

成田さんの故郷は茨城県。人気料理漫画に描かれた京料理の世界に憧れて料理人を志し、中学卒業後、京都へ修業に。ひょんなことから25歳の若さでいっぷく亭の店主となった成田さんは、更なる勉強のために高級料亭を食べ歩きます。そのとき出合ったのが錦水亭の朝掘りたけのこ。「故郷で食べていた筍と全く別もので、独特の食感や風味に感動しました」。

この出合いをきっかけに、京たけのこのポテンシャルの高さに気づいた成田さん。京たけのこの研究に勤しむこと15年、今や朝掘りの白子たけのこを使った料理は評判を呼び、地元のみならず、全国からその味を求めてお客さんが訪れます。


「筍は鮮度が命」と話す成田さんは、毎朝6時、契約農家から朝掘り筍が届く時間に合わせて、大きな寸胴いっぱいにお湯を分かしてスタンバイ!すぐに皮を剥き、一気に下茹でします。上の写真左は、下茹でした白子たけのこ。


料理ごとに最適な筍の大きさと部位を使い分けて多彩なコースに仕上げます。こちらは「白子たけのこ懐石」9,350円。内容は名物胡麻豆腐、竹の子木ノ芽和え、竹の子土佐煮、竹の子刺身、竹の子揚物、竹の子姿焼き、和牛蒸しゃぶ、竹の子御飯、若竹の吸物、竹の子時雨煮、デザートの全11品。こちらから5品をピックアップしてご紹介します。

※完全予約制、昼席11時~15時(最終入店13時30分、春は昼席のみ営業)、金・土・日曜は11時~12時40分、13時~15時の2部制、火曜定休(水不定休あり)


成田さんのおすすめNO.1が「竹の子姿焼き」。ダイナミックな料理ですが、筍の繊細な美味しさを存分に味わうことのできるメニューです。なんと完成まで丸3日かかるんだとか!筍の皮の甘い香りが食欲をそそります。


写真左奥は、まぐろ節と羅臼昆布でひいた上品な出汁が筍の旨みを引き出す「竹の子土佐煮」。写真右奥の「竹の子木ノ芽和え」は、心地よい食感が魅力。それぞれの香りがお互いを引き立て合います。写真手前の「竹の子刺身」は穂先から根元までを使い、それぞれの部位がもつ良さが堪能できます。


デザートに付く、オリジナルの和菓子「竹の香」は筍の甘露煮と隠し味の白味噌がベストマッチ!お土産としても販売されています。


長岡京市には京たけのこの他にも花菜、千両なすなど名産食材が揃い、料理人にとっては魅力的な土地だと話す成田さん。「従業員やお客さまの温かい人柄、安らぎを与えてくれるのどかな風景は僕にとっての原動力。この地で末永く料理の道を究めたいと思っています。ゆくゆくは人生の集大成として、地元のお世話になった方々に恩返しできるような、こぢんまりとした割烹料理店を開こうと考えています」。


今回ご紹介した「錦水亭」、「京料理 いっぷく亭」の周りには朝掘りたけのこの直売所も。まるまるとした大きな筍が美味しい筍の見分け方!ぜひお気に入りを連れて帰ってください。

紹介情報

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