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京都の食文化に合う「丹波ワイン」をつくり続ける京丹波町の里山ワイナリー
【京丹波町】「ジャパン ワイン チャレンジ」でも受賞したワインづくりの秘密
日本ワインの産地といえば山梨、長野などを思い浮かべますが、実は京丹波で40年前からブドウづくりに目を向けてワインづくりをしている、ワイナリーがあります。
自社農園には約50種類の醸造用品種が栽培され、この土地に最適なブドウの品種を見つけるため日々努力を重ねられています。醸造においても常に創意工夫を行い、新たな挑戦にも取り組まれてい[[丹波ワイン]。
今回は美しい山と水に恵まれた里山で丁寧に作られているワインについて、特徴やこだわりを丹波ワイン株式会社取締役・黒井仁吉さんにお聞きしました。
「京都の食文化に合うワインづくり」をめざして
京丹波は京都市街から北西へ約40kmの位置にあり、昔から京都の食材を数多く産出する「食の宝庫」として知られています。京都盆地の気候と日本海側気候のちょうど狭間にあり、昼と夜の気温差がとても大きい地域です。糖度の上がる果実にとって、この気温の差が大きいほど品質の良いものができるといわれています。
そんなワインづくりに適した場所、京丹波で[丹波ワイン]は創業者の黒井哲夫さんの強い思いにより、1979年に誕生しました。先代の思いは「京都の食文化に合うワインつくる」こと。洋食に合う個性の強いものというより、和食と相性がよいワインにするため、料理とのバランスを考えつくられています。
創業者の熱意とスタッフの努力が実を結び、1984年以来、6年連続でモンドセレクション金賞をはじめ、数多くの大会で賞を受賞され国内外で評価されているワイナリー。
敷地内には、醸造所や18,000坪の広大なブドウ農園のほかに、自社で醸造した多種多様な20種類以上のワインが並ぶショップがありレストランも併設されています。試飲もできるのも嬉しいところです。
良質のブドウこそがおいしいワインの基本
ワインの醸造で使用するのは原料であるブドウのみ。アルコール飲料の中で唯一、水を加えないお酒だそうです。それだけに、ブドウの品質がワインの味に大きく影響を及ぼすといえます。
ブドウの個性を見極めず、醸造技術を駆使してでき上がったワインは、本来の地ワインの姿とはいえず、その土地の環境で健全に育ったブドウの特徴を活かしてこそ地ワインと呼べる、とのこと。
畑はエリアごとに分けて、それぞれ最適な品種が植え付けられ、除草剤を使用しない自然循環型の草生栽培で育てられています。ブドウに栄養分が必要となるタイミングで草を刈り、土に混ぜ込み、有機肥料として活用。搾汁した後のブドウの皮や種を施肥にするなどサスティナブルな方法で行われています。
ブドウの栽培は、ほとんどの生産者が苗木を購入することが多いなか、こちらではすべて自社で苗木をつくっています。大切なブドウの生育は最初から最後まで手を抜くことはありません。
栽培しているブドウの品種は約50種類。創業当時から試行錯誤、試験栽培を重ねた結果、今では西日本最多の品種栽培ワイナリーとなりました。ですが、実際にワインまで仕上げているのはわずか10種類程度で、大部分が将来に向けての試験栽培用の品種だそう。
収穫は8月中旬から10月下旬まで。品種によって時期はまちまちで、この期間、農園責任者は天気予報を確認しながらブドウの糖度と酸度、旨みをチェックします。
ベストなタイミングで収穫するには、雨風による影響を見定め予測しなければなりません。まさに自然との闘いともいえます。収穫はすべて手摘みのため、台風前などにはスタッフ総出で収穫されるそうです。
ビールに代わる!?大人気の微発泡にごりワイン「てぐみ」の誕生
創業者の思いであり、ワイナリーのコンセプトになっている「日本の食文化に合うワイン」になるよう、雑味が少なく旨みの強いワインが醸造される一方、自由で独創的なワインも世に送り出しています。
