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木津川市のブルワリーパブで京都グルメとクラフトビールのペアリングを

【木津川市】
木津川市のブルワリーパブで京都グルメとクラフトビールのペアリングを

近年、京都にもクラフトビールブームが到来。良質で豊富な地下水に恵まれ、職人によるものづくり文化が根付いた京都のクラフトビールは全国から注目されています。
今回お邪魔したのは、2022年5月に誕生した京都木津川市にあるマイクロブルワリー「ことことビール」。レトロなブルワリーパブを併設し、ペアリングにこだわった人気定番のものから個性豊かな食材を活かした一風変わったクラフトビールまで、幅広いビール作りを行っているということで、代表の板東智也さんにお話を伺ってきました。

週末はブルワリーパブとして賑わう「ことことビール」

木津川市は人口約8万人。豊かな自然と数々の有名史跡を有する一方、京都や大阪、奈良方面への交通アクセスが良好で生活の利便性にも優れているため、府内随一の人口増加率を誇る人気のまちです。

ことことビールは、JR奈良線「棚倉」駅からすぐのところ。線路沿いを南に徒歩1分ほどの場所にあります。赤茶色の建物に黒い看板とチョウのマークが目印の建物です。


ことことビールでは、ビールを直売やウェブ、イベント、道の駅などで販売するほか、土日限定でパブをオープンしています。パブでは樽生をサーバーに繋いでグラスやジョッキで提供。もちろん、ビールと相性ぴったりのおつまみもスタンバイしています!※直売は金~火曜、パブは土・日曜。いずれも営業時間は11:51~17:10


こちらにあるパブスペースは、昭和平成の哀愁漂う元カラオケ喫茶。年配の方からは懐かしくて落ち着く、若い方からは「エモ!」との声をいただく、お客さんに大評判の空間なのだそう。

パブならではの樽生ビールの味わいや板東さんとの会話、またレトロな空間を楽しみに、地元の人はもちろん、イベントやSNSを通じて遠くは関東からもお客さんが訪れます。


木津川の地下水が仕込み水、自然の恵みと地元の人に感謝するビール作り

代表の板東さんに、ことことビールができるまでのお話を伺いました。

板東さんは大阪府泉大津市出身で、魚釣りと、人を楽しませるのが大好きな少年だったそう。

自然あふれる海辺の町でのびのびと暮らし、大学進学を機に京都へ。

「僕にとっての京都は、たくさんの学生や世界中の観光客と出会うことができる憧れの地でした。思い返すと、昔も今も変わらず『人が好き』なんでしょうね」。


その後、父親が京都の酒造メーカーで営業マンをしていた影響もあり、同じ道を志した板東さん。奈良の酒蔵の営業マンとして約12年間勤務した後、ビール好きだったこと、そしてかねてより醸造に興味をもっていたことから、一念発起。クラフトビール業界に転身しました。

醸造所を立ち上げるにあたって、この地を選んだ理由は「木津川市の自然が育む地下水に惚れ込み、そして地元の人の温かさに触れたから」なのだそうです。


現在は、醸造家として営業マンとして、そして経営者として奮闘する日々を送る板東さん。
「こうして今、豊かな自然と温かい地元の方やお客さんに囲まれていると、自分らしく素直に生きられる。本当にありがたいですね。クラフトビールは始まってまだ歴史が浅いので、みんなで業界を盛り上げていこう!という機運があります。研修やイベントをきっかけに知り合った、気のあう醸造家たちとは今でも交流があり、時には助け合うこともありますよ」と語ります。

