食らし旅

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地域のアクション

とびっきりの地産地食 みんなでつくる与謝野の「ご当地弁当」! 鬼もいかめぇ宝箱&かわゃげーな弁当

2020/01/06

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皆さま ご注目されたし!

こちらに在まします重箱の
赤い紐をゆるりと解けば
麗しい姫君たちに囲まれた鬼が現れたり

「鬼もいかめぇ」とは何たるや
ひとまずその蓋を開けてみようではないか〜
中から現れたるは…

一、本鰆・与謝野町産きのこ包み焼
一、甘海老フライ
一、やたらごはん
一、鬼のパンツ“てっぽう”
一、鬼の金ご棒
一、里芋の味噌洞窟
一、鹿肉のから揚げ
一、黒毛和牛ヒレ肉ロースト
一、蓮根きんぴら
一、名古屋コーチンだし巻き卵
一、あやめ雪かぶ焼きマリネ
一、地物野菜炊き合わせ
一、ピリ辛こんにゃく
一、すだち釜なます
一、二色おはぎ
一、りんごコンポート
一、さつまいもかぼす煮

なんたる豪華な品々!「こりゃあ、鬼もいかめぇ〜」。
申し遅れました、食らし旅編集部です(美味しそうすぎて!)。この「鬼もいかめぇ宝箱」は、丹後・与謝野町で作られた「ご当地弁当」。いかめぇとは丹後弁で羨ましいという意味です。そしてもう一つ。竹の皮に包まれた「かわゃげーな弁当」。そのまま昔話に出てきそうな、おにぎりの並ぶ愛らしい姿がたまりません。こちらは可愛い、愛らしいという意味の言葉です。二つのご当地弁当には、地域の食材、郷土食の文化、たくさんの想いが詰まっていました。

ご当地弁当開発秘話

「鬼もいかめぇ宝箱」「かわゃげーな弁当」誕生のきっかけは2018年にまで遡ります。その夏、「シェフ・イン・レジデンス」と題した公開講座が開かれました。「与謝野町の食材の価値と可能性を発掘しよう」というワークショップに町内外から農家・飲食店経営者・加工業者が集まり、グループディスカッションや畑の中でのディナーを体験。できるだけ与謝野町産の食材を使った「地産地食」という考え方や、地域内の連携や循環について共に学びました。


写真提供:PLACE

講師として招かれたのは、徳島県神山町にある株式会社フードハブ・プロジェクトの支配人や料理長たちです。フードハブ・プロジェクトは中山間地域の課題解決のため2016年に設立されました。農業と食文化を次世代につないでいくことを目的に、食堂・パン屋・食品店の運営や加工品開発などに取り組まれています。

2019年は「みんなでつくる“ご当地弁当”」というテーマに21名の参加者が集まりました。メンバーは、農家、飲食店経営者、菓子製造業、地域おこし協力隊、いつかは飲食店を開きたいと思っている人などバラエティ豊か。4日に渡り開催された講座では、「与謝野の魅力を発信するお弁当」について白熱のディスカッションが交わされました。

驚異の産食率!

 ここで質問です。「産食率」という言葉を聞いたことはありますか?知っている人はかなりの情報通です。というのも、フードハブ・ロジェクトが独自に打ち出した「どのくらい地域で育てて、地域で食べているのか」を図る基準だからです。
フードハブ・プロジェクトが運営する「かま家」食堂では、その割合を過去の献立と一緒に掲示しているそう。2018年の「シェフ・イン・レジデンス」では、アメリカ人のシェフが与謝野の食材を調理するというスペシャルディナーが設けられました。


写真提供:PLACE

その時の産食率は食材にしてなんと100%!調味料まで含めると67%になりますが、それでもかなりのハイスコアです。これには講師陣も驚いていました。夏野菜の豊富な時期だったこともありますが、経産牛も飼育していたり、珍しい品種の野菜を育てている農家もいたりと、与謝野メイドの食に大きな可能性があることが示されました。


経産牛を使ったメニュー


産食立67%!

与謝野カラーを探して

ここには食材も郷土食もある。けれど「商品」として完成させ販売まで行うとなれば、道のりは平らではありません。「美味しいお弁当」であることはもちろん、価格、パッケージなどの関門をクリアする必要があります。何より大切なのは「与謝野らしさ」を表現すること。このお弁当を通じて、この地の魅力と可能性を味わってもらうためのプロジェクトだからです。ここで参加者は「鬼もいかめぇ宝箱」チームと「かわゃげーな弁当」チームに別れました。豪華絢爛で特別なお弁当と、定番となるような季節のお弁当。プロジェクト参加者はそれぞれが得意とする一品を担当して作ることになりました。

開発期間はわずか一ヶ月半。お店を経営している人は通常業務を終えてからの取り組みになり、精神的・体力的にも厳しい時があったと言います。飲食のプロではない参加者は「私は本当に力になれるのだろうか」と不安を覚えることもあったそうです。そんな中でミーティングを重ね、連絡を取り合い「みんなで頑張ろう!」とチームの結束を高めていきました。総勢21名のアイデアと調理が合わさったとびきりのご当地弁当、いよいよ完成です!改めてご紹介しましょう。


ご当地弁当プロジェクトに集まった仲間たち、写真提供:PLACE

鬼のパンツが登場!

