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京都で三代に渡り地域を支える「京たけのこ」と「こめ油」の小川食品工業
【長岡京市】「京たけのこ」の名産地・長岡京市で、生産者と消費者をつなげ魅力を伝える
ほのかな甘みと香り、白く柔らかくもしっかりとした食感、特有のえぐみが少ないのが特長の京たけのこ。名産地として存在するのは、約100万年前の粘土の柔らかい地層でできている「西山丘陵」です。京都市西京区、向日市、長岡京市、大山崎町にまたがる西山山地の麓に広がる小高い丘陵地になります。
その西山地域内、長岡京市に拠点を構えるのが「小川食品工業」です。「京たけのこ おがわ」の名前で知られている[たけのこ製品]の数々は、初代からの缶詰、水煮のパック、佃煮や竹の子ごはんの素に、通販のみで販売されている京都たけのこ懐石まで、多岐にわたります。
京たけのこの生産者の思い、料亭から一般の方々までの消費者のニーズにも応えようと志を持ち、創意工夫をしているのは現代表の3代目、小川修司(おがわしゅうじ)さんです。春が旬の京たけのこを通年で販売することの意義、そして、主力商品2本柱のもうひとつ「こめ油」についてもお話をお伺いしました。
たけのこ畑を持たずして地域に貢献したい思いを表した缶詰
京たけのこの名産地、長岡京市奥海印寺に生まれた創業者の小川吉太郎さんは、柳谷観音や近くの旅館などに野菜を届けるなどの商売をしながらも、地域名産の京たけのこに関わることがしたいと考えていたといいます。そんな時に、同地域に住むたけのこ畑を持つ方々から「大豊作で値崩れした」「売れ残る」ということを聞き、旬の京たけのこを缶詰にすることを考えついたそうです。
「京たけのこの生産者は、親竹の選定から1年間かけて土地を整えて、春の収穫期から来年の収穫期まで休むことなく竹林に通って、向き合っていらっしゃいます。日本唯一の手間暇のかかる伝統栽培法で、他とは違うおいしさがある京たけのこ。昔からずっと続けてきていることとはいえ、なかなか大変な作業ですよ。だからこそ祖父は、手塩にかけて育てているのにもったいないと、保存できる缶詰に加工することで農家さんを応援できると考えたんだと思います」と、小川さん。
現在は、畑を持ちたけのこの生産も行う小川食品工業は、栽培することで見えてくることもあり、365日休む暇もなく畑に通う生産者の方々の思いがわかる会社へ。だからこそ貴重で希少な京たけのこを大事に思い、未来につなげたいと考えていらっしゃいます。
小川さんは「世話ができている畑が、まだまだあります。京都のたけのこは、地面のひび割れを見つけて、その下にあるたけのこを掘って収穫します。ひび割れで掘ったたけのこは、白く価格も高く販売できます。そして、地面から頭を出したたけのは、皮が黒くなっているので、さほど高くは売れませんが、見た目だけで味わいは変わらないので、缶詰にしています」。
料亭といった飲食店に販売される京たけのこの缶詰は一斗缶(18リットル缶)で、100種類以上あるそうです。かなり細かな種類分けで、サイズ、グレードなどはもちろん、例えば竹冠に旬(※1)の「筍」という漢字が象徴するとおり、たけのこの旬は10日間です。最もおいしい旬の時期と言われるのは10日間ですが、収穫が始まってから、3月下旬、4月上旬、中旬と、それぞれの期間毎に種類分けがされているといいます。
※1 旬=時間の単位の1つで10日間の意がある
缶詰は柔らかさを大事に。鮮度が高いのはマスト
小川食品工業の京たけのこの缶詰が人気の理由。それは、朝掘りしたたけのこを、その日中に処理をすることにあります。小川さんは「鮮度はとても大事です。特にこだわっているのは、その日中ということ。農家の皆さんが今朝掘って持ってこられた京たけのこは、絶対今日中に処理をすると決めています。また、形も当然大事ですが、それよりも大小なく1つの缶に同じサイズを入れること。そして、切った時に歯ごたえ良く、柔らかさを考えて加工をしています」。
日本唯一のたけのこの高温殺菌や特殊冷凍
