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“竹の里・乙訓”で知られざる竹林と筍グルメを味わい、松花堂弁当ゆかりの地へ

【向日市・長岡京市・八幡市】
“竹の里・乙訓”で知られざる竹林と筍グルメを味わい、松花堂弁当ゆかりの地へ

アクセス便利な京都の穴場で、いつもと違う「京都」を発見

京都市に隣接する“竹の里・乙訓”エリアは、日本最古の物語とされる『竹取物語』の発祥の地といわれ、全国的に有名な最上級の筍(たけのこ)の産地として知られています。今回はそんな竹の里・乙訓の中から向日市と長岡京市を散策し、お隣の“お茶の京都”の八幡市まで足をのばす旅をご案内します。

「京都でゆっくり竹林散策」が叶う穴場


向日丘陵の「竹の径」は、京都の中心部からの距離が嵐山とほぼ変わらない、まさに穴場のオススメスポット。嵐山ほどの知名度がない分、静けさの中でゆったりと、美しい景色を堪能できます。


▲剪定した竹の枝のボリュームをいかした「竹穂垣(たけほがき)」

竹の径(全長約1.8km)には、かぐや姫の十二単衣の襟元をイメージした「かぐや垣」や「竹穂垣」、「古墳垣」など全部で8種類の竹垣を見ることができます。


▲「古墳垣」は丸みを帯びた古墳の形を表現


筍がおいしい理由は、良質の土。敷き詰めたワラの上に、同じやぶから掘り出した土を盛ることで、柔らかい土の中で筍がよく育つのだそう。


▲新しく敷かれた土は明るい色。垣根より高い場所があることも、長年土が盛られてきた証拠


〈information〉

竹の径

住所:京都府向日市寺戸町芝山~物集女町長野

電話:070-1765-5398(向日市観光協会)

時間・休み:散策自由

URL:https://www.muko-kankou.jp/

 


▲乙訓地域の筍は、やわらかさとさっくりとした歯ごたえに加え、えぐみがないのが特徴

「京の味処 うお寿(うおす)」では、旬の朝掘り筍を厳選し、水煮にすることで、季節を問わず、旬のものと同じようなおいしさの筍を味わえます。 水煮の筍を、酒やみりん、追い鰹などで一昼夜、じっくり炊き込んだ後、丁寧に特製すし飯をつめた看板メニューが「竹の子姿ずし」(1人前、税別・1,500円)。


▲持ち帰りもでき、美しい箱に入れてもらえるので、お土産にもぴったり

白さが残る筍は、醤油を使っていないため、筍本来の甘みと爽やかな香りが味わえ、シャキシャキ感と柔らかさがともに楽しめます。


▲姿ずしの後には、この春登場した新デザート「笹羊羹」(税別・450円)をオススメ。笹粉入りの羊羹にシロップ煮の筍と白玉、つぶあんが合わさり、清涼感と筍の食感が楽しい。


▲底にシロップで炊いた筍が入る「筍入り豆乳アイス」(税別・400円)。上にかかる笹パウダーの香りが、さっぱりした豆乳と筍のアイスとの見事なハーモニーを奏でています。


▲3代目店主の山下武司さんは、先代が開発した「竹の子姿ずし」の伝承に加え、こうした地元特産品を活かしたスイーツ開発などに取り組んでいる

春には、新鮮な旬の筍をたっぷり使った筍づくしのコース料理なども登場。採れたての筍ならではの味を、姿ずしと一緒に、ぜひ体感してみてください。


〈information〉

京の味処 うお寿

住所:京都府長岡京市今里2-17-8

電話:075-951-0325

時間:11:00〜19:30最終入店

休み:月曜(月曜が祝日の場合は営業、翌日休み)、年末年始

URL:https://www.uosu.jp/

 

京都の守り神「石清水八幡宮」には、「松花堂」の跡地があった

竹の里・乙訓エリアの西側に位置する八幡市は、「石清水八幡宮」の門前町として発展。 石清水八幡宮の境内に隠居所として構えた草庵「松花堂」が、あの「松花堂弁当」誕生のヒントとなったゆかりの地でもあります。


▲弁当箱が4つに仕切られた「松花堂弁当」(「京都吉兆 松花堂店」)


「石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)」は、八幡宮総社の大分県・宇佐神宮から、平安時代の貞観元(859)年に分霊を迎え、翌年八幡造の社殿が創建されました。伊勢の神宮に次ぐ第二の宗廟とも称される社で、京の都の守護、国家鎮護の社として長年崇敬されています。


▲一帯には厳かな空気が漂い、気を引き締めて御社殿に参拝

現在の社殿は徳川家光の造替によるもの。現存する八幡造の本殿の中で最古かつ最大規模で、2016年に本社10棟、附棟札(つけたりむなふだ)3枚が国宝へと指定されました。


南総門から表参道へ出て、「影清塚」の分岐点を右に上がり、「石清水社」へと向かう途中にある「松花堂」の跡地。 石清水八幡宮境内の僧坊(僧の住居)「瀧本坊」の住職だった昭乗は、弟子に坊を譲った後、別の僧坊「泉坊」に暮らし、寛永14(1637)年にその一角に建てた草庵を「松花堂」と称したため、松花堂昭乗と呼ばれるようになったとか。


