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わざわざ行きたくなる京都のコーヒー焙煎所〜大山崎 COFFEE ROASTERS〜

【大山崎町】
わざわざ行きたくなる京都のコーヒー焙煎所〜大山崎 COFFEE ROASTERS〜

東京から大山崎町に移住してきた夫婦が営むコーヒー焙煎所

京の都の玄関口として知られる、大阪府との県境にある大山崎町。「天下分け目の戦い」があった勇ましい歴史とは相反して、今は天王山の豊かな自然に囲まれた、やさしい空気が流れています。

この町に惹かれ住みたいと移住。そして、コーヒー焙煎所を開いたのが「大山崎 COFFEE ROASTERS」の中村まゆみさんと中村佳太(けいた)さんです。それまで住んでいた東京で、改めて暮らし方を考え、おいしいコーヒーを伝えたい思いを募らせた二人が選んだのは、居心地の良い町で自分らしい暮らしをすることでした。

東日本大震災のあった翌年から大山崎町に移り住み、人々との交流を大切にした焙煎所とともに、落ち着いた時間を過ごしている、まゆみさんと佳太さん。コーヒーのこと、そして、暮らしのことをお聞きしました。


決め手はJR山崎駅周辺の雰囲気。全国を旅して見つけた大山崎町の魅力

東京で会社員として生活をする中、最先端のスペシャルティコーヒーに触れたことをきっかけに、香り高いおいしいコーヒーを追求することを考えた二人。そのためにも、まずは生活のベースをつくることが大切だと考えて移住することにしました。終の棲家に値する場所を探そうと、1年間という期限を決めてさまざまな地方を旅されました。そして、そろそろ決定をしないと引越しができないという時間が迫る頃に、京都育ちのまゆみさんが気になっていた大山崎町を訪ねたといいます。

 

「訪れた時のJR山崎駅周辺の雰囲気に惹かれました」と話すまゆみさんは、その駅を降りた瞬間、ビルやマンションなど高い建物がなく、山がすぐそばにある空間に魅力を感じました。住む場所を探す条件が、車を持たずにコンパクトに生活できる、田舎過ぎない都市だった二人。地方に行けば行くほど土地が広くて車生活が必須になるのでは意味がなく、そういうことでも大山崎町は、自然が豊かで近くに駅もあるので選んだそうです。



移住したのは2012年のこと。そして、翌年にコーヒー豆のネットショップを開設され、2014年には、焙煎所に併設したコーヒー豆の販売・受渡所をオープンされています。その中で気づかれたのは、人の優しさでした。町の人と交流が生まれ、コミュニティの良さを実感されています。「突然、町に移住してきてお店を始めたら、誰?何のお店?と、普通は驚かれて一線を引かれると思うのですが、皆さん興味を持って接して下さって、とても温かい方々なんです。」と、まゆみさんは話します。



挽き売りはせず、シングルオリジンの高品質コーヒー豆のみを販売

「大山崎 COFFEE ROASTERS」は、シングルオリジンの高品質コーヒー豆を厳選して、焙煎後3日以内の豆のみを販売しています。ブレンドはありません。そして挽き売りはしていません。だからこそ、香り高く鮮度の高いコーヒーのおいしさに、誰もが気づくことができます。

 

「豆を粉にしてしまった瞬間から香りが飛んで味が変わります。豆のまま保管すれば、2週間から3週間は、おいしさが持続できるので、飲む前に挽いて下さいというアナウンスをして販売しています」と佳太さん。国内のスペシャルティコーヒー専用業者から生豆を仕入れ、温度と湿度管理に気を遣い、生豆の状態変化をさせないことを考えられてます。焙煎は、豆の状態が重要になるので湿度が高い日に焼くのか低い日に焼くのか、真夏と真冬では豆の状態が変わるので、その辺は常に気にはしているそう。焙煎機も夏と冬では余熱にかかる時間が違うので、気遣うことはいろいろあるそうです。



焙煎の度合いは、浅煎りで3段階、スタンダードな[ミディアム]、中浅煎りの[ハイ]、極浅煎りの[シナモンロースト]。深煎りで3段階、極深煎りの[フレンチロースト]、スタンダードな[フルシティー]、中深煎りの[シティー]。浅煎りは酸味のあるタイプで、深煎りは酸味がなくなり苦味が楽しめるタイプの味わいです。

