食らし旅

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地域のアクション

〈海の京都 井田新一さん〉 ふっくらおいしい綾部産お米のごはんに
愛情をたっぷり注いで握った「綾部むすび」
みんなのチカラを結集して綾部の魅力を発信

2021/03/03

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のどかな田園風景や里山が広がる綾部市は、古くから稲作が盛んに行われていた日本有数の米どころです。
当然、地元ではおいしいお米が毎日食べられています。綾部で暮らす人にとって、日常のことなので、それがどんなに恵まれているかは思いもよらぬこと。
ですが、「綾部のお米は誇れる特産品だよ」と声をあげた方がいます。それは[料亭ゆう月]代表取締役であり、一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(通称:海の京都DMO)の観光地域づくりマネージャーを務める井田新一さんです。当たり前すぎてあまり注目されなかったお米にスポットを当てて、地域全体の活性化に奮闘されています。どのような経緯で携わられるようになったのでしょう。隠れ家のような[料亭ゆう月]を訪ね、興味深いお話を伺ってきました。

—現場監督で培ったチーム力

現在は料亭を経営され、飲食業に精通している井田さんですが、20代から約10年間は、お父様が経営されている会社の建設業で現場監督をされていたそうです。現場では納期に間に合わせるための作業工程づくり、人材の配置、お金の管理など知恵を絞りながら携わっていました。
「あの10年は私の原点だと思います。みんなの力を結集させれば、1+1が2ではなく4になったり、それ以上になることを身をもって知ることができました」と振り返ります。
ですが、当時は徐々に公共事業が削減されていく厳しい時期でもありました。そこで、30歳の頃、他の仕事で身を立てることはできないかと考え、現職を続けながらインターネットショップを立ち上げ、様々なものを販売し始めました。必然的にITの知識や技術が身に付き、熟知できるようになったとのこと。

—別荘を活用して[料亭ゆう月]に

インターネットショップをはじめて3年ほど経った頃、お父様がご自身の別荘にと購入した土地と家屋に広大な庭園を造ることになり、井田さんが手がけることになりました。時間を見つけては従業員にも庭づくりを手伝ってもらいながら、じっくり手間と時間をかけて2年がかりで完成させました。予想以上の立派な仕上がりに別荘にしておくのはもったいないということに。
お父様から別荘のほかに活用方法はないか、と相談を受け毎晩のように話し合いました。お互いの意見をぶつけ、数か月間にわたり議論を続けた結果、会社に飲食部門もあったことから飲食店にする方向で決まりました。次にどのような形態にするか…また頭を悩ますことに。場所は山に囲まれた奥綾部、前の道路は車一台がぎりぎり通ることができる細い道で、日中ほとんど車が通りません。そんな隠れ家のような立地にスタッフを常置しておくわけにもいかず、営業するにしても予約制でないと採算は合わないと判断。となると料亭にするのが一番適しているのかもしれない。
こうして[料亭ゆう月]が誕生しました。

—「ありがとう」と言ってもらえる店に

2005年に「わざわざ訪ねたくなる店」をコンセプトに料亭がオープンしました。普段使いというより、法事や記念日など特別な時に訪れる店をめざしました。綾部は舞鶴や若狭、宮津に近いこともあり、各漁港から海の幸が届き、面積の多くが山を占める山間の街なので季節の山の幸も豊富です。素材の宝庫である綾部ならではの食材を用いて料理人が腕をふるいます。また上質なサービスで「来てよかった。おいしかった。ありがとう」とお客さんから言ってもらえるよう、スタッフがおもてなしをします。

井田さんが手がけた庭園は春には桜、夏は蛍の光、秋には紅葉と四季折々の自然美を目にすることができ、非日常的な空間を演出します。また、これまで蓄積してきたITの知識をフル活用しホームページを充実させ、数年で軌道にのせることができました。

—地域活性化に貢献したい

経営が順調にすすむなか、その一方で、自店舗だけのことを考えていていいのか…。それだけでこの先、明るい展望がもてるのか…。将来についてモヤモヤした気持ちをずっと抱えていたそうです。
一般的に考えれば地域の飲食店はライバル同士であり競争相手。ですが、お客さんの取り合いではなく共に繁栄していくことこそが、長い目でみれば良い結果を生むのではないか…という結論にようやくたどり着くことができました。
「それなら、ゆう月で試してうまく運んだことを、他の店舗の皆さんに情報提供すれば収益アップにつながるかもしれない」。そう考え、すぐ行動に移しました。

実行して間もない2016年、縁あって海の京都DMOの観光地域づくりマネージャーの任に就くことになり、活動の場を広げることができました。就任したことで、飲食店同士が連携していくためのしくみ作りや横のつながりを結ぶことに尽力できたといいます。組織の構築やチームづくり、この時も建設業で培った知力と経験が役立ったようです。

—高いレベルの綾部産のお米に着目

京丹後エリアは、かつて大陸の先進文化がいち早く伝わったといわれ、「和の源流」の地域といわれています。歴史を遡れば、日本の稲作発祥の地の神話も残り、知る人ぞ知る「米どころ」です。その中で昔ながらの田園風景や美しい里山に囲まれた綾部は、豊かな水源と澄んだ空気、肥えた土地に恵まれ、中山間地域ならではの朝夕の寒暖差が、よりおいしいお米を育みます。
井田さんはこの綾部産のお米に着目しました。地元の人にとって、生まれたときから食べられているお米は、とてもクオリティが高いにもかかわらず普通の味と思われています。「そうじゃないよ。全国レベルでみるとかなりレベルが高いし、普通の味じゃない。日常的に口にできるのは恵まれている環境のおかげなんだよ」と訴えます。この思いを地元のみんなに知ってほしい、また全国のみなさんにも伝えたいと思い綾部産のお米を特産品にしようと考えました。
地域活性化のために魅力的な特産品は欠かせません。ですが、「特産品って、わざわざ作るのではなく、その土地で育まれずっと食されているものが一番おいしいはず」という井田さんの持論と一致したことも決め手の一つになったといいます。

お米といえばおむすび。日本人が愛するソウルフードであり、多くの飲食店ですでにメニューとして定着しています。
おむすびなら、それぞれの店舗が独自のカラーを出しながら、お米の魅力を伝えられるのではないか。綾部産のお米が美味だということを知ってもらうために、みんな一緒に地域を盛り上げたい、綾部が誇る田園風景も残したい、そんないろんな思いから「綾部むすび」ができあがりました。

—各店舗で「綾部むすび」に出合う

「綾部むすび」は、ふっくらおいしい綾部産お米のごはんに、料理人の愛情をたっぷり注ぎ握ったおむすび。具材や形などに決まりはないので、お店ごとにバリエーションはさまざまです。農家の方が丹精込めて育てた綾部産のお米に、料理人がその時々に合った具材を選び、お客さんに提供します。対象店舗は割烹店から居酒屋、焼肉店、スイーツ&バル、温泉施設、人気うどん店までバラエティー豊か。[ゆう月]では「おむすびかいせき」やコースで綾部産こしひかりの「綾部むすび」に出合うことができます。
食べるだけでは物足りないという人は、自分でおむすびが握れる体験や時期が合えば収穫体験ができる農家民宿も。また自宅でも綾部産のお米を食べたいという人は農家から直接購入することもできます。
農家、料理人、宿泊施設、来訪者…etc.。おむすびにかかわるすべての人を結んだ立役者である井田さん。これからも「料亭ゆう月」の充実に努めつつ、食を通じてさまざまな人を巻き込みながら、綾部のさらなる活性化に取り組まれていかれることでしょう。

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