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地域のアクション

〈竹の里・乙訓 伊藤貫仁さん〉 ホテルから長岡京の魅力を発信
竹を主軸とした体験づくり パワーアップする、“外”からの視点で見つけた街の底力

2021/03/03

map_take.png 竹の里・乙訓

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京都市西京区の南隣に位置する京都府長岡京市に、2019年9月、「ホテルディスカバー京都 長岡京」が開業しました。日本初となる5階建て木造ホテルでは、長岡京の伝統や文化体験のほか、宿泊者以外との交流など、知的好奇心を刺激するプログラムに誰でも参加できるとあって注目されています。

この体験型宿泊施設が京都市内ではなく、長岡京市にオープンした背景には、同市の観光を盛り上げようと取り組む仕掛け人であり、ホテルディスカバー京都 長岡京の支配人でもある伊藤貫仁さんの存在がありました。

このホテルに携わるために静岡から越してきたという伊藤さんに、ホテルや長岡京への想いを伺いました。

写真:ホテルディスカバー京都 長岡京 支配人 伊藤貫仁さん

—長岡京の魅力に触れるホテル

関西の私鉄・阪急電鉄「長岡天神駅」の目の前に構える「ホテルディスカバー京都 長岡京」は、「体験」と「交流」を目的とした新しいコンセプトのホテルです。

ホテルでは、長岡京名産の竹を使用した、職人による竹細工体験「竹かご造り体験」や、刀匠が工房で日本刀づくりを教えてくれる「刀鍛治体験」など、本場の職人から学べるこだわりの文化体験プログラムを用意しています。

加えて、一般開放している施設の1階のカフェバー「まちバルSUBACO」では、ランチからバータイムまで、1日を通して宿泊者と宿泊者以外の人々が自由に交流できる場を提供。長岡京名物のたけのこを使った人気メニュー「たけのことひき肉のピッツァ」や、地元の養鶏場から取り寄せる卵で味わう「SUBACO 名物卵かけご飯」など、地元の食材にこだわったオリジナルメニューが、人々のふれ合いを盛り立てています。

開業当初は外国人観光客を対象にしていましたが、長岡京の魅力を日本人にも知ってもらうべくターゲットを拡大したそうです。宿泊するだけでなく、泊まったうえで楽しめるコンテンツを備えたホテルは、コロナ禍でも高い宿泊率を維持しています。

—ホテルが長岡京の魅力を発信するきっかけに

このホテルがオープンした背景には「長岡京市を観光で盛り上げたい」という、長岡京市長と、同ホテルを建設した住宅建設業者「リヴ」の代表・波夛野賢さんの思いがありました。

京都は全国有数の観光資源の宝庫です。2017年に長岡京市が発表した「新・長岡京市観光戦略プラン」(※1)によると、京都市内では1人あたりの観光消費額が約17,000円であるのに対し、長岡京市での観光消費額はわずか400円台と、京都府内の他の市(京都市以外)と比べても観光消費額は1/4以下に留まっています。

https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/cmsfiles/contents/0000006/6522/shinsenryakupuran.pdf

この状況を打破するためのきっかけづくりに建てられたのが「ホテルディスカバー京都 長岡京」というわけです。そして同ホテルの運営を任されたのが、府外で数々のコンセプトシェアハウスをプロデュースしてきた「彩ファクトリー」の代表・内野 匡裕さんと、静岡県で人気のラグジュアリーホテルの支配人を務めていた伊藤貫仁さんです。

内野さんはプロデューサーとして、伊藤さんは同ホテルの支配人として就任。“外”からの視点で同市の観光資源を掘り起こし、「長岡京は観光が少ない」イメージから「長岡京は魅力的な街」へと変えるための“魅力さがし”がスタートしました。

—“外からの視点”が眠っていた長岡京の魅力を呼び覚ます

プロジェクトの主軸の一つが、長岡京に縁のある名産物・文化・芸術を体験するプログラムです。「長岡京市名産の竹を使った、職人による体験講座が最初に思い浮かびました。長岡京といえば、竹は外せません。ですから必ず実施したいと思っていました」と伊藤さん。

写真提供:ディスカバー京都 長岡京

企画を実現するには職人の協力が不可欠です。しかし内野さんや伊藤さんは、地元の人々からすれば“よそ者”です。「どの職人さんも地元でプロフェッショナルなお仕事をされています。そのような方々からすれば、何者かわからない人間がいきなりお願いしても“体験プログラムなんて”という感情もあったと思います」と、伊藤さんは当時を振り返ります。

たとえ門前払いされても、このプロジェクトが長岡京市を盛り上げるに違いない、と確たる想いを抱いていた2人。「職人さんの技術や名産品の素晴らしさをなんとかして伝えたかったんです。そのためには、プロジェクトを開始した時から、地道に職人さんたちと関係を築いていくしかないと考えました」。

そんな時、地元の商工会や市の商工観光課が「街の発展のためなら」と職人との橋渡しに協力してくれたことで、関係の構築に成功。市も巻き込みながら、体験プログラムの実施にこぎつけます。

長岡京名産の竹で作られたグッズもホテルで販売

実際に講座を始めてみると、観光客からは「職人さんから直に教えてもらえるなんて滅多にないこと。貴重な体験ができてよかった」「夢中になるほど楽しくてあっという間だった」といった好評の声が上がっています。

それだけでなく、職人からも喜びの声が届いたそう。「普段は接する機会のない観光客との交流が新鮮だったようです。また『プロから問われるような深い質問を聞いてくれて嬉しい』との反響もありました。職人さんには当たり前の技術も、観光客からすれば驚きの連続だったりするので、双方が充実した時間を過ごせています」と、伊藤さんは話します。

また外国人観光客の場合は、英語ができるスタッフが職人との間に入るため、英語が苦手な職人も抵抗なく講師を務めているそうです。

—長岡京の観光コンテンツをさらに深く掘り下げていく

体験を通じて長岡京の魅力を広く伝え続けている伊藤さんは、体験講座をスタートした今でも、新たな職人さんとのコネクションを常に探しているとのこと。「特別なスキルを持っている人と今後もどんどん繋がっていきたいですね。そして、このホテルが地域発展の中心地になるように、宿泊者と宿泊者以外の人々の交流、情報発信をパワーアップさせたい」と熱く語っていました。

ともすれば「交流」や「魅力発信」と「ホテル」の関係性は見えにくいかもしれません。しかしホテルは本来、様々な人が集まり、ともに同じ時間を過ごす場所です。人が自然と集まる場所には交流ができ、情報を外へ発信する力が生まれるもの。であるなら、長岡京の新たな魅力を発見(ディスカバー)できるこのホテルは、地域の発展を担う大きな存在になっていくに違いありません。

ホテルディスカバー京都長岡京

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