味が落ちるのではなく、味をキープする缶詰にすることに長年取り組んでこられた小川さん。製造工程の中で、pH値を4.5に下げる乳酸発酵工程があり、それにより簡易殺菌が可能になりますが、生のたけのこに比べて酸っぱくて缶詰独特の味になっていました。「よりおいしく保存するにはpH値を下げないこと」と、研究を続けて、高温殺菌製法にたどりつかれました。そして、酸味のない良い香りの「たけのこの水煮パック」が出来上がったと言います。
3代目の小川さんは、大学で食品製造技術を学び、「西山丘陵で育てられている日本一のたけのこを、京都だけでなく日本中の皆さんに知っていただきたい」と販路を拡大してきた人です。おいしさに繋がるドイツ製のレトルト高温殺菌機を設置したこともその一つで、試作を重ね商品として登場している「京の春筍」があります。厳選されたたけのこを、京仕立てのあっさりとした薄味で上品に仕上げています。
また、佃煮もあります。たけのこに山椒を入れて時間をかけて炊き上げたお惣菜、昆布とともに炊いた筍昆布なども味わい深く、京たけのこに椎茸やしめじを加えたお茶漬の素。竹をイメージしたパッケージも人気の竹の子ごはんの素もあり、ふるさと納税の返礼品になっています。
レトルト高温殺菌機を使い、真空パックをするだけでもリピーターが増えるほどおいしいのですが、やはり地元で最高のたけのこを食べてきた小川さんは「掘りたて茹でたての食感、旬のたけのこのおいしさを1年中楽しむことは出来ないか」と考え、冷凍に目をつけました。水分をたくさん含んでいる京たけのこ。本来、冷凍には向かない食材のように思いますが、研究を重ねさまざまな人から話も聞き、たどり着いたのがある冷凍装置でした。かなり特殊で高額なものでも、小川さんは「思いが叶うなら」と導入。ようやく念願の掘りたて湯がきたて、旬の時期の食感に一番近い「冷凍京たけのこ水煮」が完成したといいます。
さらに調理をした商品を開発されました。それが「冷凍京たけのこ懐石 京笋(きょうたかうな)」です。お刺身・前菜・お椀物・煮物・ご飯・つくだ煮・甘味の7品を、家で温めるだけで味わえる京の春の味。時代を反映した通販で買えて、少し贅沢気分が味わえる懐石料理になります。
地域に根付いた食用油「菜種油」から「こめ油」へ
京たけのこのは、早くて3月末から4月、5月上旬までです。1年は長いですから、たけのこの時期以外にも、何かないかと思っていたといいます。
小川さんは「もともと奥海印寺周辺では、戦前から菜種が栽培されていて、菜種油を搾っていました。時代を経て、菜種から米ぬかへ。日本人の主食はお米であるということから、精米後の米ぬかを原料にした[こめ油]を搾るようになったんですね。それを会社として取り入れていくことにしたのが、今から60年以上前のことになります」。
小川家の仕事として昭和2(1927)年から缶詰事業を開始して、昭和35(1960)年から本格的に取り組んだ「こめ油」事業をして、小川食品工業が創立されました。
こめ油は、加熱しても安定している性質があるので、家庭での食用油、お菓子の揚げ油などに利用されています。またここ数年、ビタミンEもたっぷり含んでいる油として、抗酸化力の強い成分オリザノールという物質が含まれていることもあり注目されているといいます。
「現代では、機能性表示食品として認められる食用油もあって、それが売れるという日本の文化がありますから、こめ油もだんだん浸透していくといいなと思っています。しかし、最近は原料となる米ぬかが手に入りにくくなっています。パンもあればパスタ、うどんもありますし、お米が主食の日本ですが、お米離れをしているようにも思います。日本の歴史を考えると、お米はいいと思うんですけどね」と、小川さん。
祖父の時代から、地域を支えてきた「京たけのこ」、地域で食されてきた「食用油」に関わることで地元への貢献をしてきた会社としての誇りがあると話す小川さん。今、できることは「農家の方々と一般消費者との懸け橋をすること」。何よりも、日本一の京たけのこのおいしさを全国へ、世界へ伝えることが大切だと話します。
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