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京都・美山で湯葉ランチ!工場併設のお店で出来立て湯葉を味わう

【南丹市】
京都・美山で湯葉ランチ!工場併設のお店で出来立て湯葉を味わう

こんな使い方も!? 多彩な献立で楽しむ湯葉料理

数ある京都名物の中でも人気の高い湯葉。栄養たっぷりでヘルシーな上、上品な味わいがたまらないと、近年、さらに注目を集めています。今回は湯葉にまつわるあれこれと、湯葉工場に併設された、出来立ての湯葉が味わえる美山町のお店を2軒ご紹介します。

なぜ湯葉が京都の名物になったの?


湯葉は豆乳を加熱することでできる薄い膜を採ったもの。その歴史は古く、一説に鎌倉時代に「禅」や「喫茶」と共に伝来したといわれています。湯葉はタンパク質や必須脂肪酸を多く含む油脂が主成分で、栄養食品としてとっても優秀!そのため、肉食が禁じられていた僧侶のタンパク源として、精進料理に欠かせない食材となりました。寺院が多くある京都で湯葉が名物になったのも納得ですね。


「ゆば」の名前の由来は?


「ゆば」は古くは「うば」と呼ばれていました。その由来を、黄色くシワのあるさまが姥の顔の皮に似ているからという説がありますが、江戸時代の戯作者・山東京伝は、記した『骨董集』の中でその説を否定。豆腐を作るときに上に浮かぶ皮、「豆腐の上(うわ)」が「うば」となり、さらになまって「ゆば」になったと記しています。


湯葉はどうやって作られているの?


湯葉は大別して生湯葉と乾燥湯葉の2種類あり、概ね次のような工程で作られています。

 (1)大豆を水に浸ける→(2)水と一緒にすり潰す→(3)加熱する→(4)濾過して豆乳とおからに分ける→(5)豆乳を温めて膜を作る→(6)膜を採る(→(7)乾燥させる)


湯葉作りをしている間中、豆乳は蒸気で湯煎できる「平釜」で温め続けられます。そのため、時間が経てば豆乳の味・色も変わり、湯葉の厚みや張り方も変わります。湯葉屋さんでは、その状態を見極め、それぞれに合った種類の湯葉を作っています。


汲み上げ湯葉と引き上げ湯葉の違いは?種類豊富な湯葉


生湯葉の中でも、豆乳と共に汲み上げる「汲み上げ湯葉」(写真左)や箸などでつまみ上げる「つまみ湯葉」(写真右)は、豆乳を温め始めた時にできる、形の定まらないほど薄い膜を採ったもの。豆乳本来の味わいと柔らかな口当たりが特長です。


その後に作られるのが「引き上げ湯葉」。豆乳を温め始めて少し経ってから採れる、厚みの均一な膜を竹串などで引き上げます。お店によって変わりますが、「平湯葉」や「さしみ湯葉」と呼ばれるものは、これを折りたたんだり重ねたりしたものが一般的です。


乾燥湯葉は、巻いたり結んだりといった細工をすることもあり、それによって呼び方はさまざま。京都の伝統的な乾燥湯葉として「とゆ湯葉」がありますが、これは引き上げ湯葉を切り離すたびに竹串に残る湯葉を何層にも重ねたものです。


出来立ての湯葉が味わえる美山町のお店2軒


湯葉の原料は大豆と水だけ。おいしい水なくして、おいしい湯葉はできません。京都府のほぼ中央に位置し、数多くの茅葺き民家が今なお残る自然豊かな町・美山町。ここは、芦生原生林を源とする川が東西に流れ、国土交通省の「水の郷百選」にも認定されている清流の町。ここに工場に併設された、出来立ての湯葉が食べられるお店があります。


「京ゆば処 静家」美山本店


まずご紹介するのは、平成3(1991)年から美山町に本店と自社工場を構え、京都市内にも二条城店をもつ「京ゆば処 静家」。代表の中田太郎さんが湯葉の製造を、女将の裕江さんが本店での調理を担当されています。この日は「取材のサポートに」と、二条城店の切り盛りをされている娘の智子さんも駆けつけてくださいました。ご一家揃って驚くほどお肌がツヤツヤ!これも大豆や湯葉の効果なのかもしれません。


太郎さんは、京都市内の湯葉屋さんで6~7年の修業を積んだ後、独立。工場を構える際、「水がきれいな上、生活の利便性も確保できそうだったから」と、美山の地を選んだといいます。「食品やから体に良くないものは使ったらあかん。大豆も、うちはその時その時に一番いい国産大豆だけをブレンドして使っています」と太郎さん。


湯葉は時間が経つほどに膜が厚くなり、味も変化するので、均一な品質を維持するにはスピードが大切。言葉少なに話しながらも、スッスッと竹串で素早く湯葉を引き上げていく太郎さん。やはりこの技が湯葉作りの要かと思いきや、意外にも一番気にかけているのは、大豆の浸漬時間なのだといいます。「水に浸けすぎても、浸けなさすぎてもいい湯葉はできない。うちは多分、他のお店より浸ける時間が長いと思いますが、そうすることで大豆のアクを取りきり、大豆本来の甘味を引き出せるんです」とのこと。


