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脂身が甘くやわらか肉質の「京丹波ぽーく」が
購入&イートインできるファーマーズストア
【京丹波町】
豚肉のおいしさにこだわり、独自配合の飼料で育てる岸本畜産
たんぱく質やビタミンB1が豊富に含まれている豚肉は、よく料理に使われるお馴染みのお肉。そんな親しみある豚肉のおいしさを第一に考え、約10年かけて自社ブランド豚「京丹波ぽーく」をつくり上げた岸本畜産。
代表の岸本大地さんは、脂身が甘く、柔らかい肉質の「京丹波ぽーく」を一人でも多くの方に食べてもらいたいと、2020年9月に念願だった直売所「京丹波ファーマーズストアPiglet’s(ピグレッツ)」をオープンされました。店舗には自社で飼育・生産された「京丹波ぽーく」やオリジナル加工品、地元産野菜などが並びます。また、完全予約制のイートインも併設されているので、「京丹波ぽーく」をその場で味わうこともできます。
今回は、岸本さんに自社ブランド豚をどのような思いで育てておられているのか、食に対する思いについてお聞きしました。
祖父の代から続く養豚農家
現在、岸本畜産は銘柄豚 「京都ぽーく(三元豚)」と、自社ブランド豚 「京丹波ぽーく(デュロック種)」の生産・販売をしていますが、最初は岸本さんの祖父が戦後、蒲生野開拓に入植されたことからはじまります。
「祖父母は農業と畜産(酪農・養豚・養鶏)で小規模農家をしていましたが、1977年に2代目となる父が継いでからは養豚一本に絞り、子豚生産農場として母豚8頭からスタートさせました。少し補足すると、養豚経営は大きく分けて、子豚を育て子豚を市場に出す農家と食用の肉豚まで行う農家があるのですが、父は前者の農家でした。
ですが、将来の経営的なことを考え1985年に、母豚が産んだ子豚の飼育から出荷まで行う一貫経営にシフトさせました。父と母は豚の数を増やしながら、豚肉の品質にも気を配り懸命に励んだと聞いています。」
さらに先代は「口に入れるものなので、安心と安全は当たり前。おいしくないとあかん」という信念のもと、豚肉のおいしさを追求し情熱を注がれたそうです。それが「京丹波ぽーく」の生産につながり、2012年に商標登録し自社ブランド豚が誕生しました。
先代が亡くなった後はお母様が代表となり、現在は息子の岸本大地さんと美幸さんご夫婦が継いでいます。
味も肉質も優れた「京丹波ぽーく」
約10年かけてつくられた自社ブランド「京丹波ぽーく」は、発育良好で肉付きの良いデュロック種を基に、優良な系統豚を組み合わせた独自の純粋交配により銘柄化されました。
「特徴は、柔らかくひきしまったジューシーな肉質と甘みのある脂質をもつ豚肉です。おいしい肉を自信をもって出荷するためには、通常より長い出荷日齢や出荷時体重の目安など、独自に定めた飼養管理のルールに基づき日々取り組んでいます。その中でも、肉質や味を左右する飼料は特にこだわってますね。何しろ、飼料が1%違うだけで肉のサシに影響してしまうんです。
肉質をよくするために大麦を配合した飼料を給餌しますが、この中には菓子も含ませています。実は菓子には酸化しにくい油が使われているからなんです。酸化した油を与えるとくさみの原因になってしまうんですよ。
肥育の後期にあたる仕上げ期間には、灰汁が出ないようにするために動物性たんぱく質を与えずに大豆など植物性たんぱく質にしています。また、この時期は食の安全と健康面を考えて抗生物質を一切使用していません。
飼料の中身は先代が考案したものをベースに、いろいろ組み直した内容のものにしています。」
岸本さんの努力が実り、東京ビックサイトで行われた食肉産業展2018年「第16回銘柄ポーク好感度コンテスト」では、最優秀賞を受賞されました。審査は、同展に訪れた来場者が見た目、食感、食味について投票した結果によるもので、大勢の人から一番支持されたということになります。
念願だった畜産農家運営のファーマーズストアをオープン
2020年9月、直売所「京丹波ファーマーズストアPigle's(ピグレッツ)」をオープンされました。