 

「うちの特長としては、時間をかけて焼くことがあります。例えば、標準的な焙煎度合い、ちょっと深煎りくらいにした時なら、日本の焙煎所でスタンダードな焙煎度合いが123分で焼き上げるのが標準だとすると、うちはその倍以上かけているんです。場合によっては30分くらいの長時間をかけて、ふんわり焼くのが好きで。そうすると結構豆の状態に左右されずにムラなく焼けて、おいしさを引き出すことができます。」と佳太さん。火をしっかり通すけど焦がすのではなく、弱火低温で長時間焼くというやり方は、あまり使われてない熱風式の焙煎機を使うからできることだといいます。



新しく仕入れた豆の場合は、おいしくなる焙煎度合いをチェック。どの焙煎がぴったりくるのかと6段階の焙煎をして味見し、二人で「この辺りだね」と決めるとのこと。現在は、15種類くらいある中から、毎週10種類くらいが入れ替わりで登場しています。もちろん通信販売もあり、焙煎度合いだけでなく[焼き栗、オレンジ、ほのかなたまり醤油の味わい]といったテイストノートを読むのも味わいの想像が膨らみます。

 

焙煎所を開放して販売するのは、木曜日と土曜日の2日間のみ。焙煎度合いやテイストノートもメニュー表に書かれていて、まゆみさんも佳太さんも、コーヒーのことをわかりやすく誠実に教えてくれます。例えば、同じ浅煎りでも酸味が立ちづらい味わいに焼く、酸味はあるけどマイルドに焼くなど、単に浅煎りと呼ばれる焙煎の方法でも、焙煎所により異なることなど、コーヒーの深い話を聞くと、より世界が広がり発見ある時間になります。



焙煎は水曜日から始めて土曜日までで、焙煎後3日間の豆を売るのが基本スタイル。マルシェなどがある場合は別ですが、販売を木・土曜の各日10時から15時の2日間で終えて、日曜日から火曜日をお休みにするサイクルを作ります。二人は、移住してこの仕事を始める前にさまざまな話し合いをしたそうです。

 

「移住をしたことは、まず自分達の生活拠点を作るというところ。仕事よりは自分達が生活をするのに居心地が良いことを考えました。もともと別々の仕事をしていて、二人で一緒に何か自分達のペースでできる仕事をしたいね、というところから。東京だと時間の感覚が早すぎるので、もう少しゆったりしたところでスタートを切ろうと。今も変わらず無理せず自分達のペースで生活できることは、とても重要なことです。」と、まゆみさんは話し、そのスタイルがあるからこそ、良い仕事・良い焙煎ができるといいます。



コーヒーの楽しみ方は人それぞれ

提供する珈琲豆を購入する方は、カフェで使われたりお家で楽しまれたり。それぞれ好きな豆を買われています。もともとコーヒー好きな二人に、その楽しみ方を聞いてみると、まゆみさんは「大山崎 COFFEE ROASTERS」のシナモンローストにしたエクアドルと、パンとサラダの朝食を組み合わせて味わうのが、今の楽しみと言います。コーヒー単体の味はもちろんお好きだそうですが、コーヒーと何かを食べ合わせた時に生まれるいわゆるマリアージュみたいな楽しみ方がお好きだそう。また、佳太さんは、コーヒーを飲むことはもちろん、今は淹れるのが楽しみとだと話します。



ご自身で豆を挽くスタイルの「大山崎 COFFEE ROASTERS」。個人で買って帰り豆を挽いた時、豆が割れた瞬間の香りは幸せを感じます。新鮮で香りの高いコーヒーを飲む時間はもちろんですが、豆を挽いた時にしか感じられない、あの感覚。挽き立て淹れたてのコーヒーは格別です。焙煎所がオープンしている2日間の店内空間には、焼いた珈琲豆の香りが常にしているのもこちらならでは。営業中にずっと焙煎をされているからこそです。



通信版売でお願いすることから始めてもいいのですが、できれば一度は足を運んで焙煎所へ。大山崎町というゆるやかな時の流れと自然がせまる風景を楽しみながら、コーヒー豆を買いに行く贅沢な時間を過ごすと、よりコーヒーを好きになれるはずです。

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