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京都・山崎の名水が生んだ世界品質のジャパニーズウイスキー
【大山崎】リニューアルした「サントリー山崎蒸溜所」〜見学の楽しみ方から「山崎」の魅力まで〜
海外でも高い評価を得る日本のウイスキー。その代表ともいえる存在が、サントリーシングルモルトウイスキー「山崎」です。2023年9月にはイギリス・ロンドンで開催された世界的な酒類コンペティションにおいて、あらゆる酒類カテゴリーからエントリーされた、約2,300品の中から傑出した1品のみに授与される賞を「山崎25年」が初受賞しました。
この「山崎」が生まれたのが「サントリー山崎蒸溜所」。1923年に日本初のモルトウイスキー蒸溜所の建設に着手して以来、日本のウイスキー史に欠かせない存在として洋酒文化の普及にも貢献しています。今回は大規模リニューアルを終えた蒸溜所を訪ね、「山崎」の魅力に迫りました。
建設に着手してから100周年を期にリニューアルされた「サントリー山崎蒸溜所」
「サントリー山崎蒸溜所」は、JR山崎駅から線路沿いを西に10分ほど歩いた場所にあります。遠くからもひと目でわかる大きなレンガづくりの建物が目印。ここで「山崎」や「響」など、サントリーのウイスキーづくりに必要な多彩な原酒が製造されています。
まず目に飛び込むのが、こちらのゲート(写真左)。実は、ウイスキーの蒸溜工程で1989年から2018年まで使用されていたポットスチル(麦芽を発酵させたもろみを加熱してアルコール成分を分離するために使用される蒸溜釜)を再利用した銅製のゲートなんです。ゲートの柱(写真右)には、ポットスチルのNO.と使用されてきた年代が刻まれています。蒸溜所内には、使われなくなったポットスチルがさまざまな形で再利用されているんですよ。
蒸溜所のシンボルともいえる看板も、実は以前の「THE YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY」から「SUNTORY WHISKY YAMAZAKI DISTILLERY」へと変更されています。こちらに気づいた人は、なかなかの通ですね。
サントリーとジャパニーズウイスキーの歴史を伝える「山崎ウイスキー館」
ゲートをくぐり「山崎の“杜”」と名付けられた小道を歩いた先に佇んでいるのが「山崎ウイスキー館」。蒸溜所内で唯一、操業当時から残っている建造物です。館内には、サントリーの創業者・鳥井信治郎氏が、さまざまな困難を乗り越えながら日本にウイスキー文化を広めていった歴史が紹介されています。
「以前訪れたことがある方ならお気づきかと思いますが、実は展示コーナーの内容も変わっているんです」と話すのは、館内を案内していただいた佐々木太一さん。かつてバレーボールの日本代表選手として活躍し、現在はウイスキーアンバサダーとして全国を駆け回り、サントリーウイスキーの魅力を広める活動をされています。
「今回のリニューアルで、創業者・鳥井信治郎から続くサントリーウイスキーのものづくりの継承と革新の訴求をより強めると共に、山崎蒸溜所での多彩な原酒のつくり分けと、長期熟成に耐えうる原酒のつくり込みについての展示を充実させています」と、佐々木さん。写真は「山崎」に使われる原酒のディスプレイ。これだけの原酒がひとつになることで「山崎」の複雑かつ深みのある味わいが生まれるんですね。
展示コーナーの先には、ウイスキーを有料で試飲できる「テイスティングラウンジ」が設けられています。中央で存在感を見せるのが、「山崎の“杜”」のゲートにも使用されている、古いポットスチルを生かしたカウンター。ここで「山崎」などサントリーウイスキーをじっくりと楽しむことができます。
見学ツアーの内容もリニューアル!2つのコースから選べる
「サントリー山崎蒸溜所」では、今回のリニューアルに合わせて、見学ツアーの内容を刷新。「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」(80分)と「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」(120分)の2つのコースが設けられることになりました。どちらも抽選制となっており、同社のwebサイトから申し込むことができます。