その代表が、亜硫酸塩無添加の微発泡のにごりワイン「てぐみ」です。
居酒屋で交わされる「とりあえずビール」に取って変わり、「飲みやすいけれどしっかりしたワインができないものか?」「乾杯から楽しめるワインをつくりたい!」そんな思いから試行錯誤を繰り返しながら2年がかりでできあがったスパークリングワインです。
ワイン専用のブドウではないデラウェアを使用。独特の香りがあるデラウェアをワインにするときは甘い味わいにすることが多い品種でしたが、発酵途中で瓶詰めすることで、酵母がデラウェアの香りを消し、甘くなりすぎないそうです。ですが、狙いどおりのガス圧でボトリングするのはかなり難しかったといいます。苦労の甲斐あって、できあがった「てぐみ」は甘い果実香に、まるでクラフトビールを感じさせる酵母の香りで、すっきりとした飲み口、しかもお手頃価格とあって大人気の商品となりました。
最初のヴィンテージはタンクから1本1本手作業で瓶詰を行っていたので「てぐみ」という名前がつけられました。
また、一般的には瓶詰の前に行う、ろ過の工程をあえてしない、無ろ過のワインも手がけられています。
「ろ過せずに上澄みだけをボトリングしたワインは、固形成分と液体とが交じり合い、透明ではなくにごりっぽく見えます。ですが、この固形物の成分にこそ、アミノ酸などの旨み成分が含まれているので、凝縮感と複雑味を帯びた味わいが楽しめるわけなんです」
ほかにも、日本での栽培が非常に少ない希少品種を使用した「京丹後産サペラヴィ」や、色合いからオレンジワインとも呼ばれる「デラ・グリ」など個性が光るワインもつくられています。
さらに、2021年はワインの世界大会に挑戦。見事、3つのアイテムが「ジャパン ワイン チャレンジ2021」で銅賞を受賞されました。
受賞したのは、先ほどご紹介した「てぐみ 白」、「京都丹波ソーヴィニヨン・ブラン2020」、長野県産のブドウを使った「須坂産メルロー 2015」。
大会には世界28カ国から1100点を超す出品があったそうで、そのなかから見事、栄光に輝きました。
ワインづくりを永遠に…SDGsへの取り組み
ワインづくりを含め、食品を扱う産業はサービス業も含めてすべて農業という考えのもと、自然と共存しながらより良質なワインをつくることも大切にされています。
「おいしいワインづくりを続けるために、恵みをもたらしてくれる自然に感謝しつつ、かけがえのない地球環境についても配慮する必要があります。また、継続的な地域の発展と人材の育成、環境保全にも取り組んでいきたいと考えています」
そのなかの一つが地元の須知高校との商品共同開発です。
2021年の春から初夏にかけて、丹波ワインを使って食品科学科の生徒がつくったジェラートがワイナリーショップで販売されました。ほかにも、さけるチーズ(プレーン・スモーク)、ミニモッツァレラのさけるチーズ(スモーク)、高校で栽培した小麦を全粒粉にしたクラッカーが店頭に並びました。さけるチーズのスモークタイプはワイン樽チップが使われたそうです。
現在、開発がすすめられているのは、赤ワインと相性のよいウォッシュチーズ。
このチーズは、熟成過程で塩水やその土地の酒を定期的に吹き付けながら熟成させますが、この吹き付けに使われているのが丹波ワインです。
「これからも、ワインを通じて地域に貢献していくと同時に、もっと大勢の方に丹波産のワインを味わっていただきたいので、自社畑で育ったブドウがもっと多く収穫できるよう、励んでいきたいと思っています」
人の手によってブドウが栽培され醸造されるワインですが、それだけではなく、長い時間かけてその土地や気候により育まれた環境によって生み出されるもの…、と今回お話を伺い、また、ブドウ農園や醸造所を目にする機会に恵まれたおかげで、深く感じることができました。
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