コトコト鍋で煮込み、ほぼ手作業でつくるビール


続いて、ピカピカの仕込み&醸造設備がずらりと並ぶ醸造所に案内してもらいました。

ビール醸造は製麦から始まり、仕込み、発酵、熟成、ろ過、瓶詰といった工程で作られ、ことことビールでは全体工程の9割以上が手作業とのこと。

「女性が活躍できる醸造所」を目指し、2023年7月から新たな体制として奥さんが醸造家としてデビュー。夫婦二人三脚で醸造に励みます。


ことことビールの仕込みは、ガスでコトコト鍋を煮る「鍋仕込み」。麦汁の温度が発酵の良し悪しを決めるため、繊細な温度調節が必要です。

「ガス火だとつきっきりで手間暇かかるのですが、そこを惜しまないことで、いい意味で味に変化がでます。それがよそにはマネできないうちにしか出せない味わいであり、クラフトビールの醍醐味かなと。日本酒の新酒とかワインのボジョレー・ヌーヴォーみたいに『なるほど!今回はこんな味わいに仕上がったんか!!』みたいなノリで、味も会話も楽しんでほしいです」。

おいしさの相乗効果!クラフトビール×料理のペアリング


「そのままでもおいしく飲んでいただけますが、うちでは、料理と一緒に楽しんでもらう食中酒としてのビールを追求しています」と、板東さん。特に、クラフトビールはもともと地ビールと言われていただけに、地酒と同じで、その土地のおいしいものと一緒に味わうのが理想的だといいます。

そんなことことビールのラインナップを、おすすめのペアリングとともに教えてもらいました。


写真左から圧倒的ホップ!IPA 、黄金色になれ!ピルスナー、漆黒のスタウト、GO!GO!ヴァイツェン(各770円)。

 

●圧倒的ホップ!IPA

たくさんのホップを使って、上品なコクと苦味を演出する贅沢なビール。

おすすめのペアリング:ソーセージ、餃子、スパイシーカレーなどパンチの効いた料理

 

●黄金色になれ!ピルスナー

麦汁の旨みとホップの軽やかな苦味が唯一無二の逸品。

おすすめのペアリング:オールマイティ(肉も魚も選ばない)

 

●漆黒のスタウト

飽きのこない味わいを目指した黒ビール。しっかりとした苦みとコクを実現。

おすすめのペアリング:ハンバーグ、すき焼き、鰹のたたき、チョコレート

 

●GO!GO!ヴァイツェン

白ビールならではの優しい味わいと繊細な泡立ちが特徴。

おすすめのペアリング:おでん・お寿司などの和食

 

「ビールと料理のペアリングをお客さんにも意識していただけるように、ボトルのラベルにおすすめのペアリングを書いています。この番号と色の組み合わせは競馬の枠の色と番号をイメージしたもの。ちょっとした遊び心を散りばめて、会話が広がるきっかけになればいいなと」と板東さん。

地域の特産品を活かした循環型のビール作り


ことことビールは、地域の特性を活かしたクラフトビール作りにも力を入れています。

こちらは、100%南山城村の茶葉を使ったビール「ひらけ!茶葉リッチ」(880円)。基本の4種類とデザインの雰囲気が違うのも、板東さんの遊び心から。40代以上の方ならご存じ!テレビでお馴染みのアレがモチーフです。


取材時にSOLD OUTだった山城産のブドウを使った「山城葡萄IPA」(880円)や大和郡山市のイチジクを使った「イチジクヴァイツェン」(880円)も同じく地域の特産品を活かしたもの。SDGsにも一役買った取り組みが行われています。

「麦芽カスを肥料として引き取ってもらっている農家さんから『傷や割れが原因で廃棄されるフルーツを有効活用してほしい』とのご相談からビールを作らせてもらいました。実はビールってどんな素材からでも作ることができるんですよ。コーヒー豆だってビールにできるんです」。


続けて、生き生きとした表情で今後の展望を語ってくれました。

「誰も挑戦したことがないユニークな素材で、お客さんをアッと驚かせるようなおいしいビールをたくさん作って、クラフトビール業界や木津川市を盛り上げていきたいですね。日本中の人に『ことことビール』を知っていただき、僕が作ったビールがきっかけで、木津川市に足を運んでもらい、訪ねてきてくれた人の思い出作りにつながるなら、こんなハッピーなことはありません」。


取材中、目の前をJRの電車が通過! 木津川市の穴場トレインビュースポットがここにありました。通過する電車は1時間に数本。電車とビールの写真がうまく撮れたら、とっても盛り上がります。こちらもぜひチャレンジしてみてください。

紹介情報

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