「自分たちが丹精込めて育てた自慢の豚肉を直にお客様の元に届けたい、とずっと思っていたんですよ」と岸本さん。
店舗には「京丹波ぽーく」の精肉をはじめ、オリジナル加工品や、肉と一緒に楽しめる地元農家直送の旬野菜や玉子などが並びます。時期によっては、ねっとり濃厚なバターナッツというかぼちゃや、カラフルなナスなど珍しい野菜にもお目にかかれるそうです。
店を切り盛りするのは、妻の岸本美幸さん。
これまで4人のお子様を育てながら養豚の仕事をされていましたが、ファーマーズストアを開いてからは店舗運営の責任者を務めています。
お客様から好評なオリジナル加工品「ざぶとん(粗挽きステーキ)」は美幸さんの手によるものです。
「これは、粗挽きにしたミンチにスパイスで味付けしてボイルしたもので、プレーンのほかに柚子味、京丹波町産のハバネロを加えた辛系の3種類を用意しています。焼肉用のお肉とセットで購入される方が多いですね。」
店内には、完全予約制の飲食スペースが併設されています。イートインを設けられたのは「お客様の食べた時の顔が見たいから」だそうです。
よく注文されるのは肉4種盛り、カットされたざぶとん、ウインナー、野菜盛りがつく「お得セット(3人前)」3300円。その後にホルモンなど単品を追加されることが多いとか。
「実は私自身、ずっと豚肉はくさみが苦手で食べられませんでした。でも、先代にうちの豚は大丈夫やと言われて、恐る恐る口に入れてみるとおいしいやん、と思ったんです。あの時は本当にびっくりしました。でも、食べられるのはうちの豚肉だけなんですけどね。だからお客様から『なんでここの豚は甘いんや?』や『ここの豚肉食べたら、よそのが食べられへんわ』とよく言われるのですが、すごく気持ちがわかります(笑)。」
近頃、脂身が嫌われていますが、脂身には飼育の過程で食べた飼料の質が、はっきりと出ると言われています。うちは、くどくなく旨みのある脂身を目指し仕上げているので、白身の肉と思って味わっていただければ嬉しいです。」
生産者から発信、地産地消を目指す
先代の思いを大切にしながら日々奮闘されている岸本さんですが、輸入豚肉の流通や跡継ぎ問題など養豚農家を取り巻く環境は、決してやさしいとはいえない状況のようです。
「正直厳しいですが、今よりも利益を出すために、効率重視で規模を拡大させていこうとは考えていません。これまで同様に家族経営で小規模農家のままやっていくつもりです。手を広げてしまうと、どうしても品質よりも経済優先になってしまうのではないかと思うので。」
「ありがたいことに、飲食店の方からご連絡をいただくことが多いです。ただ、懸命に育てた豚ですので、必ず面談をして、ちゃんとクオリティの良さをわかっている方だけに使っていただくようにしています。」
「京丹波ぽーく」は京都府内の飲食店へは卸されていますが、精肉を購入できるのはこちらの直売所と地元スーパー、道の駅の3店舗のみだそうです。その理由について岸本さんは、
「京都市内ばかりに上質な素材が流れていってほしくないんです。生産地である場所にもたくさんの人に来てもらい、そこで食べてほしい。そのためには、生産者もSNSを使って、自ら生産したものを発信していく必要があると考えています。ですが、ひとつの農家だけでは限界があると思うんです。飲食業界はもちろんですが、それ以外の分野の方とも連携しながら、横のつながりやネットワークを活かして地域を活性化させていきたいですね。」
大勢の方においしい豚肉を食べてもらうためには、地域のフェスティバルへの参加や魅力あるイベント開催など、自らPRしていく必要があるという岸本さん。年に何度かは、スケーターによるデモンストレーションやコンサート、キッチンカー、屋台など楽しい催しを行っておられます。
日々、「おいしさという幸せ」をたくさんの方に届けられるように、また地元が元気になるために日々力を尽くされています。
紹介情報
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岸本畜産
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