そんなこだわりの湯葉を使った、本店のおすすめメニューが「ゆば尽くし膳」4600円です(汲み上げゆば、生ゆばの刺し身、生ゆばのステーキ陶板焼き、ゆば煮鍋、美山鼓の煮物、竹ゆばの佃煮、お吸い物、豆乳デザートにご飯付き)。まったりととろけるような口当たりの「汲み上げゆば」や、心地よい歯応えと豊かな風味をもつ「生ゆばの刺し身」はさすがの味わい。「ゆば煮鍋」は、黒豆を使ったポン酢でいただくと、さらに甘味が引き立ちます。


バリエーション豊富で、湯葉ばかりなのに飽きがこない。そんなこの御膳の中でも特に人気なのが「生ゆばのステーキ陶板焼き」です。香り立ち上るバターで、ふつふつと焼かれるさしみ湯葉。しばらくするとお餅のようにふくれ始め、焼き色がついてふわふわになったら完成です!醤油ベースと胡麻ベース、2種類のタレでいただきます。表面は香ばしく、中は滑らかな舌触り。バターのコクと甘味が加わって、ほっとする味なのに食べ応えは抜群です。


「湯葉って『お店で食べる高級なもの』『煮物やお吸い物にちょっと使うもの』というイメージがあるでしょう。栄養豊富で消化も良いし、調理自体もそれほど難しくないので、家庭でもいろんなアレンジができます。それを知っていただきたくて、平成8(1996)年からお料理を出すようになったんです」と、ニコニコ話す裕江さん。手軽に食べるなら「ゆばあんかけ丼」と「生ゆばのステーキ陶板焼き」のセット3100円もおすすめです。


「京・美山ゆば ゆう豆」&「Beans cafe. miyama」


ご紹介するもう一つのお店が、美山産の大豆を使った湯葉を製造する「京・美山ゆば ゆう豆」と、同社が運営する工場隣接のカフェ「Beans cafe. miyama」。

こちらの代表は、湯葉店で4年間修業を積み、平成18(2006)年に独立開業した太田雄介さんです。太田さんは生まれも育ちも美山町で、大学進学で一度は地元を離れるも、そこで美山町の良さを再認識しUターン。湯葉づくりの道に入りました。


京都には、数多くの湯葉の名店があるのは周知の通り。開業を決意した時、「新規参入する自分の湯葉をどうやって選んでもらうか」を考え、出した答えが、特産品である丹波黒(黒豆)を使った湯葉の開発と、美山産の大豆を使った湯葉作りでした。

しかし美山町で生産される大豆の量はごくわずか。太田さんは近隣の農家一軒一軒に声を掛け、「出来た大豆は全量買い取る」という契約を結びました。「現在は7割が美山産で、残りは隣町から仕入れています。これを美山産100%にするのが目標です」と太田さん。


湯葉作りについて、太田さんは「湯葉は大豆の種類や浸漬時間、大豆をすり潰す時の水の量など、さまざまな要因によって出来が違いますし、生湯葉なら厚みや豆乳の量で柔らかさが変わります。そこを細かく調整しながら作れるのは、私たちのような小さい工場ならでは」と、話します。しかし、いくら情熱を注いで作っても、湯葉は一般に馴染みの薄い食材。「もっと湯葉を知ってもらいたい」と、令和4(2022)年、工場の隣にカフェを開きました。


「Beans cafe. miyama」は、太田さんの親戚が所有していた茅葺の古民家を改装したカフェ。店内には広い窓が設けられ、そこからは美山町らしいのどかな田園風景を眺めることができます。また、2階はイベントスペースとして活用されており、カフェ利用でも見学することが可能。茅葺屋根の造りを間近で見ることができるのも嬉しいポイントです


こちらのおすすめは、ドリンクやゆばスイーツも付くランチの「湯葉づくしセット」2000円。内容は割れ湯葉を衣にした「丹波朝霧どり」の揚げ物、茶巾にした硬めの汲み上げ湯葉を種にした「お吸い物」、「湯葉豆腐」(前菜を付ける場合は、豆乳で作った胡麻豆腐)、その日の「湯葉の一品」(この日は東寺揚の揚げ浸し)、自家製の豆腐マヨネーズとおからを使った「季節のサラダ」、そして、ご飯に汲み上げ湯葉と醤油漬けにした卵黄をのせた「ゆばめし」です。

中でも「ゆばめし」は、上品な和風出汁のあんとたっぷりの湯葉がからまって、料亭の逸品のような絶妙な味わい!湯葉屋さんならではの豪華なランチです。


ランチにはプラス500円で「豆乳スープと湯葉盛りセット」を付けることができます。豆乳は湯葉作りに使われているものなので、とっても濃厚。湯葉盛りセットでは、黒(丹波黒)のさしみ湯葉とかさね湯葉、白(大豆)のさしみ湯葉とかさね湯葉の食べ比べを楽しむことができます。

また、工場には申し込み不要の見学スペースがあり、予約制で「ゆば作り体験」も実施されているので、湯葉好きの方はぜひそちらも活用してみてください。


今回ご紹介した「京ゆば処 静家」、「京・美山ゆば ゆう豆」は、どちらもHPから製品を購入することができます。家庭でも湯葉料理を味わってみるのもいいですね。

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