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「納豆」も楽しめる!? 日本茶のふるさと“お茶の京都”をめぐる

【和束町・京田辺市】
「納豆」も楽しめる!? 日本茶のふるさと“お茶の京都”をめぐる

美しい茶畑や庭園を満喫し、ここでしか味わえない美味と出合う

日本三大茶の一つ「宇治茶」。京都南部の“お茶の京都”(山城地域)は、水はけと風通しがよい土壌と、十分な降雨量のある気候が茶葉の栽培に適していたため、茶の名産地となりました。今回は、和束町でお茶の魅力を満喫し、京田辺市の名刹でお茶との相性も抜群な「納豆」をいただくコースをご案内します。

「和束町」は約800年の歴史を紡ぐ、日本茶のふるさと


▲和束町の「石寺の茶畑」は、京都府景観資産第1号であり、日本遺産にも登録

全国的に知られる「宇治茶」の主産地が、桃源郷ならぬ「茶源郷(ちゃげんきょう)」と呼ばれる和束町です。

鎌倉時代、明恵上人(みょうえしょうにん)から種を分けてもらった海住山寺(かいじゅうせんじ)の慈心上人が、お茶を植えた和束町から、お茶をめぐる旅をスタートすることに。


▲和束町で最初にお茶が植えられたとされる「原山」

茶畑の新芽が芽吹く春の美しさは格別ですが、茶は常緑樹なので、一年中美しい畑を見ることができます。また、5月は新茶の収穫風景、冬は美しく刈りそろえられた様子など、折々の風景を楽しめます。


〈information〉

石寺の茶畑

住所:京都府相楽郡和束町石寺

電話:0774-78-3002(和束町役場)

URL:http://wazukanko.com/event/%E7%9F%B3%E5%AF%BA%E3%81%AE%E8%8C%B6%E7%95%91/


和束でこそのお茶づくしの料理の数々に感心しきり

茶畑見学に合わせて訪れたいのが、お茶文化を発信する人気宿「京都 和束荘」。料理のほか、煎茶を浮かべたお茶風呂や茶香炉、朝のお茶の一服など、“お茶を五感で楽しめる”として人気。


▲和束町の人気宿「京都 和束荘」(宿泊料金:大人2名1室1泊2食14,300円~/人※税込)

こちらは、宿泊無しでもランチ限定の「和束御膳」(税込・2,980円)をいただけます。黒塗りの箱の引き出しから、美しく盛られた料理が顔を覗かせると、思わずうっとり。


▲引き出しを一つ開けるごとに、ワクワク感があふれ出す

まずは目で楽しんだら、いざ実食!地元の野菜などをふんだんに使った、四季折々の料理のほか、「抹茶豆腐」や「抹茶プリン」などお茶を使った料理もたくさん。

天ぷらや水物、彩り重、お造りなどどれから食べようか目移りしてしまいますね。お料理は季節によって変わります。新茶の時季には、新芽の天ぷらなど、よりお茶を前面に押し出したお料理をいただけるそうです。


▲「睦月の会席料理」。宿泊者用の夕食メニューは月替り

宿泊者の夕食として提供される会席料理もお茶の長所がいかされているそう。


〈information〉

京都 和束荘

住所:京都府相楽郡和束町白栖猪ヶ口25-5

電話:0774-78-2603

時間:11:30~13:30(最終入店)、18:00~21:00(最終受付19:00)※昼・夜ともに3営業日前までの事前予約が必要(和束御膳は2名、会席料理は4名より)

休み:店休日はHPをご確認ください

URL:https://wazukaso.com/


おいしい淹れ方を学ぶ@「和束茶カフェ」


和束荘からすぐのところにある「和束茶カフェ」では、予約をしておけば、お茶体験(税込・800円)ができ、おいしい淹れ方を様々なお茶の知識とともに教えてもらえます。


▲丁寧にわかりやすく説明していただいた、日本茶インストラクターの中山美雪さん

日本茶や茶器についてレクチャーを受けたら、中山さんと同時に、お茶を淹れていきます。


▲お茶の旨みを引き出すのに最適な急須「宝瓶(ほうひん)」

一人前の茶葉はティースプーン一杯、約3gが適当だそう。


一煎目は低い温度で、甘みと旨み成分のテアニンを主に抽出。沸騰によりカルキを抜いたお湯の温度を50~60度まで下げ、茶葉の周りから注ぎ、1分から1分半待ちます。茶葉が1/3ほど開いたら注ぎどき。 こうして淹れたお茶は、色はやや薄いながらも、旨みと甘みが濃く、出汁のような味わいにびっくり!最後の一滴までしっかり注ぎ切るのも重要なポイントです。