「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」では、「山崎」の仕込みから発酵、蒸溜、貯蔵の工程を通じて、サントリーのものづくりへのこだわりを五感で体感できます。さらに「プレステージ」では、通常入ることができない製造エリアでの見学のほか、特別なテイスティングルーム「The YAMAZAKI」で、「山崎12年」や希少な「モルトウイスキー原酒」などをストレートや水割りで飲み比べできるのが魅力です。
ツアーの詳細は実際に体験していただくのが一番!なので、ここでは「山崎」ができるまでの工程で、ぜひ目にしていただきたいところをピックアップしてご紹介します。
こちらは「山崎」のもととなる麦汁を発酵させる木桶発酵槽。発酵に木を使っているのが日本らしいですが、乳酸菌などの微生物が温かな木桶にやってくることで、複雑な味わいを生み出すのだそうです。
「プレステージ」では、実際にこの木桶発酵槽をのぞき込んで、泡がプツプツと生まれる様子や発酵時に生まれる匂いを体感できます。
こちらは、ウイスキーの熟成具合を確認するための原酒が眠る後熟庫。「プレステージ」の参加者のみ立ち入りが可能です。
こちらでは、熟成具合を見るためのサンプリング作業も実際に披露してくれます。樽のお腹に当たる部分にはめ込まれた木栓を、ノミと木槌で大きな音と共に取り外し、ホースを差し込んでボトルへ移す作業は、独特の緊張感が漂います。
ほかにも、ウイスキーの原料について学べる「仕込前室」が行程に加わり、より充実度が増した見学ツアー。特に巨大な蒸溜釜がズラリと並ぶ姿は壮観なので、ぜひ目に焼き付けておきたいものです。
ウイスキーづくりに欠かせない「水」と「情熱」
それにしても、なぜサントリーの創業者・鳥井信治郎氏は、この地に蒸溜所を設けたのでしょうか。その理由は色々ありますが、そのひとつに名水の存在が挙げられます。
水はウイスキーにとって命といわれるほど大切なもの。ウイスキーの初期工程の「仕込み」に使う水は、ウイスキーの味を左右するほど重要な役割を果たします。また、熟成を終えた原酒をブレンドした後、アルコール度数を調整するために使う水も、ウイスキーの味わいに大きな影響を及ぼします。
この周囲は、昔から「水生野(みなせの)」と呼ばれ、水の豊かな里として、『日本書紀』『伊勢物語』『枕草子』などでも紹介されています。何百年も前から名水で知られた山崎の水は、「日本人の繊細な舌に合ったウイスキーをつくりたい」と願った鳥井信治郎氏にとって、まさに理想郷だったのでしょう。
鳥井信治郎氏がウイスキーづくりにかけた情熱を具現化しているのが、今回特別に案内していただいた「パイロットディスティラリー」。ここは、ウイスキー製造の研究開発を行うための施設で、品質向上に関連した技術開発が行われています。
蒸溜所のミニチュア版ともいえる施設内には、環境に配慮しながらウイスキーづくりを行うことをめざして、ガスと電気のハイブリッド蒸溜釜が2021年に導入され、今回初めて公開されました。次世代のウイスキーづくりも着々と進んでいるようです。
「パイロットディスティラリーでは、技術開発はもちろん、学会に出席して研究成果の発表も行っています。ツアーでは見学いただくことはできませんが、サントリーが大切にするものづくりへのこだわりを、さまざまな形で発信していきたい」と、パイロットディスティラリーを案内していただいたブレンダー室・室長の野口雄志さん。1968年の建設以来、創業者・鳥井信治郎氏がつくりだした情熱のDNAが、脈々と受け継がれています。
鳥井信治郎氏がウイスキーづくりをはじめて100周年。当初は誰も見向きもしなかったウイスキーは、「ジャパニーズウイスキー」と世界中で称賛されるようになりました。今後の新しい展開からも目が離せません。
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