食らし旅

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地域のアクション

〈海の京都 松山義宗さん〉 鬼にまつわる不思議な話が伝わる
まぼろしの薦池(こもいけ)大納言
伊根の農村を元気にするため力を尽くす

2021/03/03

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湾を囲む舟屋の景観で知られるようになった伊根町ですが、周辺部にも足を伸ばせば意外な魅力を発見できます。最古の浦島伝説が伝わる神社や、鬼伝説にまつわる薦池大納言はそのひとつ。京野菜や筒川そばなど、地域ならではの美味にも出会えますよ。

—この土地でしか育たない不思議な小豆

まぼろしの小豆、薦池(こもいけ)大納言を知っていますか?
小豆のうちでも大納言とは、大粒で煮ても皮が破れにくい品種をさしますが、薦池大納言は普通の小豆と比べて約2倍、丹波大納言の約1.5倍の大きさがあり、その違いは歴然。香りが高く、アクが出ないでふっくらと炊き上がるのも特徴です。

まぼろしと言われるわけは、生産量が少なく一般にはほとんど流通しないため。なぜか伊根町の薦池地区でしか生産できず、ほかの土地で栽培しても翌年タネをまくと普通の大きさに戻ってしまうのです。その謎はいまだに解明されず、研究者が3年がかりで調査してもわからなかったとか。

豆といえば、薦池にはこんな伝説があります。昔、村の庄屋さんが元伊勢神社へお参りに行った帰り、吹雪に倒れて気を失ってしまいました。助けてくれたのは、なんと鬼。鬼へのお礼に、庄屋さんは節分に豆まきをしないと約束をしたのです。だから今でも薦池では節分に豆をまく風習はないんだとか。豆の種類は違うけど、薦池大納言が特別なのも鬼のおかげかもしれません。

—薦池(こもいけ)大納言でまちおこしを

これまであまり知られることのなかった、薦池大納言を表舞台に立たせたのが松山義宗さん。もとは建築デザイン事務所を経営し、大阪や東京で都市計画に関わる大プロジェクトを動かしてきた松山さんですが、故郷に残した母親が病に倒れたのをきっかけに、伊根町に戻る決断をしたそうです。

生まれ育った地域への恩返しのため、これまでの仕事の経験を生かしてなにか自分のできることはないか。そう思いを巡らせていた時に、母親から「こんな小豆があったんだよ」という話を聞きます。今では栽培する人も少なくなり、農家が自家消費のためにわずかに作り継がれてきた希少な大粒小豆。これは地域おこしの特産品になるのではーそうひらめいた松山さんは「KOMOIKEあずきの会」を立ち上げます。そして薦池地区のすべての畑60アールを借りてタネ場とし、自ら育てたタネを伊根町内の農家に配って栽培を依頼しました。収穫した小豆は、例え虫食いがあっても全量を高値で買い上げる保証付きです。米と同程度の収入になれば生活が成り立つと考えた価格設定でした。さらに薦池大納言を伊根町の登録商標とし、町内で栽培されたもののみに限定しました。

—小豆の洋菓子が人気のおみやげに

子どもの頃から母親の苦労を見て育ち、農家の大変さを骨身にしみてわかるがゆえに、「農家さんを豊かにしたい」との一心で立ち上げた「KOMOIKEあずきの会」。高い収益を上げるために、農産物の生産と合わせて加工・販売までを自分たちで行う6次産業化に着手します。

何か名物になるスイーツがあればと、神戸の有名洋菓子店「レーブドゥシェフ」の佐野靖夫氏に監修を依頼して生まれたのが「エスポワール」。大粒の薦池大納言が存在感満点、芳醇な発酵バターが香る焼き菓子は、今や「丹海 日出駅」などで引っ張りだこの人気商品になっています。3度の試作を繰り返して完成したレシピは、佐野シェフのご厚意で無償提供していただきました。松山さんの地域を元気づけたいという熱意を意気に感じてのことでした。

—イタリアンで伊根の特産品を味わえる

そんななか、松山さんは大阪で5店舗を展開する「イタリアンバール PIENO(ピエーノ) 」のオーナー上西弘泰氏と出合い、伊根店をやってみないかと誘われます。場所は日本最古の浦島伝説が伝わる、まもなく創祀以来1200年を迎える浦嶋神社の隣の浦島館。玉手箱をイメージした個性的な建物です。調理は初心者でしたが、店独自のレシピを伝授してもらい、あとは訓練あるのみ。もともとデザインを専門にしていただけあって手先は器用で、ほどなく合格点をもらえるほどに上達しました。

レストランでは教わった料理以外に、100%地元の食材、京野菜や海鮮を使ったオリジナルメニューも楽しめます。特にサザエや海老を贅沢に盛り込んだ浦島パスタは大好評の一品。また、薦池大納言を気軽に味わってもらえるようにと、イタリア料理店だけどぜんざいが名物なのはご愛嬌です。伊根町産有機栽培コシヒカリを使用したグルテンフリーの米粉ロールケーキにも、小豆をトッピングしています。郷土料理の手打ち筒川そばが味わえ、一般向けにそば打ち体験を行っているのも見逃せません(体験の実施状況については、お問い合わせください)。
レストランを通じて、地元の野菜や海産物などの素材を生かして、できるだけ生産者が潤うように、さらに観光客に特産品を知ってもらい魅力に触れてもらえれば。そんな思いをいだいて厨房に立っているのだとか。

—まちの活性化に尽力していきたい

伊根町は舟屋の独特の景観が全国的に有名になり、漁業と合わせて観光も大きな産業の柱となりつつあります。その流れに沿って山間部も農業と観光を融合できるように尽力していきたいと松山さん。地域の高齢化が進むにつれ危ぶまれる過疎化を免れるため、移住者を迎え入れるには、まちを活性化して安心して子育てのできる環境と仕事を準備しなければと語ります。
薦池大納言に加えて、最近では白小豆、黒ピーナッツなど珍しい作物の栽培も始まっています。白小豆も普通より大粒になるというから、やっぱり不思議です。
いろいろと模索をしながら、愛する地元のために一生懸命の松山さん。たゆまず活動を続けるその姿にエールを送ります!

株式会社KOMOIKEあずき

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