▲1984年の記念碑建立50周年に建て替えられたエジソン記念碑

エジソンが八幡の竹をフィラメントに使って、白熱電球の長時間点灯に成功したことで、「八幡バンブー」は注目を集め、海外に輸出されたとのこと。


〈information〉

石清水八幡宮

住所:京都府八幡市八幡高坊30

電話:075-981-3001

時間:6:00~18:00※年末年始は変動あり

URL:https://www.iwashimizu.or.jp/


「松花堂弁当」の誕生秘話と格別の味を一所で感じる


▲「松花堂好四つ切塗箱」(八幡市立松花堂美術館蔵)が、松花堂弁当のヒントになったといわれる

江戸時代前期の芸術文化に大きく貢献した文化人・松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)ゆかりの草庵「松花堂」が、石清水八幡宮より移築された庭園と、「松花堂弁当」の源になった箱の写しなどを所蔵している「松花堂庭園・美術館」へ。


▲建物右側が「松花堂庭園・美術館」。左側の「京都吉兆 松花堂店」で松花堂弁当を味わえる


▲美術館の展示室。春と秋の企画展と特別展、年に3回ほど展覧会など実施

美術館には、松花堂昭乗の自画像写や、晩年を過ごした草庵「松花堂」や「泉坊書院」の内装品などの作品を収蔵。  併設の庭園は20,000平米と広大で、庭園の内園と呼ばれるエリアには、草庵「松花堂」と「泉坊書院」が石清水八幡宮から移築されています。


▲明治24(1891)年に移築された草庵「松花堂」。2014年に「松花堂及び書院庭園」が国名勝に指定

なお、過去の災害被害により、2024年2月現在、庭園は外園のみ開園され、草庵「松花堂」は見学不可となっています。※ ただし、草庵「松花堂」は一部の日程にて特別公開されています。詳細は公式HP(下記URLリンクを参照)にてご確認ください。


〈information〉

松花堂庭園・美術館

住所:京都府八幡市八幡女郎花43-1

電話:075-981-0010

時間:9:00〜17:00(入園・入館は16:30まで)

休み:月曜(祝日の場合は開館、その翌平日休み)、12月27日〜1月4日

美術館観覧料 :大人400円、学生300円、子供(小・中学生・高校生)無料※内容により変動あり。要問合せ

庭園入園料:大人300円、学生(高校・大学生)220円、子供(小・中学生)150円

URL:https://shokado-garden-art-museum.jp/


季節の彩美しい「松花堂弁当」を発祥の店「京都吉兆」で

美術館には「京都吉兆 松花堂店」が隣接。今や「松花堂弁当」と言えば、日本全国で定番ですが、発祥の地のお弁当には、胸が高まります。


▲老舗料亭「京都吉兆」が美術館敷地内に「京都吉兆 松花堂店」を2002年にオープン


▲「松花堂弁当」(税・サ込・5,100円)

早速、松花堂弁当の蓋を開けると、お料理は旬の素材をふんだんに使い、季節感たっぷりの逸品ぞろい。目に楽しく、造里(つくり)・焼物などの盛り付けの美しさに、思わず感嘆してしまいます。


取材した1月下旬のお料理は、春を先取りした菜の花や鰆や、おいしい冬の根菜を存分に使用。「粕仕立ての大根とごぼうの炊き合わせ」は、野菜の濃い甘みと旨みを感じられ、酒粕と白味噌の温かみにほっこりできました。

「松花堂弁当の一番のポイントはお椀」と料理長。八幡の水と良質な昆布でとった、すっきりかつしっかりした旨みの一番出汁と、旬の魚のしんじょうの優しい味の見事出会いを感じられます。


▲美しい庭園を眺めながら、美味しい料理を味わう時間は、まさに贅沢

素材の良さを最大限引き出した繊細な味わいは、これぞ日本料理の真骨頂。 十字に仕切られている「松花堂弁当」では、料理の味や香りが混ざらず、さらにお造里と温かい煮物が隣り合わせでも、それぞれ適温でおいしく味わえます。春にはもちろん地元の筍もふんだんに使われるとのことなので、早めの予約がオススメです。


〈information〉

京都吉兆 松花堂店

住所:京都府八幡市八幡女郎花43−1

電話:075-971-3311

時間:11:00~15:00(14:00L.O. ※一部料理はL.O.13:00)、17:00~21:30(19:00L.O.)※夜は金・土・日・祝のみの営業(昼夜ともに2日前までに要予約)

休み:月曜(祝日の場合は営業、翌平日休み)、12月26日~1月6日

URL:https://kyoto-kitcho.com/restaurant/shokado/


穴場感たっぷりの「竹の径」は、これぞ京都という魅力を味わえるはず。筍料理や松花堂弁当などのグルメも味わえ、石清水八幡宮をはじめとする歴史の重みを感じられる「竹の里・乙訓」と「八幡」をぜひ訪れ、いつもと違う京都を発見してみてください。

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