二煎目は約60~70度、三煎目は約70~80度と、徐々にお湯の温度を上げていくことで、お茶の味わいがどんどん変化し、より鮮やかな緑色に。そのすがすがしいさわやかな香りとお茶の奥深さに圧倒され、お茶の概念が変わる体験でした。 「和束茶カフェ」では、レクチャーを短縮して、お茶の淹れ方をしっかり教えてもらうこともできるそう。和束茶や茶を使ったクッキー・佃煮などの販売、レンタサイクルの受付など、観光案内の拠点ともなっています。


〈information〉

和束茶カフェ

住所:京都府相楽郡和束町白栖大狭間35

電話:0774-78-4180

時間:10:00~17:00(カフェLO16:30) ※12月~2月は~16:30(カフェLO16:00

休み:年末年始

料金:お茶体験 1320円 (税込) ※要予約

URL:https://wazukanko.com/event/%E5%92%8C%E6%9D%9F%E8%8C%B6%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7/


侘び茶のキーパーソンといえば、「一休さん」


▲虎丘庵(一休禅師晩年の住処 秋と観梅の時期に特別拝観あり)

次に向かったのは「一休さん」こと一休宗純(そうじゅん)禅師のお寺、「酬恩庵(しゅうおんあん)一休寺」です。 侘び茶の基礎を築いたとされている村田珠光は、一休禅師から禅を学び、「茶禅一味(茶道は禅を起源とするため、その本質は同一であるべきという考え方)」の境地に至ったと言われています。 つまり、一休禅師なくして、茶道は生まれなかったと言っても過言ではありません。


▲方丈内のこちらの部屋でお茶をいただけます

中国で禅を学んだ臨済宗の高僧・大應国師(だいおうこくし/南浦紹明[なんぽじょうみょう])が、帰国後にこの地に妙勝寺を建立。その後、康正年中(1455~1456年)に、一休禅師が再興し、「酬恩庵」と命名。88歳で亡くなるまでここで過ごしたことから、「一休寺」という名で親しまれています。


▲境内の「方丈庭園」は国の名勝に指定。こちらは方丈正面の南庭

「とんち」で知られる一休禅師は、応永元(1394)年京都で生まれ、後小松天皇または足利義満の血を引くとされる人物。


▲糸を引く納豆とはまったく異なり、塩味のきいた独特の味の「一休寺納豆」

一休禅師から伝わる、一休寺ならではの食文化「一休寺納豆」。数百年もの間、ほぼ同じ製法で作られる納豆は、たんぱく質補給の貴重な栄養源として、また保存食として珍重されてきました。


▲蒸した大豆に、麦を炒って挽いた“はったい粉”と麹を混ぜて発酵。その後、塩湯と共に桶に移し、約一年間天日干しにして完成

庫裏(くり)売店では小50g700円が販売されています。 同じ庫裏売店では、抹茶(800円)を注文でき、茶受けに一休寺納豆を使った落雁がついてきます。


▲落雁「きぬのしずく」は、京都の老舗和菓子店「亀末広」製

一休寺納豆は、噛むほどに旨みがじんわりと広がります。調味料として使え、市内のフレンチやイタリアンレストランでも愛用されているそう。 刻んだ一休寺納豆が練りこまれた落雁は、京都市内の亀末広のもの。


▲奈良の老舗菓子店「萬々堂」とのオリジナル菓子「通無道」も人気。


▲住職自ら、一休寺納豆の仕込み作業をされている

日常を忘れ、ゆったりと贅沢な時間を過ごせる名刹「酬恩庵一休寺」。重要文化財や宝物殿など、見どころも盛りだくさんです。


〈information〉

酬恩庵一休寺

住所:京都府京田辺市薪里ノ内102

電話:0774-62-0193

時間:9:00~17:00(宝物殿9:30~16:30)

休み:なし

料金:拝観料 大人500円(中学生以上)、大学生400円高校生300円中学生200円

URL:http://www.ikkyuji.org/


美しい茶畑を眺め、おいしいお茶を飲んで食べ、淹れ方や歴史も学ぶ。お茶の奥深さをとことん楽しめるうえ、一休寺納豆や雉(実は雉は、日本人にはゆかりが深く、平安時代から食されてきた鳥。和束町のすぐ南に位置する笠置町(かさぎちょう)の高級鶏肉メーカーが、地元山城地域の名物を作るべく、雉の養殖をスタート。今回は訪問できませんでしたが、雉料理もお茶の京都のもうひとつの名物となっています)など、ここでしか味わえない美味とも出会える<お茶の京都>は、訪れてみれば感激の連続のはず。 京都市街からわずかに足を延ばすだけで、こんな貴重な体験ができる癒しの郷が待っています。

 

 


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