お弁当の核となったのは「大江山の鬼伝説」。与謝野町・福知山市・宮津市にまたがる大江山連峰には古くから鬼の言い伝えがあり、絵物語にも描かれてきました。そこから酒飲みで美味しいものが大好きな鬼の大将「酒呑童子」が羨ましがるようなお弁当、という設定が生まれました。さらにお弁当の中には「鬼のパンツ」と「金棒」が隠れているんです!


お品書きの裏にメッセージ

大きな握り飯は岩滝地域の名物料理「てっぽう」。生姜と胡麻と醤油で味付けされた握り飯で、岩滝にあった弓木(ゆみのき)城で活躍した武将が鉄砲隊を指揮したことが由来と言われています。地域ではお葬式の参列者に配られる風習が現在も続いています。名物「てっぽう」を、虎の毛皮に見立てた黄色い薄焼き卵で巻けば強くて美味しい「鬼のパンツ」の完成です!

一旦炊いてから地産の胡麻をつけて揚げたゴボウは「金ご棒」とシャレをきかせて、「鬼に金棒」が君臨しました。実は、大江山には昔の製鉄所「タタラ場」の跡も残されているんです!一説によれば、鬼とは製鉄技術を持った一族だったそうです。製鉄技術が欲しい一族と争いが起こり、勝った方の一族が自らを正当化するために「鬼を退治した」という物語を作ったというお話が伝わっています。鬼に思いを馳せながらかじる金ご棒…!涙なしには食べられません。もう一つの握り飯は「やたら」。紫蘇の実を塩漬けにした丹後の郷土料理です。

「かわゃげーな弁当」は小さな包みと侮るなかれ。中身は食べ応えのあるにおにぎりとお惣菜が並んでいます。先ほどの「やたら」を混ぜ込んだおにぎり、梅干しの乗ったザ・正統派のおにぎり、もうひとつ「ばくだん」呼ばれるかやくご飯のおにぎりとおにぎりだけで3種類も!「ばくだん」は温江(あつえ)地区の催し事や葬祭で食べられるおにぎりで、先ほどの「てっぽう」ともに「一度きりでもう帰ってくるなよ〜」という意味が込められているそうです。

お惣菜は里芋コロッケ、干し大根煮、白和え、胡瓜の佃煮、いちご大福!この日の白和えには柿が入って、秋の景色が口いっぱいに広がりました。胡瓜の佃煮は農家さんのお得意レシピ。成果に猛烈な勢いで実る胡瓜はとても一度には食べきれないため、保存食として佃煮にされます。手作りの佃煮はとっても美味しくて、実はこれだけでも「鬼もいかめぇ」なんです。

いよいよ販売!

地域のイベントでお披露目となった「鬼もいかめぇ宝箱」と「かわゃげーな弁当」。販売時間が近づくにつれて、お弁当の到着を待つ人が続々と集まってきます。

「到着しました〜!」と声がかかると、わっと盛り上がって列をなします。次々と手渡されて、どちらのお弁当もあっという間に完売!!「本当に大変だったけど、やってよかった」。プロジェクト参加者たちの笑顔が秋晴れの空に輝いていました。

ご当地弁当が残してくれたもの

「これからも継続して販売できるものが完成したね」。後日開かれた集まりで、参加者から話を伺いました。当初から「定番となるお弁当」を目指した「かわゃげーな弁当」は、その目標を達成して受注生産のお弁当となることが決まりました。製造を担当する「あつえ彩菜館」に問い合わせをすれば、その季節の「かわゃげーな弁当」を味わうことができます。

「鬼もいかめぇ宝箱」は継続販売は難しいとの声が上がりました。お弁当という価格帯と内容の豪華さ、製造体制など現実的な課題があります。「イベントとか特別な時だったらいいのかもしれない」。「大変だったけど、また食べたいといわれたら作りたくなっちゃうかも」。参加者たちの表情を見ていると、このお弁当もちゃんと「ゴール」にたどり着いていたのだということが伝わってきます。

参加者たちは年齢も職業も地域もバラバラ。これまで近くに住みながらも声をかける機会がなかったり、お店をやってみたいということを始めて誰かに伝えたり、お弁当にとどまらない繋がりが生まれていました。ある参加者は調理経験があることからプロジェクトに加わりましたが、書道という特技を生かしてお品書きも担当。またある参加者は「こだわりの料理ができたことが嬉しかった。勤め先では採算のことがあり難しいけれど、一つの夢がかなった」と話してくれました。

調理台を囲んで話し合う参加者たちが、まるでお弁当のように見えてきました。いろんなキャリアや人生を経てきた人たちの物語が、一品一品に込められている。「与謝野という大きなお弁当箱に、私たちはぎゅっと一緒に住んでいるんだ」。作りたての料理のようなホカホカの雰囲気が、そう伝えてくれました。

終わりに

「みんなでつくる“ご当地弁当”」プロジェクト、いかがでしたか?きっと食べたくてたまらなくなったことと思います。「かわゃげーな弁当」についてはあつえ彩菜館へのリンクを末尾に載せていますので、ぜひ注文してみてください。「鬼もいかめぇ宝箱」は、いつかイベントで登場するかも!?しれません。その時は、京都縦貫道を走り抜けて丹後に来てください。それくらい美味しかったんですよ~!食べ尽くせぬ丹後の魅力が、ぎゅっと詰まっています。

記事 原田美帆 写真 原田美帆

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