食らし旅

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地域のアクション

〈お茶の京都 田中大貴さん〉 お茶にもシングルオリジンがある?
品種や畑ごとに異なる和束茶の個性を味わう
世界のNIHONCHAを目指して会社を立ち上げた若き社長

2021/03/03

map_ocha.png お茶の京都

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宇治茶の故郷、和束町。さざ波のように茶畑が連なる石寺の茶畑などの絶景もあり、のんびりと歩いて巡りたい「茶源郷」です。歩き疲れてちょっと一休みしたい、せっかくだから美味しいお茶が飲みたい。そんな気持ちにぴったりのカフェが「d:matcha Kyoto」です。
カフェの運営から自らお茶を栽培して販売、スイーツ作りまで手がけるD:matcha 株式会社代表の田中大貴さんに話を伺いました。

—お茶やスイーツだけじゃない、色々な体験ができるカフェ

さまざまな煎茶の味比べができるセットメニュー、抹茶を贅沢に使った自慢のティラミスを目当てに、遠方からも客足の絶えないカフェ「d:matcha Kyoto」。一面の大きな窓の外には田んぼが広がり、向こうに見えるは釜塚山。整えられた茶畑が山の斜面に連なるさまは、京都府景観資産に指定されるほどの美しさです。カフェのオープンは2017年。デパート催事などを通じて徐々にファンを広げ、今ではわざわざ訪れる人がほとんど。特に欧米からの旅行客の日本茶熱は高く、その味わいはもちろんのこと、カテキンなどの健康効果が注目されているのだとか。ワインでいうテロワール(気候や土壌などの生育環境)に関心を持つ人も多く、茶畑を訪ねる茶摘み体験ツアーは大盛況。英語が堪能なスタッフが案内し、参加者は国際色豊かです。
ほかにもさまざまなプログラムが体験でき、お茶とスイーツの飲食や販売だけではない、日本茶好きにとっては興味の尽きないスポットなのです。

—日本の農業の未来形を見据えて起業

カフェを運営する「D-matcha」代表の田中大貴さんは、高校時代から日本の農業を世界へ発信したいと志し、京都大学農学部を卒業。その後は米国系の有名戦略コンサルティングファームでキャリアを積み、若くしてEC(インターネット販売)企業や、外資系ヘルシードーナツ専門店で代表取締役を務めるなど、経営者としての実績を重ねてきました。
そして2016年、31歳でいよいよ起業を果たします。日本茶を選んだ理由は、まずお茶が好きだったこと、健康にいいこと、お菓子や食品製造に広がりが見込めること、茶道など文化的、歴史的背景があるといった理由からロジカルに決めたそう。
琉球大学で農業を学んでいた弟さんに協力を求め、茶栽培の研修をしてもらう間、田中さん自身は、アメリカへ留学してMBA(経営学修士)を取得します。この海外での経験が、日本の文化的な価値を見つめ直すきっかけになり、日本茶を世界の「NIHONCHA」にしたいとの思いを強く持つようになりました。

—茶栽培800年の歴史がある和束町を拠点に

鎌倉時代に始まる茶栽培の歴史がある和束町は、昼夜の温度差が大きく、立ちのぼる霧が光を遮って美味しいお茶が育つ自然条件に恵まれた土地柄。桃源郷ならぬ「茶源郷」と呼ばれています。
田中さん達がこの土地で自分たちのお茶づくりを始めようと決めたのは、宇治茶産地の中でも特に和束の茶農家の方々にプライドを感じたため。より良いお茶を作るため技術を競い合う姿に感銘を受けてのことでした。また、役場が移住者に対してオープンなのもありがたい理由でした。
農家は高齢化が進み、後継者不足が悩み。手が回らず放置された茶畑を借り受けてのスタートでしたが、荒れ果てた畑になんとか手を入れ、年々努力を重ねて良質のお茶を作るうち、少しずつ地域からの信頼を得て、協力関係を築けるようになりました。

—自家栽培のシングルオリジン煎茶にこだわる

d:matchaの代表商品が自家栽培のシングルオリジン煎茶。コーヒー豆ではよく耳にするようになった言葉ですが、d:matchaの目指すシングルオリジンとは、単一品種・農家・畑のこと。一般的にお茶は農協で他の農家と混合して加工されることが多く、一つの畑、一つの品種からなる個性を味わえるお茶はとても貴重なもの。5つの品種の飲みくらべが楽しめるセットも好評です。
ほかにも6日、18日、25日など被覆期間ごとの旨味の違いを体感できるシングルオリジン煎茶など、これまでになかったアプローチで日本茶の奥深い魅力を追求しています。

—お茶を知り尽くした農家が手がけるお茶スイーツ

多彩なお茶スイーツも柱の一つ。玉露や抹茶、かぶせ茶などを使った7種類のティラミスや、濃厚宇治茶のガトーショコラなど、すべて自社で企画製造しています。外注をしないのは多品種、少量生産ということもありますが、お茶の活かし方なら自分たちが詳しいという自負があるから。
最近のヒット作は抹茶チョコの食べ比べセット。おくみどりという品種の抹茶を3%から24%まで濃度別に5種と、ほうじ茶の詰め合わせです。特に24%はなんと薄茶1杯分の抹茶を使っているとか。味わってみると確かに濃厚!抹茶のやわらかな苦味と甘味が口いっぱいに広がり、香りの余韻が長く尾を引きます。
生産農家だからこそ、原価をあまり気にせずふんだんにお茶を使えるのは強み。春摘みの一番茶をスイーツにするなんて、信じられないような贅沢もできてしまいます。
まずはお菓子のファンになり、それをきっかけに日本茶に興味を持つ入り口にしてもらえたら。そんな思いもあるのだそう。

—将来は和束茶を世界に誇れるブランドに

田中さんが目指すのは、ワインならボルドーというように、和束の日本茶と指名買いされる世界のブランドにすること。そして、いいお茶が適正価格で売れるようになり、日本の農家を豊かにすること。大きな夢に向かって、若い社員たちとともに良質のお茶作り、商品作りに励む毎日です。

d:matcha Kyoto

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